設備保全が「きつい」と言われる主な理由は、突発故障への呼び出し、夜勤・交替勤務、工場が止まる長期休暇中の工事、暑さや汚れ、覚えることの多さ、生産部門との板挟みの6つです。工場の設備を止めないための仕事なので、ほかの人が休んでいる時間に動く場面がどうしても出てきます。
ただし、きつさの大部分は「職種」ではなく「職場の体制」で決まります。保全担当の人数、交替勤務の有無、休日の呼び出しのルールは、同じ「設備保全」という求人でも会社ごとにまったく違います。
この記事では、設備保全の経験者やこれから目指す方の転職を支援している立場から、きついと言われる理由を一つずつ分解し、職場の見分け方、年収の実例、経験を活かせる転職先までを解説します。
設備保全とは?仕事内容と「きつさ」が生まれる仕組み
設備保全とは、工場やプラントの生産設備が止まらないように、点検・修理・部品交換・改善を行う仕事です。機械保全、メンテナンス、工務とも呼ばれます。設備が止まると生産が止まるため、「止めない」「止まったらすぐ直す」ことが求められ、これがきつさの根っこになっています。
保全の仕事は、大きく次の3つに分かれます。どの比重が大きいかで、働き方は大きく変わります。
| 種類 | 内容 | 働き方への影響 |
| 予防保全 | 定期点検・計画的な部品交換で故障を防ぐ | 計画どおりに進めやすく、日勤中心になりやすい |
| 事後保全 | 故障が起きてから修理・復旧する | 時間を選べず、夜間・休日の呼び出しが出やすい |
| 改良保全 | 故障の原因を取り除くよう設備を改善する | 技術力がつき、評価やキャリアにつながりやすい |
予防保全と改良保全の比重が大きい職場ほど、突発対応が減り、働き方は安定します。反対に、故障してから直す「事後保全」が中心の職場では、呼び出しや残業が増えがちです。
設備保全がきついと言われる6つの理由
設備保全がきついと言われる理由は、突発故障の呼び出し、夜勤・交替勤務、長期休暇中の工事、暑さ・汚れ・危険、覚えることの多さ、生産部門との板挟みの6つです。どれも「設備を止めない」という役割から生まれるもので、職場の体制次第で重さが変わります。
1. 突発故障で呼び出される
生産ラインが止まると、時間に関係なく呼び出しがかかります。24時間稼働の工場では、夜中や休日に電話が鳴ることもあります。呼び出し当番を何人で回しているか、電話で指示して済ませられる体制があるかで、負担は大きく変わります。
2. 夜勤・交替勤務がある
24時間稼働の工場では、保全も2交替・3交替で常駐していることが多く、生活リズムが崩れやすくなります。当社の面談でも、生産ラインの保全を担当していた20代の方から「夜勤をなくしたい」という転職理由をうかがうことがあります。一方で、日勤のみの保全部門を置いている工場もあります。
3. 長期休暇中に工事が集中する
ゴールデンウィーク・お盆・年末年始など、工場が止まる期間は、普段できない設備の更新工事や大がかりな点検(定修)を行う時期です。そのため、世間が休んでいる時期に出勤し、代休を別の日に取る働き方になりやすい点は、入社前に知っておくべきポイントです。
4. 暑い・汚れる・危険がある
夏場の工場内は高温になりやすく、油や粉じんで汚れる作業もあります。高所作業や重量物の取り扱い、回転体・電気設備に近づく作業もあるため、安全ルールを守る緊張感が常にあります。
5. 覚えることが多い
機械(駆動部・油圧・空圧)、電気(モーター・制御盤・シーケンス)、設備ごとの癖まで、覚える範囲が広い仕事です。最初の1〜2年は「できないことが多い」と感じやすく、ここで辞めたくなる人も少なくありません。
6. 生産部門との板挟みになり、評価されにくい
生産部門からは「早く直して」と急かされ、設備が問題なく動いている間は仕事が目に見えにくい、という構造があります。故障を減らしても「何も起きていない」ように見えてしまうため、評価の仕組みが整っていない職場では、やりがいを感じにくくなります。
設備保全のきつさは職場でどれくらい変わるか
設備保全のきつさは、工場の稼働時間、保全部門の人数、呼び出しのルール、予防保全の進み具合でほぼ決まります。求人票の「設備保全」という職種名だけでは判断できないため、次のポイントを確認することをおすすめします。
| 確認すること | 求人票で見るところ | 面接・面談で聞くこと |
| 勤務形態 | 「日勤のみ」か「交替制」か、夜勤手当の有無 | 保全部門だけ日勤か、ラインと同じ交替か |
| 呼び出し | 待機手当・呼出手当の記載 | 当番は何人で回すか、月に何回呼ばれるか |
| 長期休暇 | 年間休日数、「長期休暇中の出勤あり」の記載 | GW・お盆・年末年始に出勤する日数と代休の取り方 |
| 保全の中身 | 「予防保全」「改善」「保全計画」の記載 | 突発対応と計画保全の割合 |
| 教育 | 資格取得支援、OJTの期間 | 未経験者は何年目で1人立ちしているか |
設備保全に向いている人・向いていない人
設備保全に向いているのは、機械や電気の仕組みに興味があり、原因を突き止めるのが好きな人です。反対に、決まった時間に必ず帰りたい人や、成果が目に見えないとやる気が続かない人は、職場選びを慎重にしたほうがよい仕事です。
| 向いている人 | 向いていない人(職場選びに注意) |
| ・機械や電気の仕組みを知るのが好き ・「なぜ壊れたか」を考えるのが苦にならない ・手を動かして直すことにやりがいを感じる ・安全ルールを地道に守れる |
・夜勤や休日の呼び出しを絶対に避けたい ・成果がすぐ目に見えないとやる気が続かない ・暑さや汚れがどうしても苦手 ・新しい設備や知識を覚えるのが負担 |
「向いていない」に当てはまっても、すぐに職種を変える必要はありません。日勤のみ・予防保全中心の職場を選べば、続けられるケースは多くあります。
設備保全の年収は上がる?成約データで見る実例
設備保全の年収は、勤務形態(夜勤・交替の有無)と、移る先の会社の給与制度で大きく変わります。当社の成約データでは、20〜30代で年収300万円台以下から転職した方は上がった例が多く、50代以上の高年収帯からの転職では横ばいや下がる例も多く見られます。
設備保全の経験がある方の実例は次のとおりです(内定通知書・労働条件通知書の記載額)。
| 年代 | 前職の経験 | 資格 | 年収の変化 |
| 20代前半 | 空調サービス・設備保全 | なし(普通免許) | 300万円 → 383万円(+83万円) |
| 30代 | 設備保全(ブランク約10年) | 2級ボイラー技士 | 250万円 → 300万円(+50万円) |
出典:建設ワークスの成約データ(2025〜2026年、内定通知書・労働条件通知書の記載額)。個人が特定されないよう、年代・経験・資格の粒度で記載しています。
2件とも、施工管理の資格を持っていない状態からの転職です。年収が上がった要因は資格よりも、保全の実務経験と、受け入れ先の等級制度や手当でした。一方で、夜勤手当や呼出手当が大きい職場から日勤のみの職場へ移る場合は、前の章のとおり下がることもあります。
設備保全の経験を活かせる転職先
設備保全の経験は、ビルや施設の設備管理(ビルメン)、設備・機械のフィールドエンジニア、エレベーター保守、電気保安、施工管理などで活かせます。どれも「設備を点検し、不具合の原因を見つけて直す」という保全の経験がそのまま評価される仕事です。
| 転職先 | 活かせる経験 | 働き方の特徴 |
| 設備管理(ビルメン) | 空調・電気・給排水設備の点検、日常の不具合対応 | 常駐型が多い。宿直の有無は現場ごとに違う |
| フィールドエンジニア | 機械・電気の故障診断、部品交換 | お客様先を回る。呼び出し当番の頻度は会社で差が大きい |
| エレベーター保守 | 機械・電気・制御の知識、定期点検の進め方 | 点検は日中中心。夜間待機の体制は会社で異なる |
| 電気保安 | 受変電設備・電気設備の点検経験 | 電験(電気主任技術者)の取得でキャリアが広がる |
| 施工管理(設備・電気) | 設備の構造や更新工事への立ち会い経験 | 工事の工程・品質・安全を管理する立場。日勤中心 |
フィールドエンジニアやエレベーター保守の働き方は、次の記事で詳しく解説しています。
・フィールドエンジニアはやめとけ?きついと言われる5つの理由と、続けやすい職場の見分け方
・エレベーターメンテナンスに未経験から転職するには|向いている人・年収・最初の3年
・エレベーター保守はきつい?夜間待機・担当台数の実態と、辞める前に確認すべきこと
設備保全で役立つ資格
設備保全で代表的な資格は、国家検定の「機械保全技能士」です。職業能力開発促進法に基づく技能検定の一つで、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が実施しており、特級・1級・2級・3級があります。保全の知識を体系的に証明できるため、転職時のアピール材料になります。
ほかに、保全の現場や転職先でよく評価される資格は次のとおりです。
| 資格 | 役立つ場面 |
| 機械保全技能士 | 保全の知識・技能の証明。機械系・電気系などの作業区分がある |
| 第二種電気工事士 | 設備の電気まわりの作業範囲が広がる。設備管理・ビルメンでも評価されやすい |
| ボイラー技士 | ボイラーを持つ工場・ビルの設備管理で評価される |
| 電験三種(第三種電気主任技術者) | 電気保安・設備管理で年収を上げやすい資格 |
出典:公益社団法人日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定」、機械保全技能検定 試験案内サイト
各資格の詳しい内容は、第二種電気工事士でできること・できない工事、ボイラー技士の難易度、電験3種の年収・手当相場の記事で解説しています。
まとめ
設備保全がきついと言われるのは、突発故障の呼び出し、夜勤・交替勤務、長期休暇中の工事、暑さや汚れ、覚えることの多さ、生産部門との板挟みが理由です。ただし、その多くは工場の稼働時間と保全部門の体制によって大きく変わります。
「設備保全をやめるべきか」を考える前に、「いまの職場の体制が合っていないだけではないか」を確認することをおすすめします。日勤のみ・予防保全中心の職場や、ビルの設備管理・フィールドエンジニア・エレベーター保守など、保全の経験を活かせる選択肢は多くあります。
| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |