電気工事士第二種とは、経済産業省が定める国家資格の1つです。
小規模店舗・工場など600v以下で受電する工事は、電気工事士法施行規則によって、電気工事士のみ行うことができると定められています。
そのため電気工事士の資格は、資格を保有している人のみが業務を行える「業務独占資格」といわれています。
電気工事士第二種を取得し経験を積むことで電気のプロフェッショナルとして自身の市場価値向上が見込めることや、資格を保有することで就職や転職の際にも価値の担保に繋がります。
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが加速したようにインターネットの普及、都市開発、商業施設の増加が進む中で電気工事士の需要が高まりつつあるとされています。
そこで本記事では、電気工事士の業務内容や電気工事士として活動するための試験や合格率について紹介していきます。
電気工事士第二種とは
電気工事士は第一種と第二種で分かれており、それぞれ作業範囲は異なっています。
国家資格でありながらも合格率は5割~7割であり、他の国家資格と比較しても合格率が高いため何かしら資格を取りたいと考えている人にはおすすめの資格です。
電気工事士第二種について
電気工事士第二種とは、経済産業省が定める国家資格の1つで、電気工事士第二種の保有者は600v以下で受電する一般用電気工作物の工事作業を行えます。
電気工事法第1条では、 「この法律は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。」と示されています。
電気工事には火災や事故の発生などの危険性があり、作業員や資格に関して厳格に法律で定められているため、電気工事を行う際には資格試験に合格した電気工事士が必要とされています。
業務内容
電気工事士第二種の仕事内容は「建築電気工事」「鉄道電気工事」の2つに分けることができると一般的にいわれています。
建築電気工事は、建物内における照明やエアコンなど電気を使用する機器などに電気配線を接続する工事を行います。
他にもブレーカー、分電盤など電気設備の点検・修理も電気工事士のみ行うことができます。
コンセントやスイッチの取り付けも電気工事士が行うため、小規模施設や事業所での作業に加え、一般住宅におけるリフォーム事業にも携わることができます。
鉄道関連の電気工事では、発電所から送電された電気を電車に送るために用いる変電設備の点検を行い、鉄道が事故なく安全に運行ができるように整備する役割を担っています。
他にも駅構内に設置されている電光掲示板、改札、空調、照明などの点検も電気工事士が行います。
電気工事士第二種の試験
電気工事士第二種の試験内容は学科試験と技能試験の2つの項目によって構成になっています。
電気工事士第二種は、学歴、年齢、性別を問わず誰でも受験することができる試験で、文系や理系問わず、着実に勉強を重ねることで合格へ近づけます。
ここでは試験内容や勉強のポイントなどを紹介していきます。
電気工事士第二種の筆記試験方式
電気工事士二種の筆記試験では四肢択一の問題形式が取られており、問題数は50問で各2点、60点以上で合格することができます。
電気工事士第二種の試験内容
- 電気に関する基礎理論
- 配電理論及び配線設計
- 電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具
- 電気工事の施工方法
- 一般用電気工作物等の検査方法
- 配線図
- 一般用電気工作物等の保安に関する法令
電気に関する基礎理論は電流や電圧、電気抵抗に関する計算問題が中心に出題されます。
例えば、電気工事士第二種の試験ではこのような試験が出題されました。
電気抵抗が並列に繋がれている場合、合成抵抗はそれぞれの電気抵抗の逆数の合計の逆数となるため、この場合、右上のの3Ωの電気抵抗が2個並列に接続された部分の合成抵抗は1.5Ωとなります。
一方、電気抵抗が直列に繋がれている場合、合成抵抗はそれぞれの抵抗の合計になるので6.0Ωです。
今回の例題で問われているa-b間の合成抵抗は1.5Ωと6.0Ωの抵抗を並列に接続した場合の合成抵抗なので、答えは1.2Ωです。
基礎的な計算問題を中心に出題されるため、公式を覚え実際に使えるようしておくことがポイントです。
試験内容 | 詳細 |
電気に関する基礎理論 | 計算問題であるため、公式を覚えて実際に使えるようにすることがポイントであるとされています。 |
配電理論及び配線設計 | 計算問題と暗記で解答できる問題が出題されるといわれています。電気配線の理論、設計の問題も出題されるといわれています。 |
電気機器・配線器具ならびに電気工事用の材料及び工具 | 資材や工具の扱い方を学ぶことがポイントです。 |
電気工事の施工方法 | 工事場所の制限や、工事に関しての安全確保や事故防止について学ぶことが求められます。 |
一般用電気工作物等の検査方法 | 工事現場にて法令に反していないか、安全基準が満たされているかを確認するための点検や測定に関する問題が問われます。 |
配線図 | 配線図に書かれている図記号や使用方法を解答し、写真と組み合わせる問題が出題されるといわれています。 応用問題として複線図を配線図から描く問題も出題されます。 |
一般用電気工作物用の保安に関する法令 | 電気工事士を取得した者が可能とされる工事内容や保安に関連する法令が出題されます。 |
出題内容を踏まえると、暗記することで正答できる問題が多く出題されるため覚えるべき内容はしっかり抑えることが大切であると言えます。
電気工事士第二種の試験内容は電気に関する基礎的な内容から実践に近い内容、法律に関してなど幅広い知識が求められているため包括的に学習する必要があります。
電気工事士第二種の技能試験
電気工事士第二種の第一次学科試験に合格すると、技能試験に進みます。
技能試験では作業用工具を使用した試験内容も問われ、受検者自身が作業用工具を持参する必要があります。
技能試験では、配線図で与えられた問題を支給される材料で時間内で完成させるといった内容になっています。
筆記試験合格後は、2回まで技能試験を受けることが出来ます。
電気工事士第二種の試験日程
電気工事士第二種の試験は上期と下期に分かれており、年に2回実施されています。
電気工事士第二種の学科試験は従来の筆記方式に加えて、現在ではパソコンやスマートフォンを用いて行うCBT方式も導入されています。
CBT方式は、会場申込期間中であれば予約の取り消しに加え、筆記方式に変更することが可能で、試験日の3日前までは試験会場と試験日時の変更ができます。
CBT方式は会社や学校など受験者の都合に合わせて柔軟な試験日程を組めるため、試験機会を確保しやすいというメリットが挙げられます。
電気工事士第二種:上期試験
上期試験の受検申込期間は例年3月中旬〜4月上旬頃で、学科試験は5月下旬ごろに行われることが多いです。
二段階にあたる技能試験は、7月中旬に行われることが多いです。
電気工事士第二種:下期試験
下期受検の申込期間は、8月中旬〜9月上旬頃で学科試験は10月下旬ごろに行われることが多いです。
技能試験は12月下旬に行われるとされています。
電気工事士第二種申し込み方法
電気工事士第二種は、2種類の申し込み方法があります。
それぞれ申し込みの手順や料金が異なるため、しっかりと確認しましょう。
電気工事士第二種 郵送での申し込み方法
①電気工事士第二種の受験案内を入手します。
送料分の金額の250円切手を貼った返送用封筒に返送先の郵便番号、住所、氏名、電話番号を朱書きします。
「第二種電気工事士上期試験受験案内 請求」と書き、試験センター本部事務局へ郵送することで案内を入手できます。
(住所〒104-0032 東京都中央区八丁堀2丁目9−1 RBM東八重洲ビル 8F)
②受験案内に同封された「受験申込書」及び「払込取扱票」に必要事項を記入します。
受験案内に同封されあt受験申込書及び、払込取扱票の必要事項を記入する際には、顔写真が必要になります。
③ 必要事項を記入した払込取扱票を郵便局の窓口へ提出し、受験手数料の9600円を納付します。
④ 受験申込書を郵便局より、投函します。
電気工事士第二種 インターネット上での申し込み方法
①一般社団法人電気技術者試験センターのホームページへアクセスします。
②「インターネット受験申込み」からマイページ登録をし、試験を申し込みます。
申し込みの際に顔写真のアップロードが必要になるので、事前に写真をとっておくとスムーズに申し込みを行えます。
③受験料 9,300円をコンビニやクレジットカード決済、銀行振込などで支払いを完了させます。
郵送とインターネットの申し込み方法がありますが、郵送だと案内を取り寄せる際に時間を要してしまうため簡単に申し込めるインターネット申込がおすすめです。
電気工事士第二種の合格率
電気工事士第二種の合格率を、学科試験と実技試験に分けて紹介します。
電気工事士第二種の学科試験
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成30年度 | 123,279人 | 63,821人 | 55.4% |
令和元年 | 122,226人 | 80,625人 | 65.9% |
令和2年 | 104,883人 | 65,114人 | 62.1% |
電気工事士第二種の実技試験
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
平成30年度 | 95,398人 | 55,986人 | 67.5% |
令和元年 | 100,379人 | 64,377人 | 65.3% |
令和2年 | 72,997人 | 65,520人 | 72.4% |
電気系の最難関資格であるといわれている「電気主任技術者」の合格率は10%に届いていないことを考慮すると、電気工事士第二種は比較的合格率が高い資格のカテゴリーに含まれるでしょう。
電気工事士第二種を取得するには
電気工事士第二種を取得するためには、正しい勉強計画を立てることが重要であるとされています。
社会人など、忙しい方に向けた勉強計画も紹介していきます。
電気工事士第二種を取得するために必要な勉強時間
学科試験と実技試験合わせて平均約150時間といわれています。
学習に150時間かけるとすると1日1時間確保できれば、週5回の勉強頻度だと半年前後で合格できる計算になります。
1時間の勉強であれば通勤時間や就寝前の時間を活用するなど社会人の方でも働きながら勉強に取り組みやすいです。
必要な勉強時間は約150時間と目安を提示していますが、試験には計算問題も出題されるため数学が得意な方や電気に関する知識を既に持っている方は少ない勉強時間で合格が可能であるといわれています。
例外として、学校教育法による高等学校以上の学校において、電気工事士法で定める電気工学の課程を修めて卒業した方は第二種電気工事士試験の学科試験が免除対象となります。
独学でできる?
独学で勉強することはコストが抑えられることや、講義時間に縛られずに勉強できるというメリットがあります。
学習プランを正しく立て、テキスト、問題集、過去問を組み合わせて学習することで独学での合格を狙うこともできます。
独学で資格取得を目指される方は、自分に合ったテキストを用いることが合格への近道であるとされています。
電気工事士第二種取得のポイント
電気工事士第二種の試験内容や合格基準点に関する情報を交えながら、効率よく学習を進めるためのポイントを3つに分けて紹介します。
1.暗記問題を落とさないために徹底的に暗記する
電気工事士第二種の試験は合格ラインが60点以上と定められています。
第二種電気工事士の試験では暗記することで正解できる問題が多くあるとされており、暗記で正解できる問題の内訳は次のようになっております。
・配線図記号 20点
・器具、材料、工具 26点
合計で46点取れるため、暗記問題だけで合格基準の7割以上を獲得することができます。
暗記の勉強を徹底することで学科試験合格に着実に近づくといわれています。
2.試験勉強に優先順位をつけて効率的に学習を進める
合格基準の60点を超えるために、配点の高い問題や基礎的な問題を確実に正解することが求められると一般的にいわれています。
「電気工具などの暗記問題」「計算問題」「電気工事の知識」の3つが優先されるべき問題内容であるといわれています。資格勉強を始めたばかりの方はまず3つから進めることがおすすめです。
3.過去問を繰り返し解く
過去問を繰り返し解き、計算問題のパターンや問題の傾向を掴みましょう。
試験時間は120分と決められているため、ペース配分を的確に行い時間内に解き終わるように繰り返し練習することも大切です。
電気工事士の平均年収
電気工事士の平均年収は506.8万円であると厚生労働省が示しています。
国民の平均年収は461万円であると国税庁が発表しているため、電気工事士は平均よりも高い水準に位置しているといわれています。
電気工事士の年齢別平均年収
電気工事士の年齢平均年収を紹介します。
年齢(歳) | ~19 | 20~24 | 25~29 | 30~34 | 35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~64 | 65~69 |
年収(万円) | 268.2 | 367.6 | 457.25 | 502.17 | 531.42 | 564.05 | 613.9 | 645.43 | 590.5 | 454.83 | 385.11 |
電気工事士第二種を取得するメリット
電気工事士第二種は取得することで具体的にどのようなメリットがあるのか、電気工事士のキャリアや将来性についても説明していきます。
転職や就職の武器になる
電気工事士なしで電気工事を行ってしまうと、電気工事士法第3条に従い罰則が適用されてしまうというケースがあり、資格保有者は貴重な人材となります。
電気がインフラとして我々の生活を支えている以上、電気工事士の仕事は常に求められるとされています。使用されていく中で、設備は日々老朽化が進んでいくため点検や修繕業務も電気工事士が継続して担っていかなければなりません。
厚生労働省が令和4年に発表した全国の電気工事士の有効求人倍率は4.12倍となっており、人手不足が深刻な状況が示されています。
経済産業省が平成30年度に示した、「電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について」
では電気工事士の高齢者数・入職者数の減少等により第二種電気工事士が2045年に想定需要約8.6万人に対して3,000人程度不足するという見解が示されています。
今後電気工事士の人手不足が見込まれているということから、早い段階で資格を取得し、多くの経験を積むことで将来的に貴重な人材として重宝され、活躍できるとされています。
将来の安定が見込める
電気工事士第二種のメリットに一度保有すると更新が不要なことが挙げられます。
「手に職をつける」という言葉があるように失業リスクを抑え、生涯強みとして生かし続けることができます。
電気工事士は工場や様々な施設における設備工事関連の仕事、インターネットの回線工事のお仕事など、電気工事士の活躍の場は幅広く、安定して仕事を持ち続けることが出来ます。
IT技術の発展によって、電気工事士の需要は高まり続けるといわれています。
現在では業界を問わず、あらゆる業種の企業にてDX化が進んでおり、IT技術を用いて業務が効率化されていることに伴い、電気工事士の果たす役割は多くなるでしょう。
AIに職を奪われる可能性が低い
近年のインターネット技術の向上に伴い、AI(人工知能)によって職が奪われるのでは?と話題になっています。
AIに職を奪われる理由には「処理の正確さ」や「効率の良さ」が人間の力よりも上回ったことがほとんどであるとされています。
電気工事士がAIに職を奪われる可能性が低い理由:
電気工事士は天候、資材の調達状況、クライアントの要望の変化などあらゆる変化と隣合わせで業務にあたっており、スキルや状況に応じた柔軟な対応力が求められるとされています。
臨機応変な対応を求められる職業である点を踏まえると、AIに職を奪われる可能性は低いと一般的にいわれています。
電気工事士第一種・第二種の違い
電気工事士の資格には第一種・二種があります。
第一種・二種どちらの方が難易度が高いのかは、結論から言うと第一種の方が難易度が高い試験です。
それぞれどのような違いがあるのかについて2点に分けて紹介します。
作業範囲の違い
電気工事士第一種では自家用電気工作物(600ボルト以上かつ最大電力500kW未満)が作業可能です。
一方、電気工事士第二種では、一般住宅や小規模な店舗、事業所など、電力会社から600ボルト以下で受電する一般用電気工作物などの電気工事の業務を行うことができます。
自家用電気工作物は工場・ビル等の発電所、変電所、送配電設備、600Vを超えて受電する需要設備のことを指します。
資格の有効期限の違い
電気工事士第二種は有効期限がないのに対し、第一種は5年ごとの更新手続きと、経済産業省が指定する指定講習機関にて講習を受ける必要があります。
電気工事士第一種では工場や発電所など規模の大きい仕事を任されるため、作業範囲が広がります。
作業範囲が広がることで経験を電気工事士第二種よりも多く積むことができ、収入が多くなる場合があるとされています。
手当に関しては、電気工事士第一種と第二種では2倍近く差があるといわれています。
電気工事士を含む技術関連の職は実務経験がキャリアアップに求められるとされています。
電気のプロフェッショナルとして高みを目指し収入を多く得るためには電気工事士第一種の資格を取ることが今後求められるでしょう。
電気工事士に向いている人
電気工事士は危険が伴うことから、細心の注意を払いながら作業を行わなければならない仕事であるといわれています。
ここではどんな人が電気工事士の仕事に向いているのか、特徴を挙げていきます。
几帳面な人
電気工事にまつわる作業は、細かく正確さが求められる場面が多くあります。
作業が正確に図面通り行えていなければ、漏電によって火災や感電が発生し人の命にかかわる事故が発生してしまう恐れがあるため、几帳面な方が向いているといえます。
細部への配慮は、機器の性能を最大限に引き出し、電気設備の寿命を延ばすことで電気工事士の評価が向上し、長期的な視点での利益をもたらすことでしょう。
地道に学ぶ姿勢を持てる人
電気工事士は現場によって柔軟な対応を求められる事に加え、正確性を要することから、日々知識を身に着ける努力が必要であるとされています。
電気工事は非常に専門的な技術を要求される仕事であり、安全対策が重要です。
常に学び続けることで、最新の安全基準や手法を習得し、事故を防止することに繋がるともいわれています。
コミュニケーションを取ることができる人
電気工事士はチームで1つの業務にあたることもあり、作業員の安全確保や業務効率化のためにもコミュニケーションを取り連携を図る必要があります。
チームメイトの間で認識を共有、役割分担、協同作業を促すことが出来れば効率的に作業を進めることと質の高い成果を挙げることが可能になるとされています。
まとめ
本記事では、電気工事士第二種に焦点を当てて、試験の難易度やメリットなどを紹介してきました。
電気工事士二種の合格率は5割〜7割台と他の電気関連の資格に比べて取得しやすい国家資格であるといわれています。
電気工事士第二種は一度取得すると生涯有効であり、就職や転職・独立の際にも役立ちます。
電気工事士は生活のインフラを支えているという実感ややりがいを感じる職業でもあります。
手に職をつけ手堅くキャリアを構築したいと考えている方は電気工事士第二種を取得することをおすすめします。