以前まで、建築業界や電気工事士業界は「職人気質な男性の社会」というイメージを持たれてきましたが、今日ではその印象は変わりつつあります。
昨今、多様性が叫ばれる中で、多様な働き方ができる企業が増えています。これは、電気工事業界でも同様で、女性電気工事士が増えています。
女性電気工事士が急増中のワケ
人手不足だから
電気工事業界において、特に注目すべきなのは、「電気保安人材の減少」の課題です。
電気保安人材には、電気工事士や電気主任技術者が含ます。
これらの資格を持つ人材が不足しており、今後も人手不足が進むと考えられています。
人手不足の観点から、人材採用にも、多様性が求められるようになりました。
求人情報においても、無資格未経験者でも応募できる案件が増加しており、女性の参入を促進しています。
この事を背景に、かつて男性中心であった電気工事士の世界では、近年は女性の力を求める傾向が拡大しています。
性別関係なく職業の選択肢の多様化が進んでいるから
近年では、性別に関係なく、さまざまな職業選択ができるようになったことで、昔に比べて、偏見が少なくなってきました。
この社会の変化が、電気工事士業界にも影響しています。
かつては、「看護師、保育士、介護士」などの仕事は、女性が従事するという固定概念が世の中の風潮的にあったはずです。
そのような職業においても、今では男女の垣根はほとんどなくなりました。
同様に、男性が従事することが一般的だった職場でも、女性が活躍する姿が増えています。
このように、昨今の風潮として、性別に関係なく職業の選択肢が広がっていることが、電気工事業界における女性電気工事士の増加にも繋がっているのです。
ミドル世代の雇用が増えている
実は、電気工事業界では、40代、50代からでも未経験から活躍できることがあります。
電気工事士が人手不足しているという理由から、他業種からの人材流入を積極的に行っています。
そのため、ミドル世代でも、経験の有無を問わず無資格でも、求人は多くあります。
若ければ転職は十分に可能ですが、ミドル世代の方たちには、未経験からチャレンジできる機械はそう多くないでしょう。
このような理由から、子育てが落ち着いたママさんなどに注目されています。
しかし、問題として、一人前になるまで時間がかかるという点は考慮すべきです。
一般的に、未経験から始めた電気工事士は、現場の責任者として任されるようになるまで10年は必要と言われています。
そのため、定年のタイミングを考えた上で、一人前の電気工事士として活躍することができるか、また補佐としての活躍をラストキャリアにするのか、ご自身の将来像やキャリアに合わせて転職を考えましょう。
女性電気工事士の割合はどれくらい?
女性電気工事士の割合は低く、全体の電気工事士の2%程と言われています。
まだまだ、女性の割合は少ないですが、今後、女性電気工事士は増加すると考えられます。
2023年6月に開かれた、男女共同参画会議では、「大企業において、女性役員の比率を2030年までに30%以上を目標とする」と決定されました。
女性が社会で活躍できる環境整備が進められることで、今後ますます女性がキャリアを積みやすくなるでしょう。
この会議で対象となった企業は、東証プライム上場企業ですので、電気工事業界に直接関係のある話ではありません。
しかし、この会議で目指している「女性の活躍が期待される社会」において、女性電気工事士の地位向上や、女性が働きやすい環境整備と取り組みが、女性電気工事士増加のきっかけになるでしょう。
参考:朝日新聞「女性役員の比率目標「30年までに3割」 政府案、プライム企業対象」
年収
電気工事士の平均年収は、厚生労働省の調査によると、約462万円です。
日本人の平均年収は443万円ですから、電気工事士の年収は平均よりやや高いと言えます。
ここからさらなる年収アップを目指す方は、資格試験にチャレンジしてみるといいかもしれません。
試験に合格すると、企業によって金額のばらつきはありますが、資格手当を貰えることが多くあります。
また、受け持つ仕事の範囲が広がるので、それに伴って作業報酬がもらえることで、キャリアアップが可能です。
また、高収入の企業に転職することも年収アップの方法として考えられます。
電気工事士の転職先は幅広く、業務内容によってさまざまな会社の中から選ぶことができます。
職業の選択肢が多くある電気工事士二人気な転職先を以下にまとめています。
電気工事会社
事業内容:電気工事会社は、建物や施設の電気設備や配線の設置、保守、修理などを担当します。
また、太陽光発電や電力供給に関連するプロジェクトにも携わることがあります。
平均年収:電気工事会社での電気工事士の平均年収は、多くの場合400万円を超えます。
年収は経験と能力によって年収変動しますが、この業界では比較的年収が高いと言えるでしょう。
ビルメンテナンス会社
事業内容: ビルメンテナンス会社は、主に建物や施設の維持管理業務を担当し、電気設備や配線の定期的な点検、保守、修理などのメンテナンスも担います。
また、同時に照明設備の管理や省エネルギー対策を行い、予算内に収めて運用することも仕事の一つです。
業界の平均年収: ビルメンテナンス会社における電気工事士の平均年収は、未経験の場合、約300万円代からスタートしますが、経験やスキルによって上がることが一般的です。
電気工事士としての専門性が求められ、建物や施設の電気設備を維持管理する役割において、高い需要があります。
これらの要因から、ビルメンテナンス会社への転職は、電気工事士にとって安定したキャリアと収入を追求する魅力的な選択肢の一つになるでしょう。
鉄道電気工事会社
事業内容: 鉄道電気工事会社は、主に鉄道電気設備の設置、保守を担当します。
具体的には、電車の駅や線路、列車自体の電気系統、信号設備、架線などの電気設備に関する作業を行います。
業界の平均年収: 鉄道電気工事会社における電気工事士の平均年収は、約350万円以上からスタートし、経験とスキルの向上に伴って年収の増加が見込めます。
鉄道インフラの必要性から、鉄道電気工事に携わる専門家は高く評価され、給与水準は高くなります。
施工管理会社
事業内容: 施工管理会社は、建設プロジェクトにおける施工工程の監督、管理、調整を行う企業です。
電気工事士が施工管理会社に転職する場合、プロジェクトにおける電気設備の計画、施工、品質管理、予算管理などを任されることが一般的です。
電気工事としての専門知識を活かして、プロジェクトをスムーズに進行し、安全かつ効率的な電気設備の完成を目指す役割です。
業界の平均年収: 施工管理会社での電気工事士の平均年収は、約450万円以上からスタートし、経験とプロジェクトの規模によって増加します。
施工管理士はプロジェクトの成功の鍵を握っており、高度な技術と指導力が求められるため、給与水準高くなっています。
電気工事士として施工管理会社で働くことで、プロジェクト全体をコントロールし、建設工程を円滑に進める重要な役割を果たせることから、高い達成感が得られるでしょう。
また、業界内で比較的高年収である点も魅力的です。
サービスエンジニア
事業内容: サービスエンジニアは、さまざまな産業分野で設備や機器の保守、修理、トラブル解決、および技術サポートを担っています。
電気工事士がサービスエンジニアに転職する場合、主に次のような業務を担当するでしょう。
- 機器の定期的な保守点検とメンテナンス
- 電気トラブルの解決
- 顧客に対する技術サポート
- 新しい機器の設置と整備
サービスエンジニアは、設備が適切に動作し続けるように運用する仕事であるため、高度な技術スキルが求められます。
業界の平均年収: サービスエンジニアの平均年収は、約400万円以上からスタートすることが一般的です。
以下は、それぞれの業界での仕事内容と平均年収をまとめた表です。
業界・会社 | 仕事内容 | 業界の平均年収 |
電気工事会社 | 電気設備や配線の設置、保守、修理。安全に運用するための管理を行う。 | 約400万円以上からスタート。経験に応じて増加。 |
ビルメンテナンス会社 | 建物や施設の電気設備の点検、保守、修理、照明設備の管理。省エネルギー対策も実施する。 | 約300万円以上からスタート。経験に応じて増加。 |
鉄道電気工事会社 | 鉄道システムの電気設備の設置、保守、改良。 | 約350万円以上からスタート。経験に応じて増加。 |
施工管理会社 | 建設工事の施工監督、予算管理、品質管理。電気設備の計画と施工を担当。 | 約450万円以上からスタート。プロジェクトにより異なる。 |
サービスエンジニア | 機械の問題解決、調整作業、修理、機器の設置と配線、接続。 | 約400万円以上からスタート。経験に応じて増加。 |
現場仕事で体力はもつ?
女性には、体力的に電気工事士としての仕事が務まるのでしょうか?
答えはイエスです。
電気工事士の仕事は、
- 工具・材料などを持っての移動
- 重いケーブルを扱う作業
- ムリな体勢や不安定な場所での作業
などがあり、力仕事がメインになります。
この仕事内容をキツいというのは、男女関係なく当てはまるでしょう。
そのため、自分だけが置いてけぼり、役に立たないかもしれないという心配は不要です。
また、工事で扱う設備や道具は充実しており、小さい力で切断できるパイプカッターなどもあります。
未経験でもできる?
電気工事未経験の方は、「電気工事って専門的な知識が必要でなんだかむずかしそう」といったイメージを持つかもしれません。
電気工事の世界に足を踏み入れてみたいけど不安という方には、職業訓練校に通うことをお勧めします。
職業訓練学校には、電気工事士を目指す方向けのためのコースがあり、多様なサポートを受けることができます。
そのため、未経験からでも電気工事は十分にチャレンジ可能と言えます。
学科、通学頻度について
職業訓練校の電気工事士コースの具体的な通学頻度やカリキュラムは、各校によって異なる可能性がありますが、以下は一般的な内容となります。
電気工事士コースの学科
基礎理論: 電気の基本原理、電気回路の基礎、直流・交流の違いなど、電気に関する基本的な知識を学ぶ。
電気設備: 家庭やビルなどの電気設備の構造や役割、設置方法などを学ぶ。
法律・規定: 電気工事に関連する法律や安全基準、業界の規定などを学ぶ。
実技指導: 実際の電気工事の手順や使用する道具の使い方など、実務に関連する技術を学ぶ。
通学頻度
フルタイムコース: 平日毎日通学し、一日の大部分を学習に費やす。短期間での資格取得を目指す方向け。
パートタイムコース: 週に数日、または週末のみの通学となる。仕事や他の活動と並行して学習を進めたい方向け。
夜間コース: 平日の夜や土日の夜に授業がある。昼間は仕事などで忙しいが、夜は時間が取れるという方向け。
多くの職業訓練校では、電気工事士コースを修了し、一定の実技試験や学科試験に合格すれば、国家試験を受験するための推薦を受けることができる場合があります。
しかし、詳しいカリキュラムや通学頻度、受講料などは、具体的な職業訓練校や地域によって異なるので、希望の学校の公式情報や資料を確認することをおすすめします。
職業訓練校に行くメリット
メリット①お金をもらいながら学べる
ハローワークには「求職支援制度」があり、雇用保険を受給できない方が、職業訓練によるスキルアップを通じて 早期就職を実現するために、国による支援を受けることができます。
この制度で支給される給付金の一つに、「職業訓練受講給付金」というものがあり、上限月10万円の支援を受けることが可能です。
この制度によって、学費や生活費の支援を受けられるため、生徒は学業に集中しスキルアップに努めることが可能となります。
しかしながら、この給付を受けるには以下の条件が必要です。
- 本人の月収が8万円以下(シフト制の場合は12万円以下)。
- 現住所以外に不動産を所有していない。
- 世帯全体の月収が25万円以下で、金融資産が300万円以下。
- 過去3年での不正給付の受給歴がない。
- 職業訓練への参加が8割以上。
- 同一世帯での給付は1人まで。
この制度を使える方は限られてきますが、使える方には、ぜひ使っていただきたいありがたい制度です。
メリット②就職先を紹介してもらえる
職業訓練学校は、スキル習得の場としての位置付けだけでなく、将来の就職活動のサポートという大事な役割を担っています。
ハローワークから専門的な求人情報の提供をしてもらえることは大きなメリットになるでしょう。
一部の学校では、訓練を受けている学生を対象とした独自の求人が存在することもあります。
さらに、企業からのリクルーターや人事担当者が学校に訪れ、就職説明会を開催する場合も多くあります。
このような恵まれた環境で、学生は実際の業界の動向や企業の求める人材について深く理解する後押しをしてもらいながら、就職のチャンスを得ることができます。
メリット③就職対策を受けられる
職業訓練校は、就職のための適切な就職対策を講じています。
具体的には、履歴書や面接の準備、職業適性テスト、求人情報の提供、実習プログラムの開催などがが含まれます。
就職活動の専門知識を持ったプロたちが、自身に合ったやり方でじっくり対策をしてくれます。
職業訓練学校では、生徒が将来的に目指す職業に対する就職サポートを積極的に行っています。
具体的には、履歴書の作成指導から面接対策、職業適性の判定テスト、そして最新の求人情報の紹介まで、幅広いサポートがを受けることができます。
さらに、多くの訓練学校では実際の業界経験を積むための実習プログラムも組み込まれており、学んだ知識を即座に実践できる機会を得る機会も多くあります。
まとめ
この記事では、女性電気工事士が増えている理由について様々な角度から解説しました。
体力がないといった女性ならではの悩みを持っていても、仕事に活かせるスキルを持っていれば、採用される確率はぐんと上がるでしょう。
女性電気工事士としてのキャリア育成は、なじみのない話かもしれませんが、女性の活躍がますます期待されるこの社会で、性別関係なく勇躍できる新たな選択肢の一つになることでしょう。
新たなキャリアを考えるきっかけとして、この記事が役に立てば幸いです。