ハウスメーカーとは、正式な定義は明確になっていませんが一般的には住居を建築し、販売を行っている「住宅建設会社」のことを指すといわれています。
建築、販売に加えてリフォームや点検なども行っているハウスメーカーもあります。
ハウスメーカーは、様々な職種に分かれて成り立っています。
住居をお客様に売る「営業」、住居を建築するための「設計」、実際の建設現場を管理する「施工管理」、建築された住居内の家具を選定する「インテリアコーディネーター」、多岐にわたる部門を裏で支える「事務職」などがあります。
本記事では、上記で上げた職種の中でも特に「施工管理」に焦点を当てて紹介していきます。
本記事は以下のような方におすすめの記事となっています。
ハウスメーカーの施工管理とは
建設現場において、施工管理技士は住宅の建築工程を円滑に、そして質を維持して進めていくために必要不可欠な存在です。
「ゼネコンとハウスメーカーそれぞれの施工管理にはどのような違いがあるのか」「ハウスメーカーの施工管理者が日々行っている仕事内容とは?」などを紹介していきます。
ここでは、上記の疑問に答えるとともに、ハウスメーカーの施工管理の具体的な業務内容とその重要性について紹介していきます。
ゼネコンとハウスメーカー:施工管理の違い
ハウスメーカーもゼネコンも建設に携わっている会社であり、それぞれに従事している施工管理技士の仕事内容や施工管理の流れには大きな差はありません。
しかしハウスメーカーとゼネコンにおける施工管理の相違点は、扱う現場の種類の違いが挙げられます。
ハウスメーカーは名前の通り、「住居」にかかわる建設工事おいて従事しています。
建築工事には、公共工事、インフラ工事、大型商業施設、学校など様々な建築物の種類があります。その中でもハウスメーカーは「住居」の建設から宣伝、販売をしている企業であるため人々の住空間を提供することに焦点を当てています。
一方でゼネコンは、ハウスメーカーのように1つの領域に限定しておらず、幅広い種類の建設工事や土木工事を担当しています。そのためダム、トンネル、公共施設、アミューズメント施設、病院など様々な現場にて従事します。
ハウスメーカー施工管理:仕事内容
①工程管理
施工管理者が工事を工期内に終えるために工程を管理することです。
工程管理においては、作業計画に沿って工事に必要な人員を確保することや、機械を適切な配分を保って手配することも求められます。
工事計画にイレギュラーが発生した場合は状況に応じて調整することが必要です。
②品質管理
品質管理とは、工事に用いている材料の確認、工事が設計通り行われているか、品質や規定がお客様に求められているものを築けているかなど現場の質を確かめることです。
予算内に収めるために低コストで材料を揃えて、仕上げたとしてもクオリティの低下を招いてしまう恐れがあります。そのため資材の質やコストを適切なバランスに取ることが求められます。
③原価管理
原価管理とは予算内に収まるように、材料コストや人件費を考慮し調整することです。
人件費の管理については、工事の規模と必要な技術者のバランスを保つことが求められます。適切に人員を確保することで費用を最低限に抑えることができます。
ハウスメーカーの施工管理者は、品質を保持しながらも予算内にコストを抑えることで、お客様の要望を満たす住居を提供しています。
④安全管理
施工現場では、高い位置での作業を求められることがあります。高所から技術者がらっかしたり、資材や工具が高所から落下してしまうと下にいる人々に被害を与えてしまう恐れがあります。
また、気象条件や気温などの自然的な要因も作業員の安全に影響を与えるため、施工管理技士はリスクを管理することで事故の予防に貢献します。
ハウスメーカーの施工管理の問題点
ハウスメーカーにおける施工管理は、一見すると住居に特化した現場に従事していること、規模が比較的小さいことからメリットが多いと思う方もいるかもしれません。
しかしハウスメーカーの施工管理の仕事には過酷な側面もあります。
ここでは、ハウスメーカーの施工管理におけるネガティブな要素について紹介していきます。
苦情が施工管理技士に届くことがある
ハウスメーカーの施工管理技士には顧客の細やかな要求に答える役割があります。お客様との距離が比較的近く、不満や苦情の声を直接受けることがあります。
家を建てるということは、お客様にとって特別なイベントで人生の中でも大きなお買い物になります。その分ハウスメーカーの責任は大きく、お客様の苦情や要望に対して細やかな対応を取る必要があります。
手戻りを防ぐために、施工管理技士はお客様からの情報を現場に迅速かつ丁寧に共有することが重要です。適時にフィードバックを行い、お客様が抱える懸念や疑問を解消することが大切です。
顧客満足度の向上を目指し、質の高いサービス提供を心掛け、クオリティの向上を目指すためには施工管理の存在が重要です。
一人当たりの担当する現場が多い
ハウスメーカーに従事する施工管理技士は、一人当たりが担当する現場が多くなりがちです。
理由としてはダムや道路など規模の大きい工事を担うゼネコンとは違って、ハウスメーカーが取り扱う現場は規模が比較的小さいプロジェクトが多く、一人当たりが受け持つ現場数が多くなるからです。
そのため施工管理者は、異なる現場でそれぞれの注意事項や顧客の要望を正確に工事に反映させていくことが大切になります。
施工管理を担当する人は、それぞれの現場を把握し、ニーズを理解し、管理しなければならないという責務があります。
現場が多く細部に至るまでの管理が難しい場合、クオリティを維持することが困難になる可能性があります。
現場での密なコミュニケーションが取りづらい
ハウスメーカーの施工管理の立場から見ると、現場での密なコミュニケーションが取りづらいという課題があります。
理由としては、一人の施工管理者が多くの現場を担当しているため、技術者や職人さんと長期的に関係を築くために交流する時間が十分に取れないとされているからです。
ハウスメーカーとして働くメリット
ハウスメーカーの施工管理として働くことで、家づくりを通して多くの家庭の暮らしを支え、人々の幸福に直接貢献する喜びを感じることができます。
ハウスメーカーの施工管理職は、施工管理技術士2級の資格を持っているだけでも、この分野において充分に活躍できるというのも魅力の一つです。
ここでは、ハウスメーカーの施工管理に就くメリットについて紹介します。
家づくりを通して人の暮らしに貢献できる
ハウスメーカー施工管理職は、家づくりの中心的役割を担い、施主や依頼者との距離が近いというメリットがあります。依頼者と直接コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めることで、依頼者の理想とする家を形にしていく過程は、仕事の大きな魅力と言えます。
ハウスメーカーの管理職として、自身が手掛けた家で新たな生活が始まる瞬間は、大きなやりがいや職務の達成感を感じられます。
ハウスメーカー施工管理職においては、施主や依頼者との関係性を深く築くことが重要です。その結果、住居づくりのプロセスがスムーズに進むだけでなく、長期的な信頼関係も構築できます。
施工管理技士2級でも充分従事できる
住居建設に特化しているハウスメーカー施工管理の職場では、施工管理技士2級でも充分従事できるといわれています。
施工管理技士2級は、請負い総額が4500万円未満の工事、つまり一戸建て住宅などで主任技術者として従事できます。そのためハウスメーカーにて施工管理職をする方は2級で十分活躍できます。
施工管理技士2級は、初心者でも取得が可能であるとされており、キャリアの土台作りに最適な資格と言えます。
施工管理として働く際には資格の取得が必須ではありませんが、技術力を証明する手段として施工管理技士2級の資格取得をおすすめします。
資格を持つことで、ハウスメーカー施工管理の仕事をスムーズかつ効率的に行うことが可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
ハウスメーカーの年収
大手ハウスメーカーの年収相場について紹介します。
20代では、500万円後半~600万円前半ほどの範囲であるといわれています。
30代~40代では多い人で年収が1000万円に到達する方もいるとされています。
日本の平均年収は443万円であるため、大手ハウスメーカーの年収水準は高いといえるでしょう。
参照:国税局「令和3年分 民間給与実態統計調査」
年収が高水準であることに加えて、大手ハウスメーカーは、充実した研修体制・福利厚生が備わっているため長く働きやすい企業であるといえます。
特に大和ハウス工業株式会社においては「持家割引制度」を設けており、以下のように定められています。
当社の住宅、土地を自らが居住することを目的として社員や親族が購入する際の割引制度。本人が購入する場合、10%割り引いた価格で購入することができます。また、親族が購入する場合も、6~8%割り引いて購入することができます。 |
参照:大和ハウス工業「福利厚生&キャリアパス 住まいに関する制度」
土地付きの注文住宅の場合、首都圏のマイホームの平均は5000万円を超えるとされています。この場合であれば割引は500万円にも上ります。
ハウスメーカーの施工管理に向いている人
ハウスメーカーの施工管理という重要な役割に焦点を当て、どのようなスキルや資質を持つ人々が向いているのか紹介していきます。
施工管理者は単なる管理者ではなく、現場のリーダーとしても機能しなければならない存在です。
ここでは、施工管理の業務に向いている人の特徴について紹介していきます。
コミュニケーション能力がある人
ハウスメーカーの施工管理者として求められる重要な能力の一つは、コミュニケーション能力です。施工管理者はお客様と技術者の間の立場を取ることから、双方の意見や要望を引き出す役割があります。
コミュニケーション能力が高い施工管理者は、お客様の理想を形にするための重要なパートナーとなります。お客様の要望や期待を具現化するためには、技術者との円滑な協力が不可欠です。
ハウスメーカーの施工管理を担当する者は、技術者からの専門的な意見を理解し、お客様に適切に説明する力も持っていることが求められます。この能力は、お客様からの信頼を得て、高い満足度を得るためにも重要です。
施工管理者のコミュニケーション能力によって、良好な関係を築くことできます。そしてプロジェクトは円滑に進み、お客様の満足度も高まることが期待できます。
誰に対しても自分の意見を言える人
施工管理において意見が言える人は、ハウスメーカーの施工管理にとって貴重な存在です。現場では技術者の高齢化が進行しており、若手が不足しています。
現場に幅広い年代の技術者がいる中で、質の高い施工管理を目指すには、意見交換が重要となります。特に若手が年配の技術者に対して、自身の意見を物怖じせずに積極的に伝える能力は必要不可欠であり、そのような人材を企業も求めています。
それぞれの技術者が持つ知見や経験を生かした建築を追求する必要があります。そのため意見を交換することで技術者間の信頼関係を築き、更なる品質向上につなげられるのです。
ハウスメーカーの施工管理はチームでの仕事であるため、年代を超えた意見交換が活発に行われることで、工事現場全体がスムーズに進行します。
まとめ
ハウスメーカー施工管理の仕事は、一般的な施工管理の職務と大きな違いがないため、既に施工管理者として従事している方がハウスメーカーに転職した場合でも、スムーズに業務に取り掛かることができます。
ハウスメーカー施工管理職は、お客様との距離が近いため、やりがいや達成感を得やすいといわれています。顧客と直接関わることで、お客様の夢を形にする喜びを経験できます。
しかし、距離が近い分クレームが増える可能性があり、お客様に満足してもらうためには徹底した管理に努める必要があります。
キャリアを考える上で、ゼネコンとハウスメーカーの違いを理解することが大切です。
ハウスメーカーの管理は住居に特化している一方、ゼネコンは幅広い建築プロジェクトを手掛けるため、扱うプロジェクトの幅や、個人または法人向けなのかのようにお客様の層が異なります。
それぞれの特性を理解し、自身のキャリアパスに最適な選択を行うことが大切です。