長年経験を積むことで安定した収入を期待できることや、手に職をつけられることから施工管理という職種が注目されつつあります。
実際、施工管理は電気工事を専門とする電気工事施工管理や、建築を専門とする建築施工管理技士など大きく分けて7種類あり、それぞれで担当する業務内容・職種が異なります。
一口に施工管理といっても、担当する業務が大きく異なることから施工管理に興味を持っている方は自分に合った施工管理を選択することが大切です。
そこで本記事では、7つの施工管理それぞれの特徴やそれぞれで向いている人の特徴も紹介していきます。
施工管理とは
工事現場のリーダーとして、施工管理の仕事を打診されている方もいますよね。
ただそもそも施工管理とは何かがよく分からない方もいるでしょう。
施工管理は工事現場のリーダーとして、現場全体がうまく回るように監督するのが役割です。
主に以下の業務があり、これらを総評して4大管理とも呼びます。
工程管理
まず工程管理とは、決められた期限までに工事が終わるようにスケジュール管理することです。
工事ではプロジェクトの期限が事前に決まっているため、なるべく遅れることなく工事が進むように管理・調整します。
納期に遅れそうな場合は、日程調整や人員の補充で工期に間に合わせることも必要です。
納期に間に合わせることはクライアントとの契約の成否にも関わるため、施工管理で最も重要な管理業務とされています。
安全管理
次に安全管理とは、現場で働く従業員の安全を確保するための管理に関する業務です。
工事現場は危険が多く潜んでいるため、常に安全性に配慮しながらケガや事故が起こらないようにします。
現場では高所作業や重機を使った作業も多い分、ケガや事故のリスクが存在します。
さらに、天候によって危険性が異なり強風が吹いている場合や大雨が降っている場合など自然要因も考慮した安全対策が不可欠です。
安全管理では機材の状態や、指定された工法がしっかり用いられているかなどを確認することが重要です。
また現場作業員の健康チェックやフォロー、危険予知運動なども安全管理のために行われます。
品質管理
品質管理は、工事の目的物の品質(建物の強度や密度)が設計図や仕様書で指定された水準を満たしているかを確認する作業です。
具体的には工程ごとに品質評価試験や各工程ででき上がったものの品質確認を行います。
加えて工事に使われる原材料や工法の品質を確認することも業務の1つです。
品質管理は工事を円滑に進めるためだけでなく、完成後にクライアントが施設を長期間にわたって安全かつ快適に使えるようにする目的もあります。
原価管理
原価管理とは現場で働くスタッフの人件費や、工事に使われる資材の費用に関する管理業務です。
工事現場で使われる費用は工事がスタートする前に予算が決められていることから、予算の範囲内で終わるように人件費や材料費を適正に管理・配分することが不可欠です。
ただ工事の目的物や材料の品質も確保しなければならず、予算と品質を両立させるために経理の専門知識が求められます。
複雑な原価計算を用いなければならないため管理が大変だと感じる場合は、外注費や材料費・原価にかかる費用を計算する費用を計算する工事原価管理システムを活用すると良いでしょう。
7大施工管理の種類について
施工管理のスペシャリストが施工管理技士です。
先ほど紹介したように施工管理技師には、電気・建設・造園など様々な種類があるため、それぞれの施工管理が具体的にどのようなことを行うのか理解しておくことで今後の検討材料に役立ちます。
【7大施工管理の種類】
- 建築施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 造園施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 電気通信施工管理技士
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、建築現場全体を指揮・管理する仕事・国家資格を指します。
現場全体の作業を管理するため重要度が高い業務であり、現場全体の進捗状況の管理・現場の安全対策・品質の確認や改善・役所への各種申請などと多岐にわたります。
加えて工事に関わる様々な人々とやり取りすることも大切な業務内容です。
基本的に建設現場では、関連会社の作業員・クライアント企業の社員・自社担当者など様々な人物が関わり非常に多様な人物とやり取りし、高いコミュニケーション力やリーダーシップが不可欠です。
そのため、規模の大きい建物の工事を担当する場合、プロジェクトに関する予算やスケジュールの進め方・作業員の進捗管理など、実務経験やリーダーシップが求められるます。
国家資格としての建築施工管理技士には1級と2級があります。
2級では特定
1級建築施工管理技士は一般建設業だけでなく、請負金額が4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円以上)と規模感の大きな建築工事に携われることが魅力です。
電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、電気工事を監督・指揮する業務・国家資格です。
電気工事の計画作成から工程・品質・安全の管理まで責任を持ちます。
具体的に携わる工事案件は、発電所などの発電設備・変電所・建物内の照明や配線の設置・道路や鉄道の信号設備などを担当します。
電気は現代人の生活に欠かせないインフラである分、設備の工事を監督する電気工事施工管理技士の責任が重大です。
仮に、電線に何かしら起こり停電といったことが発生すると、インターネットのデータ損失や冷蔵庫内にある食材の腐敗など多くの影響を受けます。
国家資格としての電気工事施工管理技士は、建築工事施工管理技士と同じく1級と2級があります。
1級資格の場合、請負金額4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円以上)の電気工事に携われる特定建設業事業所でも活躍できる点が特徴です。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、道路・鉄道・河川設備・橋梁・トンネルなどの公共インフラ設備の工事を監督します。
加えて自然災害で土木設備が損壊した際の復旧工事や、老朽化したインフラ設備の補修工事に携わる点も特徴です。
土木施工管理の主な業務は、土木工事の計画立案・現場作業員への指示・品質管理・現場の安全管理・役所への申請などを行います。
ただ土木工事は一般住民の生活への影響が大きいため、地元住民への説明や工事現場のある自治体の担当者との折衝も極めて重要な役割です。
同時に土木工事の現場では雨・雪などの悪天候や、脆弱な地盤にもよく見舞われ、工事がストップする場合も多い分、気候や突然のアクシデントを想定したスケジュール管理や対応策の準備も欠かせません。
土木施工管理技士の資格にも1級と2級があり、1級であれば、請負金額が4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円)の大規模な土木工事が可能な特定建設業事業所でも力量を振るえます。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は、建物内の配管工事を指揮・監督する立場です。
建物には水道管・ガス管・ダクト(排気設備)・空調設備・貯水槽など、建物を快適に利用するための設備があります。
これらの工事は管工事施工管理の資格がなくても携わることができますが、管工事施工管理技士を取得することで各種設備の工事で責任を担いながら工事に携われキャリアアップに繋がります。
管工事施工管理技士の業務も、配管工事の計画作成・工事現場での指揮監督・現場や作業員の安全確保・工事の品質維持が基本です。
ただ建物内の配管で何らかの問題が起きると、水漏れやガス漏れなどの形で建物や利用者に被害を及ぼしかねません。
建物の利用者が気持ち良く過ごせるように、配管ミスが起こらないように緻密な計画を立てる必要があります。
さらに、水道管の設置や改造・修繕工事を行うときに必要な資格である給水装置主任技術者の資格を取得する際に試験科目が2科目免除(給水装置の概要・給水装置施工管理法)されるメリットがあります。
管工事施工管理技士資格にも1級と2級があるのが特徴です。
1級資格を持っていれば、請負金額が4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円)に及ぶ大規模な工事にも携われます。
造園施工管理技士
造園施工管理技士は、住宅の庭園や公園の整備・道路での街路樹や植え込みの設置をメインで行い、造園施工管理技士の業務も、工事計画の作成・工事中の安全確保・資材やコストの管理・スケジュールの管理調整などが挙げられます。
同時に高層ビルや大型商業施設の屋上緑化でも活躍しています。
ただ造園工事は、人が住んでい流ような居住エリアでの工事が多いため、工事中の騒音対策や地元住民への説明のように、住民への細やかな配慮が欠かせません。
造園施工管理技士資格も1級と2級があります。
1級ともなると、請負金額が4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円)以上の大規模な工事にも携われるのが魅力です。
建設機械施工管理技士
建設機械施工管理技士は、パワーショベルやブルドーザーのような建設機械を使った工事では欠かせない存在です。
建設機械の取り扱いや利用に加え、建設機械による工事の進捗に対しても責任を負います。
ある程度規模の大きい工事では現場への常駐義務があるため、建設機械が必要な現場が多い分、他の施工管理に比べニーズが高いです。
加えて建設機械は建物やインフラ設備など幅広い種類の工事で使われていることから、活躍できる現場も豊富にあります。
建設機械施工管理技士は、建設機械を使った工事の計画作成・現場での施工管理・品質管理・安全管理を担います。
大規模な工事では建設工事の組み立て・解体を行う場合が多いため、より専門知識や技術を発揮できるでしょう。
ただ建設機械は重量があるため、作業員や通りかかった人の命を奪ったり大けがをさせたりするケースへの対策が欠かせません。
建設機械の専門家として、日頃から機械の適切な管理や取り扱いにも専門性を発揮する必要があります。
建設機械施工管理技士も他の施工管理技士と同様、1級と2級があり、1級資格を持っていると請負金額が4,500万円以上(建築一式工事で7,000万円)の工事に携われます。
電気通信施工管理技士
電気通信施工管理技士は、インターネット回線や電話回線などの通信設備の工事を監督管理する職種です。
近年ではインターネットやスマートフォンが当たり前に利用されていることから、今後とも需要が増す見込みである分、非常に高いニーズがあります。
電気通信施工管理技士が具体的に行う業務には、携帯電話の基地局・インターネットのデータセンター・社内LANなど様々な現場での工事を監督します。
また防犯カメラの設置工事も担当するため、建物内や屋外の安全性に貢献できる点も魅力です。
なお電気通信施工管理技士自体は2019(平成31/令和元)年に新しくできた資格です。
ただインターネットやスマートフォンは今後とも発展し利用者も増加していく予想であるため、極めて将来性が高い職種であると言えます。
種類が多い施工管理技士がおすすめな理由
施工管理技士は業務が幅広い上、求められる責任も重大です。
ただ以下の理由から将来性が高い分、施工管理を目指すことはおすすめとも言えます。
- 人材不足で今後も需要が見込まれる
- 高度経済成長期の建築物の一斉老朽が進んでいる
- 資格の取得によって年収増加が期待できる
人材不足で今後も需要が見込まれる
まず施工管理技士は全体的に人材が足りていません。
少子高齢化の影響から、施工管理に限らず建設業界全体的に人材が不足しています。
加えて施工管理技士は、基本的に何年も工事現場で活躍していたベテランが携わるのが一般的です。
ただ施工管理に携わる前に、現場のきつさや待遇の不十分さを理由に建設業界を離れる人も多数存在し、同時に就職活動で建設業界を敬遠する若手も少なくありません。
施工管理技士のなり手が不足している一方、工事案件は今後とも増加が予想されます。
建設業でもデジタル化の波が押し寄せているとはいえ、工事現場では作業員や機械を動かす人材は欠かせません。
人材不足と現場でのニーズから、今後とも施工管理技士の需要は高水準で推移するでしょう。
高度経済成長期の建築物の一斉老朽が進んでいる
高度経済成長期に政府が公共事業に投資を行い多くの建築物を作りましたが、一斉に老朽化が進んでいます。
現在日本国内で現役で使われている建築物は、高度経済成長期(1950年代から70年代)に造られたものが多く見られます。
一般的に建造物やインフラ設備の耐久年数は50年前後とされており、建設から50~60年を迎えた建造物やインフラ設備は、現在老朽化が進んでいる状態です。
放置すると自然災害に襲われたところで倒壊する危険さえあるため、補修や建て直しが必要です。
もちろん補修や建て直しを行う場合も、新築工事と同じく監督として専門性やリーダーシップを発揮する人材が求められます。
資格の取得によって年収増加が期待できる
さらに施工管理技士は資格を取得すれば、年収増加が期待できます。
施工管理技士は建設業に携わる事業所であれば、必ず配置しなければならない技術者です。
建設業では大規模な工事を請け負う場合、監理技術者資格を持った人材をリーダーとして配置しなければなりません。
加えて大規模な工事では請負金額で4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)で受注できるようになるため、会社にとっても大きな利益が生じます。
同時に施工管理技士が在籍していると国が行う技術評価でも加点され、技術評価点が高いほど、行政機関が行う公共工事の入札競争でも有利になります。
1級の施工管理技士は会社に多大な利益をもたらすため、資格給や高いポストを用意する企業は数多くあります。
資格取得を機に年収が跳ね上がるケースが非常に多いため、業界内でのキャリアアップを考える時に施工管理技士は大変おすすめです。
施工管理技士1級と2級の違いについて
先ほど施工管理技士の種類が7種類あり、それぞれの施工管理が実際にどういった業務を行うのか紹介してきました。
施工管理技士それぞれに、1級と2級が存在し、級数によって扱える工事の規模感が異なります。
施工管理技士2級
施工管理技士2級は主任技術者になることができます。
主に中小規模の建設現場での施工管理を担当し、経験を積みながら上位資格の施工管理技士1級を目指す方が多いです。
施工管理技士1級
施工管理技士1級は施工管理技士2級の主任技術者に加え、監理技術者になることができます。
総額4000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の特定建設業許可を必要とする工事を下請け業者に出す場合に配置する必要があります。
下請け業者に出す場合に配置される施工管理技士で、一般的な建設工事から大規模な建設工事まで幅広く施工管理に関する業務を担当できます。
施工管理技士の建設業界での位置付け
建設業界では施工管理技士以外にも、「現場監督」や「専任技術者」のような似た用語をよく耳にしますよね。
施工管理技士になる際、類似の役職との違いを知っていると役に立つでしょう。
施工管理技士と現場監督の違い
ただ企業によっては、現場内での施工管理技士と現場監督の役割に差を設けているところもあります。
施工管理技士の場合は書類作成などのデスクワークがメインであるのに対し、現場監督が作業員への指示など現場密着の作業をこなす役割です。
なお国家資格としての施工管理技士は名称独占資格です。資格を自ら取った人間でなければ名乗れないため、無資格者は名乗れません。
施工管理技士と専任技術者の違い
専任技術者は、主に適切な内容での工事契約の締結や契約の適性な履行に関する作業を行い、具体的には、工事の依頼主の相談対応・契約締結・費用の見積もりなどの事務や交渉作業がメインです。
建設業法では、専任技術者を営業所別に配置することを義務付けているため、専任技術者が最低1人いなければ会社側は工事契約を受注できない分、建設会社の運命を左右する存在です。
一方施工管理技士は資格がなくても、中小規模の工事であれば現場での監督指揮に携われます。
ただ大きな工事契約を結ぶ場合は、各種施工管理技士1級資格が欠かせません。
施工管理技士と監理技術者の違い
さらに施工管理技士と監理技術者の違いは、監理技術者は施工管理技士でも1級資格を持っている人物に限られます。
監理技術者は請負金額が4,500万円以上(建築一式工事では7,000万円以上)の工事案件で指揮監督できる立場です。
なお施工管理技士でも2級しか持っていない人物は、4,500万円以上の工事案件には携われません。
7種類の施工管理技士の中で取得しやすいものとは?
これから施工管理技士資格を取る際、取得しやすいものは知っておきたいですよね。
一次試験(学科試験)は4割から5割となかなか難解さはあるものの、二次試験(実地試験)では合格率が年によって7割台や8割台を記録しています。
なお1級試験で比較的難易度が低いのは、電気工事施工管理技士試験です。
一次試験(択一試験)で3割台後半から5割、二次試験(記述試験)で6~7割程度である分、合格を狙いやすいでしょう。
逆に最も難しいのが、造園施工管理技士の1級試験です。
合格率は一次試験(四択問題)で3割台半ば、二次試験(記述式)でも4割程度を記録しています。
一次・二次とも問題のレベルが高いため、生半可な勉強では合格できません。
他にも建築工事施工管理技士試験の1級試験も、一次試験の一部と二次試験に五択問題が出題される分、正答率が下がりやすく難易度は高めです。
二次試験では記述式も出題される分、より知識の正確さが求められます。
まとめ
本記事では施工管理の種類やそれぞれが担当する業務を中心に紹介してきました。
施工管理は大きく分けて7種類存在し、それぞれで自分が仕事をどのように行いたいか、どのように社会に貢献したいかなどでおすすめの施工管理が異なります。
近年話題のSDGsや地球温暖化対策に貢献したい方の場合は造園施工管理がおすすめで、目にみえて残るものを残したい方の場合は土木施工管理技士がおすすめです。
施工管理として経験・スキルを蓄積することで年収をアップさせながらキャリアアップが期待できます。