「電気工事士2種はやめとけ」と検索する人が毎月数千人います。理由は危険・薄給・体力・人間関係・覚えることの多さの5つに集約されます。どれも実際にある話です。
ただ、この記事で本当に伝えたいのはそこではありません。「やめとけ」と言われる理由を並べた記事はいくらでもありますが、「実際に辞めた人がその後どうなったか」を書いた記事はほとんどありません。知恵袋やSNSの体験談は「辞めた」「続けた」で話が終わるからです。
建設ワークスは転職支援の会社なので、辞めたあとの数字を持っています。第二種電気工事士をお持ちの方が次にどこへ行き、年収がどう動いたか。内定通知書の実物から集計した実データを後半で出します。
「やめとけ」と言われる5つの理由
電気工事士2種が「やめとけ」と言われる理由は、①危険と隣り合わせ ②見習い期間の給料が低い ③体力的にきつく天候に左右される ④職人気質の人間関係 ⑤資格を取っても覚えることが終わらない、の5つです。いずれも事実ですが、5つのうち3つは「職場を選べば避けられる」種類の問題です。順に見ていきます。
① 危険と隣り合わせの仕事である
感電、高所からの墜落、工具による負傷。電気工事は労働災害のリスクが構造的に高い仕事です。
厚生労働省の令和6年の労働災害発生状況では、建設業の死亡者は232人。全産業の死亡者746人のうち約31%を建設業が占めています。前年比では9人・4.0%の増加でした。
出典:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
② 見習い期間の給料が低い
「やめとけ」の理由でおそらく最も多いのがこれです。資格を取っても、実務ができるようになるまでは戦力として数えられません。入職1〜3年目は年収250〜350万円という水準の求人が実際にあります。
ただし、これは電気工事士に限らず技能を身につける仕事に共通する構造です。問題は「低い期間があること」ではなく、その期間が何年続くのか、その後いくらまで上がるのかが入社前に見えないことです。等級テーブルを公開している会社とそうでない会社で、ここは大きく違います。
③ 体力的にきつく、天候に左右される
夏の屋根裏、冬の屋外、脚立の上での長時間作業、重量物の運搬。屋外現場は雨天で工程がずれ、その分が後ろに寄ります。「暑い・寒い・重い」は職場を変えても電気工事である限りついて回ります。これは5つの中で最も避けにくい理由です。
④ 職人気質の人間関係
「見て覚えろ」「聞く前にやれ」という文化が残っている現場はあります。一方で、若手の定着を経営課題として教育体制を整えた会社も増えています。これは業界の問題ではなく会社の問題です。同じ電気工事の会社でも、離職率は大きく違います。
⑤ 資格を取っても、覚えることが終わらない
第二種を取った後も、第一種、認定電気工事従事者、施工管理技士、メーカーの機器ごとの知識と続きます。技術も法令も変わります。学び続けることが前提の仕事で、そこを負担と感じる人には向きません。
ただし、2024年から前提が2つ変わっています
ネット上の「やめとけ」情報の多くは2020〜2022年頃に書かれたもので、そのまま更新されずに残っています。この数年で、前提が2つ変わりました。
変化① 残業に法律の上限がかかった(2024年4月)
建設業は長らく時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月1日から猶予が終わり、罰則付きの上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間。特別条項を結んでも年720時間が上限です。
「残業が青天井」という前提は、少なくとも法律上は成立しなくなりました。実態が追いついているかは会社によりますが、36協定を無視した働かせ方は違法になったという点は変わっています。
根拠:労働基準法第36条(働き方改革関連法により建設業は2024年4月1日から適用。災害の復旧・復興事業には一部例外あり)
変化② 試験がCBT化して、受けやすくなった
第二種電気工事士の学科試験はCBT方式(パソコン受験)が拡大しており、令和8年度上期はCBT受験の比率が46.6%に達しました(前年は19.9%)。同じ回の学科合格率は62.2%で、前年の57.7%から4.5ポイント上がっています。
さらに令和9年度からは第一種・第二種とも学科試験がCBT方式に統一される予定です。
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター
データで見ると、電気工事士は「やめとけ」なのか
公的統計で見ると、電気工事士は年収628.1万円・有効求人倍率3.84倍。全産業平均を上回る水準で、求人倍率は「人が足りていない」ことを示しています。
| 項目 | 電気工事士 | 備考 |
| 平均年収 | 628.1万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査を加工 |
| 平均年齢 | 41.6歳 | ― |
| 有効求人倍率 | 3.84倍 | 令和7年度ハローワーク求人統計 |
| 月間労働時間 | 163時間 | ― |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)「job tag」
第二種の試験自体は難しくない
| 試験 | 令和7年度 上期 | 令和7年度 下期 |
| 学科試験 | 57.7% | 55.4% |
| 技能試験 | 72.0% | 71.4% |
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 第二種電気工事士試験結果
学科・技能とも半数以上が受かります。免状交付に実務経験も要りません。「やめとけ」と言われているのは資格の難しさではなく、取ったあとの働き方です。
辞めた人はその後どうなったのか【当社の成約データ】
ここが本題です。以下は建設ワークスが2025〜2026年に成約した案件のうち、第二種電気工事士をお持ちだった方の入社時年収を、内定通知書・労働条件通知書の実物から集計したものです(氏名・企業名は伏せています)。
| 年代 | 保有資格 | 次に選んだ仕事 | 年収の変化 |
| 30代後半 | 第一種・第二種+2級電気工事施工管理技士 | 電気工事施工管理(大手電気工事会社) | 600万 → 809万(+209万) |
| 20代後半 | 第二種電気工事士 | サービスエンジニア(産業機械メーカー) | 320万 → 447万(+127万) |
| 30代後半 | 第二種電気工事士 | 電気工事施工管理(電気工事会社) | 430万 → 519万(+89万) |
| 20代後半 | 第二種電気工事士 | フィールドエンジニア(大手セキュリティ会社) | 360万 → 331万(−29万) |
| 50代 | 第二種電気工事士ほか多数 | 設備管理(設備保守会社) | 650万 → 630万(−20万) |
出典:建設ワークス成約実績(内定通知書・労働条件通知書の実物から集計/2025〜2026年)。氏名・企業名は非公開。
読み取れること
① 上がったのは20〜30代でした。50代・現年収600万円超からの転職は、資格を持っていても横ばいか微減です。年齢が最大の変数で、資格ではありません。
② 現場作業から離れた人ほど上がっています。+209万・+127万・+89万の3件は、いずれも施工管理かサービスエンジニアへの転換でした。「電気工事がきつい」の解決策として、同業他社への横移動よりも職種の転換のほうが数字が動いています。
③ 第二種だけでは跳ねません。+200万に届いた1件は、第二種に加えて第一種と2級電気工事施工管理技士を持っていたケースです。第二種は「応募できる求人の入口を開ける資格」であって、単体で年収を押し上げる資格ではありません。
「やめとけ」が当たる人・当たらない人
| 「やめとけ」が当たりやすい | 続けたほうがいい |
| 屋外・高所・暑さ寒さがどうしても無理 | 手を動かして形が残る仕事にやりがいを感じる |
| 数年で年収を大きく上げたい | 資格を積み上げて長く働くことに納得できる |
| 学び続けることを負担に感じる | 新しい機器や法令を追うのが苦にならない |
| デスクワーク中心の働き方を望んでいる | 現場のチームで動くことが合っている |
| 体を壊すリスクを取りたくない | 独立・一人親方も視野に入れている |
右の列に当てはまるなら、辞める必要はありません。左に当てはまる項目があっても、それが「電気工事という仕事」の問題なのか「いまの会社」の問題なのかで、打つ手は変わります。
辞める前に確認したい3つのこと
1. 業界の問題か、会社の問題か
残業時間、休日数、教育体制、等級テーブルの有無。これらは同じ電気工事の会社でも大きく違います。2024年4月から上限規制が適用されているので、月45時間を大きく超える残業が常態化しているなら、それは業界ではなくその会社の問題です。
2. その職場で、次の資格の実務経験が積めるか
第一種電気工事士の免状交付には実務経験3年が必要です。住宅系の会社にいる限り、自家用電気工作物の経験は積めません。上位資格を狙うなら、扱う設備の区分で職場を選ぶ必要があります。詳しくは第二種電気工事士でできること・できない工事の記事で整理しています。
3. 「辞める」のか「職種を変える」のか
上の実データのとおり、年収が上がった3件はすべて職種の転換でした。電気工事の経験をゼロにして異業種へ出るより、経験を持ち込める施工管理・サービスエンジニアへ移るほうが、条件は良くなりやすいのが実情です。
よくある質問
電気工事士2種を取っても意味がないですか
意味はあります。ただし「取れば年収が上がる資格」ではなく「応募できる求人が増える資格」です。当社のデータでも、第二種単体で大きく年収が動いた例はありません。動いたのは施工管理資格を足したケースと、職種を転換したケースです。
未経験から電気工事士になるのは無謀ですか
無謀ではありません。有効求人倍率3.84倍で、未経験可の求人は相当数あります。ただし入職1〜3年目の年収水準と、その後の等級テーブルを入社前に確認してください。ここが見えない会社は避けたほうが無難です。
電気工事士から転職するなら、どの職種ですか
当社の実績では電気工事施工管理とサービスエンジニア(エレベーター・空調・産業機械・セキュリティ機器)の2つです。どちらも電気工事の経験が直接評価されます。サービスエンジニアは日勤中心・直行直帰の求人が多く、働き方を変えたい方の受け皿になっています。
「やめとけ」と言われるのに求人が多いのはなぜですか
辞める人が多く、同時に需要も伸びているからです。有効求人倍率3.84倍は、求人1件あたり求職者が0.26人しかいない状態を意味します。裏を返せば、続けられる人にとっては選択肢が多い環境です。
第一種を取れば状況は変わりますか
扱える工事の範囲は広がりますが、それだけで年収が跳ねるわけではありません。当社のデータでは、第一種電気工事士を持ちながら年収が60万円下がった例もあります(40代・540万→480万)。効いているのは資格より年齢と受け入れ企業の等級制度です。
まとめ
電気工事士2種が「やめとけ」と言われる理由は、危険・薄給・体力・人間関係・学習量の5つ。このうち体力面以外は、職場や職種を変えれば解決しうる問題です。
そして2024年4月から、残業には罰則付きの上限規制がかかりました。ネット上の「やめとけ」情報の多くは、この変化を反映していません。
最後に、当社のデータが示していることをもう一度。年収が上がった3件は、すべて施工管理かサービスエンジニアへの職種転換でした。「電気工事士を辞めるかどうか」で悩んでいる方の多くは、実は「現場作業を続けるかどうか」で悩んでいます。この2つは別の問題です。
関連記事
・第二種電気工事士でできること・できない工事
・第一種電気工事士の合格率と難易度
・電気工事士は稼げる?年収の実態
・施工管理の仕事内容とは
・建設業界の資格一覧と転職での評価

| 年間面談数 | 約1,000件 |
| 累計支援者数 | 約3,000名(面談・キャリア相談を含む) |
| 取引建設会社 | 1,000社以上(2026年8月時点) |
| 支援領域 | 建築・電気・管工事の施工管理/設備管理/設計・積算/発注者側(施主) |