自動車整備士が「やめとけ」と言われる主な理由は、仕事量に対して給料が上がりにくいこと、暑さ寒さ・汚れ・重量物の多い作業環境、車検やタイヤ交換シーズンの繁忙、工具をそろえる負担、EVや電子制御の普及で学び続ける必要があることの5つです。
一方で、自動車整備士の有効求人倍率は全国で5.46倍(令和7年度・job tag)と、人手が足りていない職種です。「整備士そのものが嫌なのか」「今の職場が合わないのか」を分けて考えると、続けるべきか・どこへ動くべきかが見えてきます。
この記事では、きついと言われる理由を数字とあわせて整理したうえで、整備で身につけた故障診断や機械・電装の知識を活かせる転職先、年収の実例、転職前の準備までを解説します。
自動車整備士が「やめとけ」と言われる5つの理由
自動車整備士が「やめとけ」と言われるのは、仕事の責任と体への負担に比べて給料が伸びにくく、繁忙期の残業や技術の変化への対応も求められるためです。ただし、5つのうち多くは職場(ディーラーか民間工場か、人員体制、給与制度)によって大きく変わります。
| 理由 | よくある実態 | 職場で変わるか |
| 給料が仕事量に見合わない | 若いうちは手取りが少なく、資格を取っても手当が小さい職場がある | 変わる(給与制度・資格手当の差が大きい) |
| 作業環境がきつい | 夏の暑さ・冬の寒さ、油汚れ、重い部品の脱着、腰への負担 | 一部変わる(設備・空調・リフトの充実度) |
| 繁忙期の残業 | 車検が集中する時期、春・秋のタイヤ交換シーズンに残業が増える | 変わる(人員と予約の取り方) |
| 工具をそろえる負担 | 職場によっては工具を自分で買いそろえる慣習がある | 変わる(会社支給か自前か) |
| 技術の変化 | EV・ハイブリッド、先進安全装置、電子制御の診断など学ぶことが増え続ける | 変わらない(むしろ評価される力になる) |
5つ目の「技術の変化」は負担である一方、スキャンツールを使った故障診断や電装の知識は、ほかの機械・設備の仕事でもそのまま評価されます。転職を考えるときは、この経験を武器として整理しておくのが近道です。
数字で見る自動車整備士|平均年収503.8万円・有効求人倍率5.46倍
自動車整備士の平均年収は503.8万円、平均年齢は40.6歳で、有効求人倍率は5.46倍です(厚生労働省 job tag、令和7年賃金構造基本統計調査ほか)。求人倍率がこれだけ高いということは、整備士として職場を変える選択肢も十分にあるということです。
| 項目 | 全国の値 |
| 賃金(年収) | 503.8万円 |
| 平均年齢 | 40.6歳 |
| 月の労働時間 | 166時間 |
| 有効求人倍率(令和7年度) | 5.46倍 |
| 求人の提示月給(令和7年度) | 26万円 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「自動車整備士」(賃金・年齢・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査、求人倍率・求人賃金はハローワーク求人統計の令和7年度)
平均年収は経験を積んだ40代を含む数字で、若手のうちは「仕事量のわりに手取りが少ない」と感じやすいのが実情です。逆に言えば、20〜30代で現場経験が数年ある方は、整備業界の中でも外でも「経験者」として迎えられやすい立場にいます。
辞めるか続けるかの判断基準
判断の軸は、不満の原因が「整備士という職種」にあるのか「今の職場」にあるのかです。職場が原因なら整備士のまま職場を変える、職種が原因なら整備の経験が活きる別の仕事へ移る、というのが後悔しにくい順番です。
| こんな不満なら | 考えられる動き方 |
| 休みが少ない・残業が多い | 人員に余裕のある工場へ移る/年間休日の多い設備系の仕事へ移る |
| 給料・資格手当が低い | 給与制度の違う会社へ移る/等級や手当が明示された設備系の会社へ移る |
| 車をいじるのは好きだが、接客やノルマがつらい | 整備に専念できる工場へ移る |
| 体力的にこの先が不安 | 重量物の少ない点検・保守中心の仕事へ移る |
| 機械を直す仕事は好きだが、車以外も見てみたい | エレベーター・設備・機械のメンテナンス職へ移る |
自動車業界の中での転職(ディーラーから民間工場へ、トラック・バスの整備へなど)も有力な選択肢ですが、当社ではこの領域の求人は扱っていません。この記事では、整備の経験を建物や工場の設備で活かす転職先を中心にご紹介します。
整備士の経験を活かせる転職先5つ
自動車整備士の経験が活きやすいのは、エレベーター保守、フィールドエンジニア(機械・設備系)、設備保全、ビル設備管理(ビルメン)、設備の施工管理の5つです。いずれも「点検して、異常を見つけて、直す」という整備士の仕事の型がそのまま使えます。
| 転職先 | 活きる経験 | 働き方の特徴 |
| エレベーター保守 | 機械の構造理解、定期点検、部品交換、故障診断 | 担当エリアを回って点検。会社によって夜間・休日の待機の有無が違う |
| フィールドエンジニア(機械・設備系) | 故障診断、電装の知識、お客様への説明 | 納入先の機械を点検・修理。出張や緊急対応の多さは会社次第 |
| 設備保全 | 機械の分解・組立、予防整備の考え方 | 工場の生産設備を止めないための点検・修理。交替勤務の有無は会社ごとに違う |
| ビル設備管理(ビルメン) | 点検の段取り、記録をつける習慣 | ビルの電気・空調・給排水設備を管理。宿直のある現場もある |
| 設備の施工管理 | 段取り、部品・工程の管理 | 空調・電気などの工事の工程・安全・品質を管理する。現場作業そのものではなく管理の仕事 |
それぞれの仕事の詳しい実態は、エレベーターメンテナンスに未経験から転職するには、フィールドエンジニアはやめとけ?、設備保全はきつい?、ビルメンテナンスはきつい?で解説しています。
なお、建設現場の作業員・職人、エレベーターの据付作業員などの建設業務は、職業安定法により当社の紹介対象外です。ご紹介するのは、保守・点検・管理の仕事です。
年収はどう変わる?機械を直す仕事からの転職データ
機械・設備を直す仕事から設備系のメンテナンス職へ移った例では、年収が上がった方も下がった方もいます。上がりやすいのは現年収が300万円台以下の20〜30代、下がりやすいのは夜勤・待機の手当がなくなるケースです。
| 年代 | 保有資格 | 前職 | 年収の変化 |
| 20代前半 | 資格なし | 空調サービス・設備保全 | 300万円→383万円(+83万円) |
| 30代 | 2級ボイラー技士 | 設備保全(ブランク10年) | 250万円→300万円(+50万円) |
| 20代後半 | 第二種電気工事士 | 電気工事 | 360万円→331万円(−29万円) |
出典:当社の成約事例(2025〜2026年)。内定通知書・労働条件通知書の記載額。自動車整備士から設備系への成約は公開できる件数がまだないため、近い「機械・設備を直す仕事」からの例を掲載しています
また、当社がご紹介しているエレベーター業界の求人(2026年時点)では、未経験〜経験1年程度で年収450万〜500万円前後が目安です。一方、当社の面談では、夜勤のある保守の仕事から日勤のみの仕事へ移ると、年収が約500万円から380万〜400万円程度に下がる見込みとなった方もいました。「休みを増やしたい」のか「年収を上げたい」のか、優先順位を先に決めておくと選びやすくなります。
転職前にやっておきたい準備
整備士から設備系の仕事へ移るときは、①整備でやってきたことを「設備の言葉」で説明できるようにする、②第二種電気工事士など設備系で評価される資格を検討する、③休日・待機・研修の条件を確認する、の3つを準備しておくと選考が進みやすくなります。
①経験の言い換え:「車検整備」だけでなく、「定期点検の手順に沿って不具合を見つけ、部品交換と動作確認まで行った」「スキャンツールで電装系の故障を診断した」のように、点検・診断・修理の流れで説明すると、設備系の採用担当者にも伝わります。
②資格:自動車整備士の資格は、設備系の仕事でそのまま必須資格の代わりになることは少ない一方、第二種電気工事士は受験資格がなく、電気設備を扱う仕事全般で評価されます。詳しくは第二種電気工事士でできることをご覧ください。
③条件の確認:同じ職種でも、年間休日、夜間・休日の待機の頻度、未経験者の研修期間は会社ごとに大きく違います。当社の面談でも、整備士を含む現場の仕事を経験された方が、年間休日110日以上を条件にエレベーターのサービスエンジニア職へ応募されるなど、休日を軸に転職先を選ぶ方が増えています。
よくある質問
Q. 自動車整備士から未経験の仕事に転職できますか?
A. できます。エレベーター保守や設備保全、フィールドエンジニアの求人では、機械の構造が分かり、点検・故障診断の経験がある自動車整備士は評価されやすい背景の一つです。
Q. 何歳までなら転職しやすいですか?
A. 年齢の上限は企業ごとに違い、一概には言えません。当社の成約データでは、年収が上がった例は20〜30代に多く、50代以上は横ばいか下がる例が多い傾向です。
Q. 整備士の資格は無駄になりますか?
A. 資格そのものが求人の必須条件になることは少ないものの、資格を取るまでに身につけた構造の理解や診断の経験は評価されます。履歴書には資格の等級とあわせて、担当してきた作業内容を書きましょう。
まとめ
自動車整備士が「やめとけ」と言われるのは、給料の伸びにくさ、作業環境、繁忙期の残業、工具の負担、技術の変化が重なるためです。ただし、有効求人倍率は5.46倍と高く、多くの不満は職場を変えることで解決できる可能性があります。
整備士という仕事そのものから離れたい場合も、点検・故障診断・部品交換の経験は、エレベーター保守、フィールドエンジニア、設備保全、ビル設備管理、設備の施工管理で活かせます。休みと年収のどちらを優先するかを決め、会社ごとの休日・待機・研修の条件を確かめたうえで動くのが、後悔しない転職の進め方です。
| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |