建設業界は住宅やビルなどの建物、道路・水道・ダム・鉄道などの社会インフラを建設することで社会を支えている業界です。
建設業界では多くの企業・技術者が一丸となってチームで建造物の工事を行い、完成を目指します。
設計から施工、完成に至るまで、担当する工程によって求められる技術や知識が異なるため専門性が高く、建造物の水準を一定に保つため、国家資格の取得が義務付けられている職種も多いです。
企業も業務に関係する資格を取得している人材を求める場合が多く、資格取得で求職活動を有利に進めやすくなったり、キャリアアップに繋がったりといったメリットが期待できます。
今回は建設業界で資格取得を目指される方のために、建設系の代表的な資格について解説します。
建設系の資格一覧
建設業界で通用する資格を取得したいとお考えの方は、自分に向いている資格を知るためにも、具体的にどのような資格があるのか知っておく必要があります。
本項では建設業界で特に代表的な資格についてご紹介しますので、資格取得の参考にしていただければ幸いです。
建築士:建築物の設計・工事監理
建築士は建築物の設計と工事監理の業務を行う職種で、建築士として働くためには同名の国家資格の取得が必要です。
建築士資格は、一級と二級に分類されており、担当できる業務の範囲に差があります。
一級建築士は規模や種類によって設計・工事監理できる建物が限定されることなく、全ての建築物を担当できます。
一方、二級建築士は設計・工事監理できる建物が全高・軒高・延面積などで制限されており、携われるのは主に戸建住宅となります。
建築士は難関資格として知られており、試験の合格率は一級建築士が約10%、二級建築士が約25%で、1,000〜1,500時間程度の勉強時間が必要とされています。
建築士の資格取得を目指される場合は、働きながら数年間単位で地道に勉強を続けていく必要があるでしょう。
建築士は建物の設計から担当するため、建物をつくるのに必要不可欠な職種のため、資格を取得することで将来も安定して働くことができます。
建築施工管理技士:建築における監理業務
建築施工管理技士は建設現場の施工管理を担当する職種の方向けの国家資格です。
建設業は施工管理職の方が施工計画を策定し、それに基づいて工事の工程管理、工事内容の品質管理、現場の安全管理を行うことで、安全かつ高品質な工事を期限内に行えるよう現場を指揮します。
この資格を取得すると、専任技術者や現場で施工管理を行う監理技術者・主任技術者といった役職を担当できるようになります。
建設業界では、業種ごとに営業所の専任技術者を設置することが義務付けられています。
これは、建設業許可を受けるための要件とされており、専任技術者が居なければ建設業許可を得ることができないため大変重要な役職です。
専任技術者は建設業法に定められた要件を満たす必要があり、いくつかの定められた国家資格を取得することで、その分野における専任技術者として働けるようになります。
建築施工管理技士は一般建設業の専任技術者として働けるようになる資格のため、企業からも重視されている資格なのです。
また、建設現場では規模に応じて、監理技術者・主任技術者のいずれかを一名設置することが義務付けられており、建築施工管理技士資格を取得すればこれらの役職も担当できるようになります。
施工管理は工事を円滑に進めていくために重要な職種のため、建築施工管理技士の資格を取得できれば、専門知識のある施工管理職を求める企業からの評価も高くなるでしょう。
建築施工管理技士は1級と2級に区分されており、2級建築施工管理技士は主任技術者、1級建築施工管理技士は監理技術者としても働けるようになります。
建築施工管理技士は第一次検定(学科試験)と第二次検定(実地試験)を合格することで資格が取得できます。
合格率は1級の第一次検定が35〜40%、第二次検定が45〜50%程度で、合格までに必要な勉強時間は1級・2級それぞれ100〜400時間前後と考えられています。
前述した建築士と比較すると必要な勉強時間数も少なく、2級の第一次検定は受験資格も設定されていないため(第二次検定は実務経験が必要)、受験までのハードルが低い資格と言えるでしょう。
建築施工管理技士は主任技術者・管理技術者として働くために必要不可欠な資格のため、施工管理として建築現場で働きたい方におすすめの資格です。
測量士・測量士補:建築工事において欠かせない存在
測量士は建築物をつくるために必要となる測量という業務を担当する職種で、測量に従事するためには測量士・測量士補の国家資格が必要となります。
建設業界では土木測量という、建築物を施工するために必要となる面積などの測量データを取る作業を測量士が担当します。
測量士は建設現場での測量作業のほか、作業計画・測量計画の立案や、測量したデータの図面作成などのデスク作業も行います。
測量士補の資格試験はどなたでも受験可能で、測量士補の資格を取得後、規定の年数実務経験を積むことで、測量士を名乗れるようになります。
試験の合格率は測量士が10%前後、測量士補が30%前後となっており、測量士は特に難易度の高い資格です。
測量士合格までの勉強時間は300〜500時間程度、測量士補は約200時間前後と言われています。
上述のように測量士・測量士補は難易度が高い資格ですが、測量は測量士・測量士補のみが行える業務のため、企業からの需要が大変高い資格です。
加えて測量に携わる企業は、営業所ごとに必ず1名以上の測量士を置くことが測量法によって義務付けられています。
そのため、この資格を取得できれば測量士として企業に求められる人材としても活躍できるでしょう。
給水装置工事主任技術者:給水装置工事の指導を行う
給水装置工事主任技術者は給水装置の工事を行う方が取得すべき国家資格です。
この国家資格を取得することで、給水装置工事主任技術者として働くことが可能となります。
給水法により給水設備の設置・撤去などの工事は給水装置工事主任技術者がいなければ行えないこととなっています。
そのため、この資格を取得することで給水装置工事全般を取り扱えるようになるため、給水装置の関連企業ではキャリアアップにも繋がります。
給水装置工事主任技術者の試験合格率は例年30~45%前後で、合格率だけ見ると決して簡単な試験ではありません。
しかし、合格までに必要となる勉強時間は約30〜50時間程度と言われており、合格ラインまで知識を積み上げるのは難しくない資格です。
1〜2ヶ月程度集中して勉強時間を確保できれば、合格可能な資格と言えます。
ボイラー技士:建物内の空調や給湯器機を扱う
ボイラー技士は、温水や蒸気を作る装置であるボイラーの管理を行うために必要な国家資格です。
ボイラーは多くの建設物で空調や給湯器として使われています。
小規模ボイラーに関しては資格が必要ありません(代わりにボイラー取扱技能講習の修了が必要)が、伝熱面積が3㎡以上になるボイラーはこの国家資格が無ければ、工事や運用が行えません。
ボイラー技士資格は二級・一級・特級に区分されており、それぞれの資格で取扱作業主任者を担当できる範囲は以下の通りとなっております。
貫流ボイラー以外のボイラー | 貫流ボイラー | ボイラー技士の資格の種類 |
500㎡以上 | 特級ボイラー技士 | |
25㎡以上500㎡未満 | 250㎡以上 | 特級ボイラー技士 一級ボイラー技士 |
25㎡未満 | 250㎡未満 | 特級ボイラー技士 一級ボイラー技士 二級ボイラー技士 |
小規模ボイラー | 30㎡以下 | 特級ボイラー技士 一級ボイラー技士 二級ボイラー技士 ボイラー取扱技能講習修了者 |
そのため、ボイラーに従事するビルメンテナンス業やボイラーを設置する必要のある建設現場などではボイラー技士資格を所有する人材が求められます。
ボイラー技士の合格率は二級が例年50~60%前後、一級が50%前後、特級が25〜30%前後です。
ボイラー技士の合格までに必要な勉強時間は、初学者で二級受験の場合は100〜200時間程度、業務経験者などすでにボイラーの専門知識がある方が1級を受験する場合は50〜100時間程度と言われています。
二級ボイラー技士は、受験資格が設定されていないため、どなたでも試験を受けられます。
合格後の免許取得には実務経験か実技講習が必要となりますが、受験自体は業界未経験者でも可能のため、受験のハードルが低い資格の一つです。
ボイラー関連の業務に従事する企業に務めたいとお考えの方は、ボイラー技士の取得がおすすめです。
コンクリート技士・診断士:コンクリートを扱う
コンクリート技士・コンクリート診断士は公益社団法人日本コンクリート工学会が実施している民間資格です。
コンクリート技士はコンクリートの製造・施工などに従事する技術者向けの資格で、コンクリート診断士は建造物のコンクリートの劣化を診断したり、劣化したコンクリートを補修したりするために必要な資格です。
コンクリート技士の合格率は例年30%前後、コンクリート診断士は15%前後となっております。
合格までの勉強時間はコンクリート技士が100〜140時間程度、コンクリート診断士は200〜300時間程度必要とされています。
コンクリート診断士の方が合格率が低い上、勉強時間も倍程度必要なため、難易度の高い資格です。
さらに、コンクリート技士・コンクリート診断士ともに受験資格が設定されており、コンクリート関連の業務に規定年数以上従事するか定められた資格を所有していなければなりません。
そのため、受験までの前提条件が多く、業界未経験者の方は受験のハードルが高い資格だと言えます。
マンション・高層ビルを始めとした大規模な建造物にはコンクリートが使用されており、工事でも完成後でも定期的にコンクリート診断を行う必要があるため、コンクリート診断士は需要の高い資格の一つです。
技術士・技術士補:技術指導の業務を行う
技術士・技術士補は、その名の通り、様々な科学技術に関する専門知識を有する技術者であることを証明する資格です。
この資格は21の技術部門に分かれており、それぞれで技術士・技術士補資格が用意されています。
21の技術部門の中には「建設部門」があり、この試験に合格できれば建設業に必要なスキルを有する技術者であることを証明することが可能です。
技術士は第一次試験と第二次試験の2つに合格することで資格取得が行えますが、この内、第一次試験を合格した方は技術士補という資格を有することができます。
技術士の第一次試験は受験資格が設定されておらずどなたでも受験可能ですが、第二次試験受験には規定年数以上の実務経験が必要となります。
建設部門の技術士の合格率は第一次試験が30〜50%前後、第二次試験が10%前後です。
第二次試験は論文の筆記試験と口頭試験の2つが行われますが、この内、筆記試験の難易度が高いとされており、対策が必須となっております。
技術士合格に必要な勉強時間は第一次試験が200〜300時間前後、第二次試験が500〜800時間前後とされており、要求される時間数が多いため半年以上勉強を続けていくだけのモチベーションが必要となります。
技術士は専門分野におけるプロフェッショナルな技術者であることを証明できる上に、、企業が建設コンサルタントとして登録するために配置する必要のある技術管理者の役職も担当できるようになる資格です。
技術士資格は公共工事の入札時の経営事項審査項目でも評価対象となっており、企業からも評価されやすい資格です。
建設業界で働く時に役立つ資格
建設業界は専門分野に特化した技術職が多く存在しているため、その分だけ資格の数も多くなっています。
そのため、建設業界で働きたいとお考えの方の中には、どの資格を取得すれば実際に業務で役立つのか分からない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、本項では具体的にどの資格が建設業界で働くうえで役立ちやすいかを解説します。
今後のキャリアを考えて建設業界の資格取得を目指される方は、以下の情報をぜひ参考にしてください。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、建設現場の施工管理として働くうえで重要となる現場への理解度が試される資格のため、この資格を取得することで建設工事に従事する方全般にとって役立つ専門知識が身につきます。
この建築施工管理技士は、社内に建築施工管理技士が在籍していることで企業の公共工事の入札時の経営事項審査で加点がされるため、企業にとってもメリットの大きい資格です。
特に1級建築施工管理技士は、監理技術者を担当できる点から、高層ビルなど大規模な建築物を手掛けるゼネコンなどの大企業にも転職がしやすくなるでしょう。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は道路、河川、トンネル、ダムなどのインフラに関する工事の施工管理に従事する方向けの国家資格です。
前述した建築施工管理技士は、建物の工事現場で施工管理を行う際に必要となる資格ですが、土木施工管理技士は道路やダムなど、建物以外の工事現場で施工管理を行うための資格です。
施工管理として携わる工事によって必要とされる資格が異なるため、自分が活躍したい現場に応じてどちらの資格を取得するかを考えると良いでしょう。
土木施工管理技士は第一次検定と第二次検定を合格することで資格が取得できます。
合格率は1級の第一次検定が50〜60%前後、第二次検定が30〜35%前後、2級の第一次検定が60〜70%前後、第二次検定が35〜40%前後となっております。
必要な勉強時間は1級が500〜600時間程度、2級が300〜400時間程度とされており、1級は特に入念な試験勉強が必要となる資格です。
電気工事士
電気工事士は、電気設備や電気配線の取り付けを始めとした、電気設備関連の工事に従事するために必要な国家資格です。
電気設備は、電気工事士法により、電気工事の対象とならないような軽微な工事を除き、全て電気工事士などの関連資格が無ければ、工事を行ってはいけないこととなっております。
そのため、電気工事士は電気関連の工事に技術者として従事する場合には必須レベルの資格と言えます。
電気工事士は従事できる電気設備の規模に応じて第一種と第二種に分かれており、第二種は取り扱えるのは小規模な電気設備に限定されますが、第一種は制限なく電気設備の工事に従事できます。
電気工事士の合格率は第一種が40〜50%前後、第二種が60〜65%前後となっております。
必要な勉強時間は第一種が300時間〜400時間前後、第二種が200時間前後です。
電気設備は無資格者が取り扱うと感電や火災などの思わぬ事故が発生する可能性があり、大変危険です。
現代ではあらゆる場所で電気が使われていますが、そうした電気設備を安全な状態で運用・保守していくためには、電気工事士のような電気の専門家と呼べる存在が必要不可欠です。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は、配管工事の施工管理に従事する方向けの国家資格です。
管工事施工管理技士は、空調や冷暖房、ガスなどの、人々が生活するのに必要不可欠な配管設備の工事現場で施工管理として従事する方にぜひ取得していただきたい資格です。
この資格を取得することで、配管工事の施工管理に関する専門知識を有する人材であることを証明できます。
管工事施工管理技士の合格率は、1級が30〜50%程度、2級が50〜60%程度とされております。
合格までに必要な勉強時間は1級で150〜200時間前後、2級で100時間前後です。
エネルギー管理士
エネルギー管理士は、2006年の「エネルギーの使用の合理化などに関する法律{省エネ法)」によって新たに設置された、電力やエネルギーの省エネ化を目的とした国家資格です。
現在、年間3,000kl以上のエネルギーを使用する指定工場では、エネルギー管理士の選任が義務付けられています。
エネルギー管理士は工場のエネルギーを管理士て省エネ化することが主な業務です。
エネルギー管理士の合格率は例年25〜30%前後、合格までに必要な勉強時間は300〜600時間程度です。
エネルギー管理士を取得すれば、エネルギーに関する専門家として、企業からも重宝される存在になれるでしょう。
エネルギー管理士は受験資格が無いため、どなたでもすぐに受験が可能な資格です。
ただし、免状は熱・電気などの分野で1年以上の実務経験が必要となる点にご注意ください。
フォークリフト運転技能講習
フォークリフトは工場や倉庫などで荷物を運ぶための車両として有名ですが、最大荷重1t以上のフォークリフトは、労働安全衛生法によってフォークリフト運転技能講習の修了が義務付けられています。
このフォークリフト運転技能講習を規定の時間数修了すれば、フォークリフトの運転が行えるため、建設現場の搬入・搬出作業にも従事できます。
フォークリフト運転技能講習では学科試験、実技による運転の練習、実技試験を合格できれば、フォークリフト免許が得られます。
フォークリフト運転技能講習は合格率が90%以上となっており、最後まで講習を受けられれば免許は得られると考えて良いでしょう。
フォークリフトの運転をマスターできれば、建設現場で重宝される人材になれることは間違いないため、コストパフォーマンスの良い資格だと言えます。
建設業界で働くための最初の一歩として、フォークリフト運転技能講習を受けてみてはいかがでしょうか。
建設系の資格は将来性がある!?
この記事をご覧の方の中には、建設系の資格を今から取得したとしても、近い将来に通用しなくなるような資格では意味がないと考えられる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、現在の建設業界の実情を知れば、建設系の資格は有用であり、将来的にも通用することを理解していただけるはずです。
本項では建設業界の現状を解説していきますので、資格取得へ踏み出すことを躊躇されている方はぜひご覧ください。
建設業界の市場は大きく、リフォーム数は増加傾向にある
建設業界は市場規模が大きく、建設投資額は2020年度が65兆3,600億円、2021年度が66兆6,000億円、2023年度が66兆9,900億円と、年々増加傾向にあります。
特にリフォーム分野はその成長が目覚ましく、リフォーム数の増加によって市場規模も成長を続けています。
新築住宅はインフレや物価高の影響により成長が鈍化していますが、リフォームに関しては様々な要因が追い風になっています。
市場規模の成長は、政府によるカーボンニュートラル促進のための省エネリフォームへの補助金や、家電やアパレルなどの他業種からリフォーム業界への参入が相次いでいることなどが影響していると考えられます。
近年の新型コロナウイルス感染症の流行によってステイホームが定着したことにより、多くの方が住環境の改善へ興味を持ったことも関係しているようです。
日本では建物の老朽化が進んでいることから、災害に備えて性能向上を目的としたリフォームも今後は増加すると考えられ、リフォーム業界は今後も需要が拡大傾向にあると思われます。
建設業界はリフォーム以外にもインフラの整備・補修や都市開発プロジェクトなどを理由として、高需要が今後も続いていくことでしょう。
そのため、建設業界は2025年以降もリフォーム業界を中心として成長を続けていくと考えられており、建設関係の資格取得が無駄になるとは考えにくいです。
建設業界の将来性について不安を抱えている方はリフォーム分野で役立つ技術系の資格を取得すれば安定して仕事を得られるはずです。
職人も需要が高まっている
日本では2024年現在、少子高齢化によって労働人口が減少していることで、多くの業界で働き手不足が深刻な問題となっています。
建設業界も例外ではなく、職人たちの高齢化が急速に進んでおり、今後人材不足がさらに深刻化していくと考えられています。
特に2025年は団塊の世代が大量に退職することで業界の人手不足が急速に進むと考えられており、建設業界ではこれを2025年問題と呼んでいます。
この他にも、建設業界は「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージや、実際に長時間労働が常態化していることなどもあり、若者が参入しづらい業界となっていました。
建設業界では、労働環境が改善しなければ人手不足によって業界全体が立ち行かなくなるリスクが有るため、この状況を改善するために企業も若い人材が働きやすい環境の整備が進んでいます。
状況を改善するため、政府も建設業界の働き方改革を推進しており、時間外労働の削減や週休二日の導入などによる労働環境の改善が進んでいます。
建設業界は人手不足の影響によって若い職人の需要が増加するため、技術系の資格を取得すれば多くの企業から求められる人材になれることは間違いありません。
建設業界の資格を取得して職人としてのスキルを身につければ、将来も通用する人材として長く建設業界で活躍できます。
建設業界はやりがいを感じながら仕事をしていきたいとお考えの方におすすめの業界ですので、資格取得をぜひ検討してみてください。
建設系の資格があると建設コンサルタントとして働くことも
建設系の資格を取得すれば、その分野における自分の専門性の高さを証明することが可能です。
近年は建設現場でその専門知識を活かすばかりでなく、発注者と建設会社の間に立って、建設コンサルタントとして働かれる方も増えてきました。
建設業界でさらなるキャリアアップを目指したいという方は、その知識を活用する方法として建設コンサルタントへの転職を検討してみてはいかがでしょうか。
本項では、建設コンサルタントの役割やその魅力について解説します。
建設コンサルタントの役割
建設コンサルタントは、建設業界で培った専門知識や技術を活かし、国や都道府県、市町村などの行政が担当する社会資本整備事業の技術的サポートを行うのが主な仕事です。
社会資本とは道路や上下水道、ダムなどのインフラを中心とした、国民の暮らしを支える公共設備のことで、これらを整備する際、建設コンサルタントがその専門知識を活かし、施工計画や現地の調査などを進めていきます。
そのため、建設コンサルタントは直接工事に従事するのではなく、コンサルティング業務のみを行い、工事自体はゼネコンなどの建設会社が担当します。
建設コンサルタントは社会資本の整備によって社会の課題を解決するために、培ってきた専門知識を活かし、最適な方法を模索するのが主な仕事と言っても良いでしょう。
以下で、建設コンサルタントの分野ごとに、どういった業務に従事することとなるのか、詳細をご紹介します。
土木系
土木系の建設コンサルタントは、上下水道や橋、道路などの社会インフラに関連した工事に従事することとなります。
社会インフラは各地で老朽化が進んでいるため、整備することによって国民が快適かつ安全に利用できる形にすることが主な役割となります。
建設コンサルタントには今までに培ってきた建設業に関する専門知識やスキルを活かし、なるべく最良の形で問題を解決することが求められます。
近年は災害などによって社会インフラがダメージを受けるケースが増えており、そうした災害にも耐えうるようにインフラ整備をする必要が生じています。
建築系
建築系の建設コンサルタントでは、建築物全般に携わることとなります。
例えば、公共工事においては高層ビル、港、ダムなどの大型設備の建設工事など大規模な建築物に携わることが多いとされています。
建築系のコンサルタントは施工計画から、現地の調査、建物の設計などに携わり、建築物を使いやすい形で完成させるためにサポートするのが主な業務となります。
専門系
専門系の建設コンサルタントとは、上述したようなインフラや建築物以外に、工場や変電所など、施工にその施設に対する専門知識を要するような建設物を取り扱う種類のコンサルタントのことです。
建設コンサルタントの中には、社会インフラなどではなく、工場や変電所などの専門的な分野に特化している企業も存在しています。
建設コンサルタントの魅力
建設コンサルタントは、公共施設や社会資本などの施工計画のコンサルティングを行う職種です。
道路や河川、トンネルなどのインフラは一朝一夕で出来上がるものではなく、計画段階から数えると一年以上に及ぶ長い期間が必要となるため、一つの案件に長期的に携わることとなります。
インフラは多くの国民に利用される分、コンサルタントの責任も重いですが、計画段階から携わった施設が完成した時には大きな達成感を得られることでしょう。
河川・道路交通など日本全国のインフラ設計や最先端テクノロジーにも触れ続ける
建設コンサルタントは自治体が発注した案件のコンサルティングをする場合が多く、河川・道路交通などのインフラ設計に携われる職種です。
インフラは社会の基盤となるもののため、インフラ設計で培った経験や知識は将来的にも通用するものであり、無駄になることもないでしょう。
しかし、インフラのような多くの方に長期的に利用されるものに携わり続けるためには、人々がより利用しやすくするために最新の技術に対して理解を深め、安全性や利便性の改善に取り組む必要があります。
建設技術は常に進歩を続けており、近年はDXやAIなどの最先端テクノロジーを取り入れることで、建設現場での生産性向上を行いつつ施工を行うことも増えています。
今後、建設コンサルタントはこうしたテクノロジーを効果的に取り入れ、人手不足を補いつつ、施工を効率よくスムーズに進める環境を整備する能力が求められていきます。
そのため、常に建設に関する先進技術を学習しつつ、幅広い分野に興味を持って学習を続けていくことが必要です。
国境を超えたプロジェクトにも携われる
建設コンサルタントを行う企業の中には、国内だけでなく海外のプロジェクトに多く携わる企業も存在します。
海外でも建設コンサルタントの仕事の根幹は変わらず、人々が使用する鉄道や橋、トンネル、道路などのインフラ整備が大半を占めています。
しかし日本とは違い、発展途上国などはまだそこまで土木や建築の技術が進んでいない場合も多いです。
そうした国で自分が持つ先進的な建設技術を現地に伝えつつ、インフラ設計に携われるということは大きなやりがいになります。
日本と海外では言語の壁がありますが、海外で建設コンサルタントとして働くということは、かけがえのない経験となり、自分のスキルアップにも繋がることでしょう。
建設系の資格がなくても無資格でも働くことができる
本記事をここまでご覧になった方の中には、建設業界で働くには資格取得が必須のように感じてしまっている方もいらっしゃるかと思います。
しかし実際には業務に関係する資格を持っていなくても働ける職種はいくらでも存在しています。
現在は多くの業界で人手不足となっており、建設業界も例外ではありません。
建設業界では資格なしの人材でも良いから雇用したいと考えている人手不足の企業も存在しているはずです。
本項では資格取得なしで建設業界で働き始めることのメリットや、資格が無い方におすすめのCADオペレーターという職種についてご紹介します。
企業で働きながら資格取得を目指し、キャリアアップを狙う
資格取得してから建設業界で働き始めるとなると、それだけ実務経験を積み始めるのが遅くなります。
建設関係の専門資格の中には、資格の受験資格に実務経験が設定されている場合があります。
そのため、先に企業で働きながら職種と関連する資格の取得を目指すことで実務経験と専門知識を同時に身につけるということも可能です。
実際に働くことで、従来の予定とは違う職種で自分の適性が見つかる可能性もあるでしょう。
企業が求める資格を取得できれば昇給やキャリアアップにも繋がるため、まず建設業界の企業で働くというのもおすすめです。
CADオペレーター:建設系のデスクワーク
CADオペレーターとは、CAD(Computer Aided Design)ソフトを操作して、設計士やデザイナーが設計した図面をパソコン上で正確な設計図として作成するのが主な仕事です。
設計士やデザイナーが書いたラフから、CADオペレーターが設計図に書き起こす場合もあるなど、パソコンを用いたデスクワークの技術職として、建設業界で活躍しています。
建設現場では設計図を基に施工計画を立案し工事を行っていくため、製図データに不備があると建築物が不備のある状態で完成してしまう可能性があります。
そのため、CADオペレーターは指示通りに設計図を作成する能力が必要となります。
CADオペレーターは、働くために専門の資格を取得する必要がなく、業界未経験の方でも働ける可能性がある職種です。
ただし設計図の作成にはCADソフトを扱うスキルや、建築物の設計に関する専門知識が必要となります。
まとめ
今回は建設業界で働く上で取得しておくと役立つ資格についてご紹介しました。
建設業界では建築士や電気工事士、建築施工管理技士などに代表されるように、資格取得していなければ従事できない独占業務が存在しています。
資格を取得できれば企業にとっても雇用するメリットが大きいため、就職・転職がしやすくなります。
また、資格取得によって専門知識を身に付けられれば、建設コンサルタントのようにその知識を活用して施工を計画段階からサポートするような職種にも就くことが可能です。
CADオペレーターのように資格がなくても他業種から目指せる職種も存在しているので、ぜひご検討ください。
本記事が読者の皆様の今後のキャリアを考える手助けになれば幸いです。