設備設計は、建物の空調・給排水・電気などの設備を図面に落とし込む仕事です。現場で工事を管理する施工管理に比べて体力面の負担は軽い一方、「設計変更が多い」「納期前に残業が集中する」「建築・構造・施工の各担当との調整が多い」といった理由から、「きつい」「やめとけ」と言われることがあります。
結論から言うと、設備設計のきつさは「体力」より「納期と調整」にあり、職場によって差が大きい仕事です。設計職を含む建築技術者の有効求人倍率は2.83倍(厚生労働省 job tag)と人手不足が続いており、施工管理の経験は設備設計への転職で評価されやすい経験です。
この記事では、設備設計がきつい・やめとけと言われる理由、年収と資格(建築設備士・設備設計一級建築士)、施工管理や未経験から設備設計に移る方法を、公的な数字と当社の内定データ・取引先との打ち合わせの内容から整理します。設備設計を続けるか迷っている方、施工管理から設計側に移りたい方は、ご自身に近い章から読んでください。
設備設計の仕事内容と、働く会社による違い
設備設計は、建物の用途や規模に合わせて、空調・換気、給排水・衛生、電気・照明などの設備を計画し、設計図と計算書にまとめる仕事です。同じ「設備設計」でも、設計事務所・ゼネコンの設計部・設備工事会社(サブコン)・設備メーカーのどこで働くかで、扱う段階と忙しさの波が変わります。
| 働く会社 | 主な仕事 | 忙しさの特徴 |
| 設備設計事務所・建築設計事務所 | 基本設計・実施設計。建物全体の設備方式を決め、設計図書をまとめる | 確認申請・入札の締切前に作業が集中しやすい |
| ゼネコンの設計部 | 設計施工の案件で、建築・構造の担当と並行して設備を設計する | 社内調整が多い。施工部門との連携が近い |
| 設備工事会社(サブコン) | 施工図・機器選定・設計変更への対応。現場に近い立場で設計する | 工期に合わせて動くため、現場の進み方の影響を受ける |
| 設備メーカー | 自社製品(空調機・ポンプなど)の仕様検討・図面作成・技術提案 | 扱う範囲が自社製品に絞られ、波は比較的小さい |
出典:建設ワークス編集部(当社の求人・取引先との打ち合わせをもとに整理)
建築設備士試験の合格者(令和7年・563人)を見ると、勤務先は建設会社27.4%・空調衛生設備工事会社16.2%・建築設計事務所12.6%・設備設計事務所9.6%と分かれており、設備設計の仕事が設計事務所だけでなく、建設会社や設備工事会社にも広がっていることが分かります(建築技術教育普及センター)。
設備設計がきつい・やめとけと言われる5つの理由
設備設計がきついと言われる理由は、①設計変更の多さ、②締切前の残業の集中、③調整の多さ、④覚える法令・計算の多さ、⑤責任の重さと評価のされにくさ、の5つに集約されます。どれも職場の体制で軽くも重くもなるので、「設備設計という仕事がきつい」のか「いまの職場がきつい」のかを分けて考えるのが大切です。
① 建築側の変更が、設備に連鎖する
間取りや天井の高さ、梁の位置が変わると、ダクト・配管のルートや機器の置き場所を描き直す必要があります。設備は建築・構造の後に決まることが多く、上流の変更の影響を最後に受ける立場になりやすいのが、設備設計のつらさの1つです。
② 締切前に残業が集中する
確認申請・入札・着工の前は、図面と計算書を一気に仕上げる必要があり、残業が増えやすくなります。普段は落ち着いていても、締切が重なる時期だけは忙しいという波のある働き方になりがちです。
③ 社内外との調整が多い
意匠・構造の設計者、施主、施工会社、メーカーなど、関わる人が多い仕事です。図面を描くだけでなく、「この位置に配管を通したい」「この機器は入らない」といった調整に時間を取られます。
④ 覚える法令・計算が多い
建築基準法・消防法・省エネ関連の基準など、設備に関わる法令は幅が広く、負荷計算や機器選定の計算も必要です。経験が浅いうちは、調べながら進めるぶん時間がかかります。
⑤ 責任は重いが、成果が目に見えにくい
設備は建物が使われ始めてから性能が問われます。完成した建物で目立つのは外観や内装で、設備の工夫は評価されにくいと感じる方もいます。
数字で見る設備設計:求人倍率・年収・労働時間
設計職を含む「建築設計技術者」の平均年収は679.1万円、平均年齢43.4歳、月の労働時間は166時間、有効求人倍率は2.83倍です(厚生労働省 job tag)。設備設計だけの統計はありませんが、設計の担い手が不足していることは数字からも読み取れます。
| 項目 | 建築設計技術者(全国) |
| 賃金(年収) | 679.1万円 |
| 年齢 | 43.4歳 |
| 労働時間(月) | 166時間 |
| 求人賃金(月額) | 33.8万円 |
| 有効求人倍率 | 2.83倍 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「建築設計技術者」。賃金・年齢・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査を加工、求人賃金・有効求人倍率は令和7年度。設備設計に限った値ではなく、意匠・構造などの設計者を含む職業全体の値です。賃金構造基本統計調査では施工管理と同じ区分で集計されているため、建築施工管理技術者と同じ年収・年齢の値になっています
労働時間については、時間外労働の上限(原則として月45時間・年360時間、特別な事情がある場合も年720時間まで)が設計事務所にも適用されており、建設会社でも2024年4月から上限規制の対象になっています。求人票の「残業月◯時間」が平均なのか、締切前の月も含めた数字なのかを確認すると、実際の働き方を見誤りにくくなります。
設備設計の年収と、転職で年収はどう変わる?【当社の内定データ】
設備設計の年収は、経験年数と資格、働く会社の規模で大きく変わります。当社の内定データでは、転職前の年収が400万円未満の方は13名中12名が年収アップした一方、600万円を超えていた10名は全員が横ばい〜ダウンでした。設備設計に限らず、「年収が低いうちに経験を持って移る人ほど上がりやすい」というのが当社のデータから言えることです。
| 区分 | アップした人 | 増減の中央値 |
| 転職前の年収 400万円未満 | 13名中12名(+8〜+128万円) | +83万円 |
| 転職前の年収 400〜599万円 | 13名中8名 | +5万円 |
| 転職前の年収 600万円以上 | 13名中2名 | −40万円 |
| 20代 | 11名中9名 | +85万円 |
| 30代 | 12名中9名 | +11.5万円 |
| 40代 | 6名中3名 | −24万円 |
| 50代以上 | 10名中1名 | −37万円 |
出典:建設ワークス 内定データ(39名・2026年10月集計)。内定通知書・労働条件通知書の記載額と、面談で伺った前職の年収を比較。設備設計以外の職種を含む集計です
設計の仕事に関わる内定事例を、上がった方・下がった方の両方で並べると次のとおりです。
| 年代 | 前職・資格 | 年収(万円) | 増減 |
| 30代 | 事務・営業(建設業は未経験)→ 設計会社へ | 350→439 | +89万円 |
| 30代後半 | 建築施工管理・プラントの設備設計の経験 | 480→485 | +5万円 |
| 50代 | 2級建築士 | 600→550 | −50万円 |
| 60代 | 1級建築士 → 設計会社へ | 800→712 | −88万円 |
出典:建設ワークス 内定データ(2026年10月集計)。上の39名に含まれる事例。転職先の企業名は伏せています
資格の有無より、年代と転職前の年収で結果が分かれていることが分かります。当社の取引先でも、産業用空調のメーカーが設備設計・フィールドエンジニア・施工管理を最低年収550万円以上で募集しているように(2026年9月の打ち合わせ)、設備の経験者には条件の良い求人もあります。年代・現年収別のくわしいデータは建設・設備業界の転職で年収はどう変わる?内定39名のデータにまとめています。
設備設計に役立つ資格:建築設備士と設備設計一級建築士
設備設計に必須の資格はありませんが、キャリアを積むうえで目標になるのが「建築設備士」と「設備設計一級建築士」です。建築設備士の合格率は令和7年で15.7%(総合)と難しく、設備設計一級建築士は一級建築士として5年以上設備設計に従事したうえで講習を修了する必要があります。
| 資格 | 内容 | 取り方 |
| 建築設備士 | 建築設備の知識・技能を持つ専門家。建築士が延べ面積2,000㎡超の建築物の設備を設計・工事監理するときは、建築設備士の意見を聴くよう努めることとされている | 第一次(学科)・第二次(設計製図)の試験に合格する |
| 設備設計一級建築士 | 階数3以上かつ床面積5,000㎡超の建築物の設備設計で、設計するか、設備関係規定への適合を確認する | 一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事した後、登録講習機関の講習を修了する |
出典:建築士法 第2条第5項、第10条の3、第18条第4項、第20条の3(e-Gov法令検索)、建築技術教育普及センター
| 建築設備士試験 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 令和7年 第一次 | 2,950人 | 769人 | 26.1% |
| 令和7年 第二次 | 1,275人 | 563人 | 44.2% |
| 令和7年 総合 | 3,584人 | 563人 | 15.7% |
| 令和6年 総合 | 3,403人 | 732人 | 21.5% |
| 令和8年 第一次 | 3,387人 | 855人 | 25.2% |
出典:建築技術教育普及センター「建築設備士試験データ」
令和7年の合格者の職務内容は、設計50.1%に対して施工管理も24.2%を占め、平均年齢は35.7歳でした(建築技術教育普及センター)。施工管理をしながら建築設備士を取り、設計側に移る道があることがうかがえます。
施工管理・未経験から設備設計に転職するには
設備設計への転職で評価されやすいのは、設備施工管理や設備工事の施工図の経験です。現場で配管・ダクトの納まりを見てきた経験は、「施工できる図面」を描くうえでそのまま強みになります。建設業が未経験の方は、20代〜30代前半のうちにCADオペレーターや設計補助から入るのが現実的な入口です。
施工管理の経験者は「納まりを知っている」ことが強み
当社の面談でも、消火設備の設計と施工管理の両方を経験した50代の方が、施工管理より設計の上流(3次元CAD・BIMの活用)を希望して選考に進んだ例がありました(2026年5月)。また、配管メーカーの取引先からは、設計事務所への提案のために「設備設計と建築の両方が分かる人」を求める声がありました(2026年7月)。施工の経験は、設計側でも重宝されます。
未経験なら、CAD・設計補助から入る
建設業が未経験の方は、まずCADで図面を描く仕事や設計補助から入り、実務を覚えながら建築設備士などを目指す流れが一般的です。当社の内定事例でも、建設業未経験の30代の方が設計会社に移って350万円から439万円(+89万円)に上がっています(建設ワークス 内定データ、2026年10月集計)。CADの仕事の実情はCADオペレーター・BIMオペレーターはやめとけ?で解説しています。
設備施工管理とどちらが向いているか
現場で人を動かし、工事が形になるのを見るのが好きな方は施工管理、机に向かって計算・図面で問題を解くのが好きな方は設計が向いています。設備施工管理の実情は設備施工管理はきつい?、施工管理からの転職先は施工管理から転職するなら?で比べています。
きつい職場と、続けやすい職場の見分け方
設備設計で続けやすい職場かどうかは、①1人あたりの担当物件数、②締切前の残業の実績、③設計変更の進め方、④教育とCAD・BIMの環境、の4点で見分けられます。当社の面談でも、改修・リニューアルの設計が強みの方が、内定先の「現場中心の働き方」が合わずに判断を保留した例があり(2026年6月)、同じ設計職でも会社によって働き方はかなり違います。
| 確認すること | 続けやすい職場のサイン | 注意したいサイン |
| 担当物件数 | 1人あたりの担当件数と規模を具体的に答えられる | 「案件次第」で、同時に何件持つか分からない |
| 締切前の残業 | 繁忙期を含めた残業時間の実績を教えてくれる | 平均の数字しか出てこない |
| 設計変更の進め方 | 変更の締切や、意匠・構造との打ち合わせのルールがある | 変更が直前まで続き、設備側が最後にしわ寄せを受ける |
| 教育・環境 | 先輩のチェック体制があり、CAD・BIMや計算ソフトがそろっている | 1人で全部を任され、相談相手がいない |
出典:建設ワークス編集部(当社の面談・取引先との打ち合わせをもとに整理)
設備設計に関するよくある質問
設備設計は施工管理より楽ですか?
体力面と現場での拘束時間は、施工管理より軽いことが多いです。ただし、締切前の残業や設計変更への対応はあり、「楽」とは言い切れません。現場に出る頻度や担当物件数は会社によって違うため、求人票だけでなく面接で確認してください。
設備設計の将来性はありますか?
設計職を含む建築設計技術者の有効求人倍率は2.83倍で(厚生労働省 job tag)、人手不足が続いています。省エネ・脱炭素への対応で設備の役割は大きくなっており、経験を積んだ設備設計者は今後も必要とされると考えられます。
未経験から設備設計の仕事に就けますか?
就けますが、20代〜30代前半のほうが入りやすいのが実情です。CADオペレーターや設計補助から入り、実務を覚えながら資格を目指す流れが一般的です。当社の内定データでも、20代は11名中9名、30代は12名中9名が年収アップしています。
設備設計に必要な資格はありますか?
必須の資格はありません。キャリアを積むと、建築設備士(令和7年の総合合格率15.7%)や、一級建築士として5年以上設備設計に従事したうえで講習を受ける設備設計一級建築士が目標になります。
まとめ
設備設計は、体力面の負担は施工管理より軽い一方、設計変更の多さ、締切前の残業、調整の多さから「きつい」「やめとけ」と言われることがある仕事です。ただし、そのきつさは担当物件数や設計変更の進め方など、職場の体制で大きく変わります。
設計職を含む建築設計技術者の有効求人倍率は2.83倍で、設備施工管理の経験は設計側でも評価されます。当社の内定データでは、転職前の年収が400万円未満の方は13名中12名が年収アップした一方、600万円を超えていた方は全員が横ばい〜ダウンでした。続けるか移るか迷っている方は、年代と年収、何を優先したいかを整理してから判断してください。
| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |