「電験三種は意味ない」「役に立たない」と言われるのは、資格を取っても実務経験がないと年収や仕事内容がすぐには変わらないからです。電験三種の合格率は令和7年度で13.0%と低く、資格そのものの価値が低いわけではありません。
結論から言うと、電験三種が「意味ある」かどうかは、年齢と実務経験でほぼ決まります。当社の電気保安の取引先では、実務経験なしで採用する目安は27歳以下、実務経験ありなら55歳前後までという話がありました。また当社の内定データ(39名)では、転職前の年収が400万円未満の方は13名中12名が年収アップした一方、電験三種を持つ30代後半の方がビル管理の会社へ移って年収が下がった例もあります。
この記事では、電験三種が「意味ない」と言われる理由、それでも価値がある理由、実務経験なしで転職できるかの年代別の目安、電験三種を活かせる転職先と年収の変化を、公的な情報と当社の内定データ・面談で伺った声から解説します。これから電験三種を取るか迷っている方、取ったものの活かし方に迷っている方は、ご自身の年齢と経験に当てはめて読んでください。
電験三種が「意味ない」「役に立たない」と言われる4つの理由
電験三種が「意味ない」と言われる理由は、①実務経験がないと採用されにくい、②取っても年収がすぐには上がらない、③資格を使う仕事に就けない職場がある、④独立に必要な実務経験が別にある、の4つです。どれも資格の価値が低いからではなく、「資格だけ」では仕事と年収に結びつきにくいことが原因です。
① 実務経験がないと採用されにくい
電気主任技術者を求める会社の多くは、受変電設備の点検や保安の実務経験を重視します。当社の面談でも、電験二種まで取得して免状も持っているのに、実務経験がないために希望の年収に届かない可能性があるという方がいました(2026年10月)。資格の上位・下位より、現場を見てきた年数のほうが評価されやすいのが実情です。
② 取っても年収がすぐには上がらない
電験三種の資格手当は会社ごとに異なり、公的な統計はありません。手当がついても月数千円〜数万円の幅で、基本給の等級が変わらなければ年収は大きく動きません。「取れば年収が100万円上がる」と期待していると、「意味なかった」と感じやすくなります。
③ いまの職場では資格を使う仕事に就けない
電力会社の配電部門や工場の製造部門など、電験三種を持っていても保安業務に携われない職場があります。当社の面談でも、高校生のときに電験三種を取ったのに、いまの職場では保安業務に携われないことが転職の理由になった方がいました(2026年8月)。資格を活かすには、選任される立場に就ける会社へ移る必要があります。
④ 独立(外部委託)には別の実務経験が要る
「電験三種を取れば独立できる」と言われることがありますが、電気管理技術者として外部委託を受けるには、電験三種の場合で原則5年の実務経験が必要です(保安管理業務講習の修了などで短縮あり)。資格を取った直後に独立できるわけではありません。
それでも電験三種に価値がある3つの理由
電験三種は、①合格率が13%前後と難しく持っている人が限られる、②法律で選任が義務づけられた資格で仕事がなくならない、③電気保安の人材が不足していく、という3つの理由で価値があります。「すごい」と言われるのは難しさだけでなく、事業場ごとに必ず必要になる資格だからです。
| 項目 | 内容 |
| 合格率 | 令和7年度 13.0%(受験者48,942人・合格者6,365人)、令和8年度上期 12.8%(受験者25,127人・合格者3,223人) |
| 扱える範囲 | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000キロワット以上の発電所を除く)。ビル・工場・商業施設の受変電設備の多くが該当 |
| 選任の要件 | 免状があれば選任でき、選任そのものに実務経験の要件はない(電気事業法施行規則第52条第1項) |
| 外部委託(独立)の要件 | 電験三種は原則5年の実務経験(講習修了後3年、講習+実技訓練の修了後2年) |
| 人材の見通し | 経済産業省の電気保安制度ワーキンググループの資料では、2040年に電気保安人材が約5万人不足する見込み |
出典:電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移」、電気事業法施行規則(e-Gov法令検索)、中部近畿産業保安監督部近畿支部「保安管理業務外部委託承認制度」、経済産業省 電気保安制度ワーキンググループ資料
年収の面でも、厚生労働省のjob tagでは電気技術者の平均年収は703.9万円です(令和7年賃金構造基本統計調査)。ただしこれは電験一種・二種の保有者や長く経験を積んだ人を含む職業全体の平均で、電験三種を取っただけの人の年収ではありません。資格の価値が年収に表れるのは、選任される立場で経験を積んでからです。
試験の内容や科目ごとの難しさは第三種電気主任技術者(電験3種)とは?で解説しています。
実務経験なしで電験三種を活かして転職できる?年代別の目安
実務経験なしで電気主任技術者として採用されやすいのは20代までで、30代以降は実務経験が問われやすくなります。当社の電気保安の取引先では、実務経験なしの採用は27歳以下、実務経験ありは55歳前後までを目安にしているという話がありました(2026年9月)。30代以降で実務経験がない方は、いきなり電気主任技術者を狙うより、設備管理や電気施工管理で経験を積むルートが現実的です。
| 年代 | 実務経験なし | 実務経験あり |
| 20代 | 電気保安・設備管理の未経験枠に応募できる。資格があると書類で有利になりやすい | 電気保安・電気主任技術者の求人の多くが対象。年収アップも狙いやすい |
| 30代 | 未経験枠は少なくなる。設備管理(ビルメン)や電気施工管理で経験を積むルートが中心 | 専任・保安法人・工場の電気主任技術者など選択肢が広い |
| 40代 | 電気主任技術者としての採用は難しくなる。設備管理で選任者を目指すルートが中心 | 経験年数次第で外部委託(独立)も視野に入る |
| 50代以上 | 資格を活かせる職場は限られる。年収より勤務地・働き方で選ぶ転職が中心 | 55歳前後までは採用の対象になりやすい。年収は横ばい〜ダウンが多い |
出典:建設ワークスの取引先との打ち合わせ・面談記録(2026年8〜10月)をもとに編集部が整理。会社によって基準は異なります
ここでいう「実務経験」は、電気工作物の工事・維持・運用の経験のことで、免状の認定取得や外部委託承認で数え方が決まっています。どんな仕事が実務経験に数えられるかは、電気主任技術者の実務経験とは?で詳しく解説しています。転職先を選ぶときは、入社後の仕事が実務経験として認められるかを面接で確認してください。当社の面談でも、現職の経歴が外部委託申請の要件に当てはまるかを確認する必要が出た方がいました。
電験三種を活かせる転職先5つと年収の考え方
電験三種を活かせる転職先は、①ビル・施設の設備管理、②保安法人・電気保安の会社、③工場・大型施設の電気主任技術者(専任)、④電気施工管理、⑤フィールドエンジニア・設備保全の5つです。実務経験なしから入りやすいのは①④⑤、年収と資格の評価が高いのは②③で、多くの方は①④⑤で経験を積んでから②③へ進みます。
| 転職先 | 電験三種の活かし方・年収の考え方 | 実務経験なしで入れるか |
| ビル・施設の設備管理 | 受変電設備のある物件で選任者になれる。ビル施設管理の平均年収は452.3万円(job tag)で、資格手当と責任者の役職で上がる | 入りやすい。点検の経験が積める |
| 保安法人・電気保安の会社 | 複数の事業場を巡回して点検する。経験を積むと外部委託(独立)への道も開ける | 20代なら未経験枠がある会社も |
| 工場・大型施設の電気主任技術者(専任) | 1つの事業場の電気設備を専任で見る。電験二種を目指せる大型設備の職場もある | 実務経験を求められることが多い |
| 電気施工管理 | 受変電設備の工事の管理で評価される。建築施工管理技術者の平均は679.1万円(job tag・参考値) | 電気の知識があれば入りやすい |
| フィールドエンジニア・設備保全 | 電気設備・機械の保守で、シーケンスや電気の知識が評価される | 入りやすい |
出典:厚生労働省 job tag(令和7年賃金構造基本統計調査を加工)。職業全体の平均値で、資格の有無による差は含みません
当社が扱う電気主任技術者の求人の例では、年収350万〜650万円と幅がありました(2026年8月)。下限と上限の差は、実務経験の年数と選任の経験で決まることがほとんどです。
ビルメンの年収の実情はビルメンの年収は低い?、電気施工管理の働き方は電気施工管理はやめとけ?、フィールドエンジニアの実情はフィールドエンジニア(サービスエンジニア)はやめとけ?で解説しています。電気主任技術者の仕事そのもののきつさは電気主任技術者はやめとけ?を参考にしてください。
なお、電気工事の職人・作業員としての転職は、職業安定法の定めにより当社の紹介対象外です。当社では、電気保安・設備管理・施工管理・保守など、管理・技術職の求人をご紹介しています。
電験三種で転職すると年収は上がる?【内定データ】
当社の内定データでは、転職前の年収が400万円未満の方は13名中12名が年収アップした一方、600万円を超えていた10名は全員が横ばい〜ダウンでした。電験三種を持つ30代後半の方がビル管理・施設管理の会社へ移った例では、年収は500万円から482万円に下がっています。電験三種があれば必ず上がるのではなく、いまの年収と年齢、転職先の立場で結果が分かれます。
| 区分 | アップした人 | 増減の中央値 |
| 転職前の年収 400万円未満 | 13名中12名(+8〜+128万円) | +83万円 |
| 転職前の年収 400〜599万円 | 13名中8名 | +5万円 |
| 転職前の年収 600万円以上 | 13名中2名 | −40万円 |
| 20代 | 11名中9名 | +85万円 |
| 30代 | 12名中9名 | +11.5万円 |
| 40代 | 6名中3名 | −24万円 |
| 50代以上 | 10名中1名 | −37万円 |
出典:建設ワークス 内定データ(39名・2026年10月集計)。内定通知書・労働条件通知書の記載額と、面談で伺った前職の年収を比較。職種を問わない集計です。詳しくは建設・設備業界の転職で年収はどう変わる?内定39名のデータにまとめています
電気系の資格を持つ方の内定事例も、上がった例・下がった例をそのまま載せます。
| 年代・資格 | 転職先の領域 | 年収の変化 |
| 30代後半・2級電気工事施工管理技士・第一種電気工事士 | 電気工事の施工管理 | 600万円→809万円(+209万円) |
| 30代後半・第二種電気工事士 | 電気工事の施工管理 | 430万円→519万円(+89万円) |
| 30代後半・第三種電気主任技術者 | ビル管理・施設管理の会社 | 500万円→482万円(−18万円) |
| 40代・第一種電気工事士 | 非公開 | 540万円→480万円(−60万円) |
出典:建設ワークス 内定データ(2026年10月集計・内定通知書・労働条件通知書の記載額)。個人・企業が特定されないよう、年代・資格の粒度で記載しています
読み取れるのは、電気系の資格で年収を大きく上げた方は、資格を評価する施工管理の職場へ移った方で、すでに年収500万円以上ある方が設備管理の会社へ移ると、資格があっても年収は保つか少し下がるということです。面談でも、年収約610万円の方がビルメン系の求人を検討したものの、今の年収を保つのは難しいとご本人も見ていたケースがありました(2026年10月)。電験三種の年収・手当の相場は電験三種の年収・手当相場で解説しています。
電験三種を「意味ない」で終わらせないための判断基準
電験三種を活かせるかは、「年齢」「実務経験」「いまの年収」「何を優先するか」の4つで判断できます。下の表で自分に近い行を探し、目指す転職先を決めてから求人を探すと、資格を取ったのに活かせないという後悔を避けやすくなります。
| あなたの状況 | おすすめの動き方 |
| 20代・実務経験なし・電験三種あり | 電気保安・設備管理の未経験枠を狙う。いまの年収が400万円未満なら上がる可能性が高い |
| 30代・実務経験なし・電験三種あり | 設備管理か電気施工管理で受変電設備の経験を積み、数年後に電気保安へ |
| 30〜40代・実務経験あり | 専任・保安法人・工場の電気主任技術者を比べる。外部委託に必要な経験年数も確認する |
| 年収500万円以上・設備管理へ移りたい | 年収は保つか少し下がる前提で、休日・宿直・勤務地を良くする転職を考える |
| これから電験三種を取るか迷っている | 入社後に資格取得を支援する会社で経験を積みながら取るルートもある |
当社の面談でも、これまでの経験を活かしつつ、入社後に電験を取れる環境を希望される方がいます(2026年10月)。資格を先に取るか、経験を先に積むかは、年齢と今の職場で受験勉強の時間が取れるかで決めるのがおすすめです。
電験三種に関するよくある質問
電験三種は本当に意味ないのですか?
意味がないわけではありません。合格率は令和7年度で13.0%と低く、事業場ごとに選任が必要な資格です。ただし、実務経験がないと採用や年収に結びつきにくいため、「資格だけ」では意味がないと感じる人がいます。
電験三種があれば実務経験なしでも転職できますか?
20代なら電気保安・設備管理の未経験枠で採用される可能性があります。当社の電気保安の取引先では、実務経験なしの採用の目安は27歳以下という話がありました。30代以降は設備管理や電気施工管理で経験を積むルートが現実的です。
電験三種は「すごい」資格ですか?
難易度の面ではすごい資格です。受験者のうち合格するのは1割強で、ビル・工場の受変電設備の保安を任される立場に就けます。年収や待遇が「すごい」と言えるかは、実務経験と選任の経験を積めるかで変わります。
40代・50代で電験三種を取って転職できますか?
実務経験があれば55歳前後までは採用の対象になりやすいですが、実務経験がない場合は電気主任技術者としての採用は難しくなります。当社の内定データでも、50代以上の方は10名中9名が年収横ばい〜ダウンでした。年収より勤務地・働き方を良くする転職が中心になります。
まとめ
電験三種が「意味ない」「役に立たない」と言われるのは、実務経験がないと採用や年収に結びつきにくく、独立にも別の実務経験が必要だからです。一方で、合格率13%前後の難しい資格で、事業場ごとに選任が必要なため、仕事がなくなる資格ではありません。
電験三種を活かせるかは年齢と実務経験でほぼ決まります。20代なら未経験枠、30代以降で経験がなければ設備管理・電気施工管理で経験を積むルートが現実的です。当社の内定データでは、転職前の年収が400万円未満の方は13名中12名が年収アップしていますが、年収500万円以上ある方は資格があっても保つか少し下がる例があります。自分の条件でどの転職先が合うかを見極めてから動いてください。
| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |