「エレベーター業界は今後どうなるのか」「人手不足と聞くけれど、やばい業界なのか」。エレベーター業界への転職を考える人や、いま保守の仕事をしている人から、当社にもよく寄せられる質問です。
結論から言うと、エレベーターを新しく設置する台数は20年前より約4割減っていますが、保守している台数は約3割増えています。建物が建たなくなっても、すでに動いているエレベーターの点検・修理・更新の仕事はなくなりません。人手不足の中心もこの「守る」側にあります。
この記事では、日本エレベーター協会の調査データと法令をもとに業界の今後を整理し、当社の面談・求人から見える転職市場の実情もあわせてお伝えします。
エレベーター業界の今後は「新設は減り、保守とリニューアルが続く」
エレベーター業界の今後は、新設工事の量は緩やかに減る一方、すでに設置された機器の保守・点検とリニューアル(更新工事)の仕事が積み上がっていく構造です。日本エレベーター協会の調査では、2024年度の昇降機の新設台数は24,190台で、2004年度(41,735台)から約42%減りました。一方、会員会社が保守しているエレベーターは687,078台で、2004年度(528,748台)から約30%増えています。
| 年度 | 昇降機の新設台数 | エレベーターの保守台数 |
| 2004年度 | 41,735台 | 528,748台 |
| 2009年度 | 27,296台 | 594,101台 |
| 2014年度 | 30,464台 | 628,406台 |
| 2019年度 | 28,292台 | 675,016台 |
| 2024年度 | 24,190台 | 687,078台 |
出典:一般社団法人日本エレベーター協会「2024年度昇降機設置台数等調査結果報告」(Elevator Journal No.55、2025年8月)。協会正会員90社の集計。新設台数はエレベーター・エスカレーター等の国内総合計、保守台数はホームエレベーターを除くエレベーター。
新設は景気や建設投資に左右されますが、保守は一度設置されたエレベーターが撤去されるまで毎年続く仕事です。エスカレーターを含めると、2024年度の保守台数は757,810台にのぼります。業界の仕事の土台は、毎年積み上がる「保守台数」の側にあります。
エレベーター業界が人手不足と言われる4つの理由
エレベーター業界の人手不足は、守るべき台数が増え続けているのに、それを担う技術者の育成に年数がかかることが根本にあります。ここに古い機種の更新需要と、建設業の働き方改革が重なっています。
1. 保守する台数が増え続けている
前の表のとおり、保守台数は20年で約16万台増えました。エレベーターは建築基準法第12条第3項にもとづき、特定行政庁が定める時期(おおむね6か月〜1年ごと)に定期検査を受けて報告する必要があり、日常の保守点検も欠かせません。台数が増えれば、そのぶん技術者が必要になります。
2. 古いエレベーターのリニューアル需要
2009年9月施行の建築基準法施行令の改正で、戸開走行保護装置や地震時管制運転装置の設置が新しいエレベーターに義務付けられました。改正前に設置されたエレベーターは「既存不適格」としてそのまま使い続けることができますが、安全性を高めるための更新工事(リニューアル)が順次進められています。リニューアル工事には、既存の建物を使いながら工事を進める段取りと施工管理の経験が求められます。
3. 建設業の時間外労働の上限規制
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。据付やリニューアルの工事も対象で、これまでのように残業や休日出勤で工期を吸収することが難しくなっています。同じ工事量をこなすには、より多くの人手と工程の見直しが必要です。
4. 一人前になるまでに年数がかかる
エレベーターの保守は、機械・電気・制御の知識に加え、メーカーごとの機種の違いを理解する必要があり、一人で現場を任されるまでに年数がかかります。法定検査を行う昇降機等検査員の講習も、学歴に応じた実務経験が受講の条件です。資格の詳細は昇降機等検査員とは?受講資格・講習・合格率で解説しています。
「エレベーター業界はやばい」は本当か
「やばい」と言われる理由の多くは、業界の将来性ではなく、保守職の働き方にあります。夜間・休日の故障対応の待機や、担当台数の多さによる負担は実際にある話です。一方で、保守台数が積み上がるストック型の仕事なので、景気によって仕事が急になくなる業界ではありません。
つまり見るべきなのは「業界がやばいか」ではなく、「その会社の待機の頻度と担当台数が自分に合うか」です。保守職のきつさと、辞める前に確認したいことはエレベーター保守はきつい?夜間待機・担当台数の実態にまとめています。
これから求められる人材と職種
これからのエレベーター業界で特に求められるのは、保守技術者、リニューアル工事の施工管理、法定検査を担う昇降機等検査員です。いずれも保守台数の増加とリニューアル需要に直結する職種です。
| 職種 | 主な仕事 | 需要が続く理由 |
| 保守技術者(フィールドエンジニア) | 定期点検・部品交換・故障対応 | 保守台数が毎年増えている |
| リニューアル・据付の施工管理 | 工程・安全・品質の管理、建物側との調整 | 既存不適格機の更新、時間外労働の上限規制 |
| 昇降機等検査員 | 建築基準法にもとづく定期検査 | すべてのエレベーターに定期検査の義務がある |
| 技術サポート・遠隔監視 | 故障情報の解析、現場技術者の支援 | 遠隔監視の普及、技術者の負担軽減 |
なお、据付工事の作業員として現場で施工にあたる仕事は、建設業務にあたるため当社の紹介対象外です。当社がご紹介しているのは、保守技術者・施工管理・検査・技術サポートなどの職種です。
当社の面談・求人から見える転職市場の実情
建設ワークスでは、エレベーター業界で働く方や、エレベーター業界をめざす方との面談が増えています。面談と求人の内容から見えてきた実情は次のとおりです(個別の会社や求人条件ではなく、傾向として読んでください)。
- 独立系は未経験の間口が広い。施工管理の経験が1年程度あれば応募できる求人もあります
- メーカー系は選考が厳しめ。エレベーター業界の経験者、有資格者、機械系・電気系の学科を卒業した方が有利な傾向です
- 独立系で働く20代からは、メーカー系志望の声が多い。理由として多いのは、夜間待機と担当台数の負担、扱う機種の知識を深めたいという希望です
- 独立系からメーカー系への転職は、年齢が上がるほど難しくなります。50代では現実的に難しくなる傾向があるため、移りたい方は早めの検討をおすすめします
メーカー系と独立系の違いはエレベーターのメーカー系と独立系の違い、未経験からの入り方はエレベーターメンテナンスに未経験から転職するにはで詳しく解説しています。
よくある質問
エレベーター業界はこの先なくなりますか?
なくなる可能性は低いと考えられます。新設台数は減っていますが、日本エレベーター協会の会員会社が保守しているエレベーターだけで687,078台(2024年度)あり、これらには定期検査と保守が欠かせません。
エレベーター業界の人手不足は、転職する側にとって有利ですか?
未経験や異業種からの採用を広げている会社が増えているという意味では、入りやすくなっています。ただし、メーカー系は経験者や有資格者が有利な傾向が続いているため、どこに入るかで条件は大きく変わります。
今から入るなら、どの資格を目指すとよいですか?
長く働くなら、昇降機等検査員が代表的な資格です。法定検査を担えるようになり、キャリアの選択肢が広がります。受講には実務経験が必要なので、入社後に経験を積みながら目指すのが一般的です。
まとめ
- エレベーターの新設台数は20年で約42%減った一方、保守台数は約30%増えて687,078台に(日本エレベーター協会・2024年度)
- 人手不足の理由は、保守台数の増加、古い機種のリニューアル需要、時間外労働の上限規制、育成に年数がかかること
- 「やばい」と言われるのは主に保守職の待機や担当台数の負担。業界そのものはストック型で安定している
- 今後も需要が続くのは保守技術者、リニューアルの施工管理、昇降機等検査員
- 独立系からメーカー系への転職は、年齢が上がるほど難しくなる。考えているなら早めに動く
| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |