ボイラー技士の合格率は、令和7年度で二級52.9%・一級50.5%・特級34.0%。二級と一級は受験者の半分が受かる試験です。
ただし、この資格には合格率に表れないハードルが2つあります。ひとつは、二級に合格してもそのままでは免許が交付されないこと。もうひとつは、一級・特級には合格後に数年単位の実務経験が要ることです。
この記事では、安全衛生技術試験協会の公表データで級別の難易度を比較したうえで、免許交付までに何が必要かを整理します。
ボイラー技士の難易度【級別の合格率】
| 年度 | 特級 | 一級 | 二級 |
| 令和7年度 | 34.0% (128/377人) |
50.5% (2,207/4,372人) |
52.9% (11,303/21,349人) |
| 令和6年度 | 29.5% (122/414人) |
43.8% (1,900/4,340人) |
53.8% (11,428/21,226人) |
| 令和5年度 | 21.8% (97/444人) |
49.6% (2,248/4,535人) |
54.7% (12,137/22,178人) |
出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「免許試験の実施状況」および各年度事業報告書。合格者数÷受験者数で検算済み。受験申請者数とは別の数値です。
二級ボイラー技士の難易度
合格率52.9%(令和7年度)。受験資格がなく、誰でも受験できます。試験は4科目40問(各科目10問)、3時間。
一級ボイラー技士の難易度
合格率50.5%(令和7年度)。数字は二級とほぼ同じですが、受験者の顔ぶれが違います。一級は二級免許保持者などに受験資格が限られるため、すでにボイラーの基礎がある人だけが受けて5割ということ。実質的な難度は二級より上です。試験は4科目40問、4時間。
特級ボイラー技士の難易度
合格率34.0%(令和7年度)。受験者は年間377人と非常に少なく、試験は年1回のみです。試験は4科目24問(各科目6問)、各科目1時間の計4時間。問題数が少ないぶん1問の重みが大きく、記述力も問われます。
試験の基本情報
| 項目 | 二級 | 一級 | 特級 |
| 受験資格 | なし | 二級免許保持者など | 一級免許保持者など |
| 出題数 | 4科目40問 | 4科目40問 | 4科目24問 |
| 試験時間 | 3時間 | 4時間 | 4時間 |
| 実施回数 | ほぼ毎月 | 年4〜5回 | 年1回 |
| 受験手数料 | 8,800円(全級共通・非課税) | ||
| 合格基準 | 科目ごとの得点が40%以上、かつ合計60%以上 | ||
出典:安全衛生技術試験協会(令和8年度試験日程・受験手数料)。実施回数はセンターにより異なります。二級は近畿安全衛生技術センター本体のみ年2回など例外があるため、受験地の日程を必ず確認してください。
合格率に表れないハードル①:二級は合格しても免許が出ません
ここが最も見落とされる点です。二級ボイラー技士は、試験に合格しただけでは免許が交付されません。実務経験か講習の修了が別途必要です。
主なルートは次のとおりです。
| ルート | 要件 |
| ボイラー実技講習を修了する (実務未経験者の標準ルート) |
20時間の講習を修了する |
| 実地修習を積む | ボイラーの取扱いについて6か月以上 |
| 学科卒+実地修習 | 大学等でボイラーに関する学科を専攻して卒業+3か月以上 |
| 技能講習+小規模ボイラーの経験 | ボイラー取扱技能講習の修了後、4か月以上 |
出典:厚生労働省「免許申請等の手続きについて」、一般社団法人日本ボイラ協会。ほかにエネルギー管理士(熱)・海技士・ボイラー・タービン主任技術者などの有資格者向けのルートもあります。
未経験から目指す人の大半は「ボイラー実技講習(20時間)」を使います。日本ボイラ協会が各支部で実施しており、通常3日間です。受講料は支部によって異なるため、申し込み前に確認してください。
合格率に表れないハードル②:一級・特級は合格後に実務経験が要ります
| 免許 | 交付に必要な実務経験(試験合格に加えて) |
| 一級 | 二級免許を受けた後、2年以上ボイラーを取り扱った経験 または二級免許を受けた後、1年以上ボイラー取扱作業主任者としての経験 |
| 特級 | 一級免許を受けた後、5年以上ボイラー(小規模・小型を除く)を取り扱った経験 または3年以上ボイラー取扱作業主任者としての経験 |
出典:一般社団法人日本ボイラ協会「ボイラー技士免許」。免許は都道府県労働局長が交付します。
つまり、いまの職場でボイラーを扱えないと、試験に受かっても上位免許に進めません。特級まで行くには、二級免許取得から数えて最短でも7年以上かかる計算です。「どの規模のボイラーを扱う職場にいるか」が、そのままキャリアの上限を決めます。
よくある誤解:免許の級は「扱えるボイラーの大きさ」ではありません
| 伝熱面積の合計 (貫流ボイラー以外) |
貫流ボイラーのみ | 作業主任者に選任できる者 |
| 500㎡以上 | — | 特級 |
| 25㎡以上500㎡未満 | 250㎡以上 | 特級・一級 |
| 25㎡未満 | 250㎡未満 | 特級・一級・二級 |
| 小規模ボイラーのみを扱う場合 | 特級・一級・二級 +ボイラー取扱技能講習修了者 |
|
出典:ボイラー及び圧力容器安全規則 第24条(厚生労働省 法令等データベース)、一般社団法人日本ボイラ協会「ボイラーの取扱い管理と作業主任者」。貫流ボイラーのみを取り扱う場合は別基準が適用されます。
貫流ボイラーの特則(250㎡)が抜けている解説も多いので、あわせて押さえておいてください。近年は効率のよい貫流ボイラーの採用が増えています。
ビルメン4点セットの中での位置づけ
ボイラー技士は「ビルメン4点セット」の一角として語られます。設備管理職を目指すうえで、どの順番で取るべきかの判断材料として並べます。
| 資格 | 合格率 | 年度・区分 |
| 第二種電気工事士(学科) | 55.4% | 令和7年度 下期 |
| 二級ボイラー技士 | 52.9% | 令和7年度 |
| 第三種冷凍機械責任者 | 44.3% | 令和6年度 |
| 危険物取扱者 乙種第4類 | 33.8% | 令和8年度 4〜6月 |
| (上位)建築物環境衛生管理技術者 | 30.6% | 第55回・令和7年度 |
出典:安全衛生技術試験協会、電気技術者試験センター、高圧ガス保安協会、消防試験研究センター、日本建築衛生管理教育センター。危険物乙4は四半期実績、第三種冷凍は令和6年度の数値です。集計期間が資格ごとに異なるため、厳密な横並び比較ではありません。
合格率だけを見れば、二級ボイラー技士は4点セットの中でも取りやすい部類です。ただし合格後に実技講習20時間が必要なのはボイラーだけで、この「合格率に表れないコスト」を計算に入れる必要があります。
勉強時間の目安
| 級 | 目安 | 1日1時間なら |
| 二級(初学者) | 100〜200時間 | 3〜7か月 |
| 一級(二級取得済み) | 50〜100時間 | 2〜4か月 |
| 特級 | 200時間以上 | 7か月以上 |
ボイラー技士の年収と求人
| 職業 | 年収 | 平均年齢 | 有効求人倍率 |
| ボイラーオペレーター | 452.3万円 | 47.3歳 | 1.14倍 |
| ビル施設管理 | 452.3万円 | 47.3歳 | 1.03倍 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」。年収・平均年齢は令和7年賃金構造基本統計調査を加工して作成、有効求人倍率は令和7年度ハローワーク求人統計。
需要は緩やかに縮小しています。ただし人は足りていません
日本ボイラ協会の2025年度事業報告書によると、同協会が実施した性能検査のうちボイラーは11,053件(前年比▲2.0%)、ボイラー実技講習の受講者は11,520名(▲4.7%)。検査件数も新規取得者も、年1〜5%の緩やかな減少が続いています。
出典:一般社団法人日本ボイラ協会「2025年度事業報告書」(対象期間 2025年4月1日〜2026年3月31日)
電化・脱炭素・設備の小型化が進み、ボイラー市場そのものは拡大していません。「需要が急増する資格」ではないので、そう書いている情報は疑ってください。
一方で、有効求人倍率は1.14倍、平均年齢は47.3歳。母集団が縮んでいるうえに高齢化しているため、扱える人はむしろ足りていません。市場の拡大ではなく、担い手の減少が需要を支えている構図です。
ボイラー技士は取る価値があるか
| 向いているケース | 優先度を下げてよいケース |
| ビルメンテナンス・設備管理に就きたい(未経験可) | すでに小規模ボイラーしかない現場に固定されている |
| 工場・プラントの設備部門を目指している | 電気系のキャリアに軸足を置きたい |
| 手に職をつけたいが、まず1つ資格が欲しい | 短期間で年収を大きく上げたい |
| 4点セットを揃えて設備管理の入口を作りたい | 設備管理そのものに関心がない |
二級は受験資格がなく、試験もほぼ毎月あります。設備管理系のキャリアを考えているなら、最初の1枚として合理的な選択です。ただし単独で年収が大きく動く資格ではありません。4点セットを揃えたうえで、実務経験と組み合わせて評価されると考えてください。
よくある質問
二級ボイラー技士は独学で合格できますか?
できます。合格率52.9%で受験資格もなく、市販のテキストと過去問で対応できる範囲です。ただし合格基準が「科目ごと40%以上かつ合計60%以上」なので、4科目をまんべんなく仕上げる必要があります。
試験に合格すれば、すぐにボイラー技士として働けますか?
二級は働けません。試験合格に加えて、6か月以上の実地修習またはボイラー実技講習(20時間)の修了などが必要です。免許が交付されて初めてボイラー技士になります。
二級を飛ばして一級から受験できますか?
原則できません。一級の受験資格は二級免許保持者、またはボイラー関連の学科卒+1年以上の実務経験など、限られたルートに絞られています。
特級ボイラー技士まで取る意味はありますか?
伝熱面積500㎡以上のボイラーで作業主任者に選任できるのは特級だけです。製鉄所・石油精製プラント・発電所など大規模設備で働くなら意味があります。ただし受験者は年間377人、試験は年1回、一級免許取得後さらに5年以上の実務経験が必要です。目指すなら早めに逆算してください。
ボイラー技士の需要はこれからも続きますか?
検査件数・講習受講者数は年1〜5%の緩やかな減少が続いており、市場は拡大していません。ただし有効求人倍率1.14倍、平均年齢47.3歳で、扱える人材は不足しています。急成長は見込めませんが、当面なくなる資格でもありません。
まとめ
・合格率は令和7年度で二級52.9%・一級50.5%・特級34.0%。「二級60%前後」「特級20%前後」は古い数字
・合格基準は科目ごと40%以上かつ合計60%以上。苦手科目を捨てる作戦は通用しない
・二級は合格しても免許が出ない。実技講習20時間などが別途必要
・一級は二級免許後2年以上、特級は一級免許後5年以上の実務経験が交付要件
・25㎡・500㎡の区分は「扱えるボイラーの大きさ」ではなく「作業主任者に選任できる範囲」
・ビルメン4点セットの中では取りやすい部類。ただし実技講習という合格率に表れないコストがある
・年収452.3万円、有効求人倍率1.14倍。市場は緩やかに縮小、人手は不足
この資格でつまずくのは、試験ではなく免許交付の要件です。特に一級・特級は、いまの職場でどの規模のボイラーを扱えるかで到達点が決まります。二級を取ったところで止まってしまう人の多くは、勉強不足ではなく環境の問題です。
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| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |