建設業界と言えば、頑丈なヘルメットをかぶった男性たちが、鉄骨やコンクリート、重たい資材を扱うといった力仕事のイメージが強いのではないでしょうか。
しかし建設業界の中でも「施工管理」というポジションでは、体力を要する業務だけでなく、現場全体を指揮するような細やかな観察力、気づかい、コミュニケーション能力が必要とされる場面も多いです。
そのため、女性が大いに活躍できるチャンスが広がっています。
建設業界における男女比について
力仕事のイメージがある建設業界はほとんど男性が働いているのでは?といった印象を持っている人が多いはずです。
確かに、サービス業や小売業・飲食店に比べ建設業界の女性は少なめです。
ですが、近年では女性の働きやすさを追求する取り組みも見られ、派手すぎなければネイルもOKにしているなど女性が働きやすい環境を構築しようとしている企業も見受けられます。
ここでは、建設業界における実際の男女比について触れるとともに、女性がより参画しやすい環境を整えるための政府の取り組みやプロジェクトについても紹介していきます。
建設業の技術職における男女比
国土交通省が発表している大手建設業者53社を対象に行われた「令和2年建設業活動実態調査の結果」によると、技術職(工事の設計・積算、現場施工の管理・監督、研究、技術系営業)に従事する男性が112,839人、女性が8,107人と示されています。
参照:国土交通省「令和2年建設業活動実態調査の結果」
建設業に従事する女性は今後増加する?
建設業界に従事する女性労働者は増加傾向をたどるとされています。
平成26年8月に、国土交通省と建設業の5つの団体が共同して進められた「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」によって、女性が働きやすい労働環境の改善、建設業界での女性の活躍を発信する、スキルアップ可能な環境を整えるなどの取り組みが行われてきました。
参照:国土交通省「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」
上記の団体の努力の甲斐もあって、建設業に従事する女性は近年増加傾向にあります。女性の技術者は、平成26年には1.1万人であったのに対し平成30年には1.64倍増加して1.8万人に増加しました。
女性活躍を推進する団体間の交流や情報共有することを目的とする「建設業女性活躍推進ネットワーク」も誕生し、女性が建設業界に従事する後押しとなる団体も作られました。
建設業界における女性の人材を確保するべく、「入職者に対する離職者数を令和6年までの間前年度比で減少させる」や「令和6年までにに都道府県単位で活動している団体の『建設産業女性活躍推進ネットワーク』への加入をすべての都道府県で目指す」のように 政府は今後の目標も立てています。
参照:国土交通省「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~」
施工管理の現場における女性の苦悩
建設業界は、前述の通り男性が圧倒的に多い分野です。この特性から、特に施工管理の現場においては女性が働きづらさを感じる場面が多いといわれています。
男性主体の現場の体制や文化が、女性の施工管理士の日常的な苦悩の一因となっていることがあります。
しかしながら、設備や価値観などの問題においては一朝一夕に改善されるようなものではありません。そのため施工管理の職種を目指す女性には一定期間辛抱が求められることがあります。
現場の設備に問題がある
建設業界において、女性の施工管理士は増えつつある一方、適切な設備が整っていない現状が見受けられます。
作業服に着替えるための男女別のトイレや更衣室など、基本的な設備が不足していることは少なくありません。
また、仮設トイレの鍵は簡易的なものが多く男女共有の場合ではきちんと鍵が閉まっているか、誰かが入ってこないかなど落ち着かないことも多いです。
プライバシーが保護されない環境だと、ストレス要因となることが考えられ、女性の施工管理士が建設業界で長続きしない原因ともなる可能性があります。
日焼けする
建設現場の特性として、屋外での作業が主となるため、施工管理士は日焼けしやすい環境に置かれます。紫外線のダメージは、女性にとって特に避けたいポイントの一つです。
施工管理士が屋外での業務に携わるのは一部の時間かもしれませんが、紫外線に晒されることは女性の施工管理士にとって、不要なストレスを感じる原因となることが多いです。
女性であるというだけでなめられてしまう
建設現場には高齢の技術者も多く、古い価値観を持っているというように女性に対する差別意識を持っている方がいるという可能性があります。
現代では男女の差別は好ましくないと捉えられていますが、施工管理士として働く上で差別的な困難に直面することがあるとされています。
特に、女性に対して体力が少ないや力仕事が難しいというステレオタイプを持つ方からの侮辱を受ける可能性も考えられます。
施工管理において女性が活躍できる理由
男性が多い業界での女性の参画によって、新しい視点や方法をもたらし、業務のクオリティ向上に寄与する可能性があります。
女性はコミュニケーション能力や細やかな配慮などを持ち合わせており、これらは施工管理の効率化に役立ちます。
細かいところまで気づくことができる
施工管理は建設現場のプロジェクトを円滑に進めるための重要な役割を果たします。
その中で特に、4大管理の1つとして挙げられる「安全管理」は不可欠な要素となっています。
この安全管理が効果的に行われるかどうかが、現場の安全性を確保するだけでなく、作業の効率や質にも大きく関わります。
些細な変化を見落としてしまい、事故に繋がってしまった場合現場が一時中断してしまう恐れがあります。他にも資材に欠陥があった場合、手戻りする必要があり倍の時間がかかってしまいます。
女性は、細かい点にも気を配ることが得意であるという特性を活かすことで施工管理の分野において大いに活躍できると言えるでしょう。
小さな異常を見逃さないというのは、大きな事故を引き起こす可能性を低減する上で不可欠なスキルと言えるでしょう。
さらに、技術者の健康状態や心理状態の変化にも敏感に気づくことができることも女性の強みと言えます。例えば、技術者の顔色に変化があった場合、それをすぐに察知し、適切な対応をとることで、重大な症状や問題の発生を防ぐことが可能となります。
施工管理における安全管理は、現場を円滑に進めるための基礎となります。
この基盤をしっかりと築くことができる女性の存在は、施工管理の現場においても大きな強みとなることでしょう。
女性ならではの視点から建設現場に価値提供できる
施工管理士としての女性は、建設業界に新しい価値を提供する能力を持っています。
具体的には、使い勝手の良い空間設計やデザインの提案が挙げられます。日常生活の経験を基に、過ごしやすい動線の確保や子供、高齢者に配慮した提案が可能になります。
他にも女性は、高いコミュニケーション能力を持つと言われています。クライアントとの信頼関係を構築し、要望をくみ取り現場に反映できる能力を持っています。
キャリア形成しやすい
施工管理士としての実務経験や資格は、技術力を証明する材料になります。結婚、出産、子育てで一時的にキャリアが中断しても、持っている技術や資格によって自身の技術力が証明される材料になります。
技術の進歩でツールは変わるかもしれませんが、施工管理士の4大管理の基本的に変化しないため復職後もスムーズに業務を再開できるとされています。
施工管理士としての経験と知識は、企業に大きな信頼をもたらすためキャリアの継続やブランク後の復帰する段階において生かされます。
特に大手のゼネコンは建設業界を牽引するような立場であるため、積極的に充実した福利厚生を取り入れていることや、育休・産休制度が充実している企業が多いといわれています。
お客様とのコミュニケーションが取りやすい
特に女性のお客様にとって、建設業界は男性が主流であるため、初めてのプロジェクトや要望の相談時に緊張や抵抗を感じることがあるかもしれません。
しかし、施工管理士が女性であれば抵抗感は薄れ、安心して相談や要望を伝えることができます。
女性の施工管理士は、細やかな気配りを武器にお客様との信頼関係を築くことができます。この細かい気配りは、お客様の細かな要望や悩みを的確に掴み、それに対する解決策を提案し現場の質を向上させることに繋がります。
女性が施工管理に就くデメリット
施工管理の仕事は多くの場合、業務の特性上、不規則な労働時間を伴います。特に、現場の進行や予期しない問題が発生した場合、夜間や休日にも対応が求められることが珍しくありません。
現場の監督や検査、各種の調整業務など、体力を要する業務も多いです。女性が施工管理の現場で働く際は一般的なオフィスワークとは違った困難が予想されます。
ここでは、女性が施工管理に就く上で知っておくべき事項について紹介します。
休みが不規則でライフイベントに支障が出る可能性がある
施工管理士としての仕事は、予期しないスケジュール変更に直面することが少なくありません。
建設現場は天候や資材の状況に影響されやすく、外的要因によりプロジェクトの進行が変わることもあります。
施工管理士は、定められた工期内にプロジェクトを完成させるために、休日出勤が増える場合も考えられます。その結果、休日が取りにくくなることが考えられます。
施工管理士としての責任を全うするため、予定と仕事の調整が求められる状況を理解し、適切な対応を心がけることが求められます。
体力が求められる職であるということ
施工管理士の職務は、オフィスワークだけでなく、現場での実務が多くを占めます。具体的には、現場内を頻繁に歩き回る、細かく現場の様子をチェックする、時折資材を運ぶなど、日常的な体力を必要とする作業が伴います。
さらに、夏季や冬季など、季節による厳しい環境下での作業も避けられません。
女性施工管理士にとって、体力面での男性との差を感じる場面も出てくるかもしれません。
しかし、施工管理の業務は知識や技術、コミュニケーション能力も同時に要求されるため、体力だけがすべてではありません。
施工管理士の服装について
施工管理士として現場に出る際、身を守るためにも作業時の服装は重要です。
施工管理においては男女間での服装の違いは特に見られません。しかし、建設業界は男性が大多数を占めているため服装の基準が男性に設定されている可能性が考えられます。
ここでは服装に関する注意点や服装について紹介します。
女性の施工管理者が現場の作業服で注意すること
建設業界においては、男性が多くを占める分野であり、施工管理服装も男性基準で設計・製造されていることが少なくありません。
服装や安全装備のサイズが合わないと、作業の際に動きにくくなったり、裾に引っかかってしまい転倒するリスクが高まります。
仕事時の服装は?
施工管理の仕事は、オフィス内での業務だけでなく、現場での作業も多々あります。そのため、施工管理士としての服装選びは、状況やロケーションによって異なる服装をすることが特徴です。
施工管理士は電車やバスといった公共交通機関を利用する際には、スーツを着用するとされています。
実際の現場での作業時にはスーツは動きにくいため、作業服の着用が必要となります。
地方自治体、業者の方などのお客様と打ち合わせする場合には礼儀としてスーツを着用するとされています。
まとめ
施工管理士としての女性の活躍は、現在の少子高齢化の中で労働者人口が減少する時代に、建設業界の未来を支える大きな柱となります。建設業界でも人手不足しているため女性の参画は建設業界の成長と継続性を保つために重要な存在です。
建設業界においてはDX化が進み業務量が軽減しつつあります。そのため女性でも施工管理士としてで働きやすい環境になるとされており、以前より女性にもチャンスは広がっています。
施工管理士としての女性の参画を推進するためには、企業や政府の協力が欠かせません。女性が働きやすい環境を整えるための制度や設備の充実は、これからの課題として挙げられます。