電気工事施工管理技士1級と2級の資格や仕事内容、キャリアについて解説！

近年、都市の近代化や、再生可能エネルギーの導入などによって、建設業界における電気工事の需要が急増しています。

建設業界における電気工事の需要の背景から、電気工事施工管理技士という資格がより重要となってきています。

近年需要が高まっている電気工事施工管理技士の資格は、電気工事の品質や安全性を確保するための専門的な知識や技術を持つ方に与えられるもので、1級と2級で区分されます。

そこで本記事では、1級と2級で対応できる業務の違い、勉強方法、そして電気工事施工管理技士としてのキャリア形成の仕方の例など、詳しくご説明していきます。

電気工事施工管理技士とは？

施工管理技士の資格は、建設業界における専門的な知識や技術の保有者に与えられる国家資格です。

施工管理技士の資格には、主に7種類が存在します。

建築施工管理技士、土木施工管理技士、管工事施工管理技士、造園施工管理技士、建設機械施工管理技士、そして電気工事と併用して取得されやすい電気通信施工管理技士などがあります。

電気工事施工管理技士は施工管理にまつわるの国家資格の中の一つです。

電気工事施工管理技士は、建設工事現場における電気関連の施工管理を担当する資格として位置づけられています。

具体的には、配電盤、電力機器、電灯、送電線を始めとした、電気関連の工事の施工管理が実施出来る資格です。

電気工事施工管理技士の主な仕事内容としては、他の施工管理技士と同様に、「品質管理」、「工程管理」、「安全管理」、「原価管理」が主な業務となります。

品質管理では、工事が設計図や国が定める安全基準に準拠して正確に行われているかを確認し、工程管理では、工事が計画通りに進行しているかを監督します。

安全管理では、工事現場の安全を確保するための対策を講じ、原価管理では、工事のコストを適切に抑えるための管理を行います。

このように、電気工事施工管理技士は、建設工事現場における電気工事の施工を円滑に進めるための重要な役割を果たしています。

電気工事施工管理技術検定2級について解説

電気工事施工管理技士2級で出来ること

2級電気工事施工管理技士の資格を取得することで、電気工事の現場における主任技術者を担当することができます。

請負金額が4,000万円以下の工事においては、主任技術者を立てることが義務付けられています。

これらの基準を満たすためには、2級電気工事施工管理技士の資格が必要です。そのため企業としては、主任技術者を確保することが売上に直結する重要課題になりやすいです。

電気工事施工管理技士は工事現場における責任者となることが出来る為、転職市場における市場価値が高まることはもちろんの事、管轄出来る工事の幅も広がる為、より高い視座を持って施工管理の業務に取り組むことが出来ます。

受験資格

2級電気工事施工管理技術検定には1次試験と2次試験があり、それぞれに受験出来る条件があります。

1次試験については、満17才以上であれば誰でも受験することが可能です。

一方で2次検定については、下記の条件を満たす必要があります。

2次検定では実務経験が問われます。最終学歴や保有資格によって必要な実務年数が変わる為、ご自身が表の中のどこに該当するかを確かめた上で、受験資格を満たしているか、満たしていない場合はいつ頃に満たすことが出来るのかを確認しましょう。

2次の受験時には、施工管理技術検定の所定の実務経験証明書を提出する必要があります。実務経験証明書は、受検資格を満たす実務経験を持つことを勤務先の代表者が証明するための重要な書類です。

証明書の内容には、勤務先、所在地、役職名、氏名などが含まれます。誤記入を防ぐため、下書きを行い、その後正確に記入することが推奨されています。実務経験が無記載の受検申請書を提出した場合、受検申請は無効となります。証明書の内容が事実と異なる場合、処分の対象となる可能性があります。

試験内容と合格率

2級の1次検定の試験内容は下記のように構成されています。

受験者数及び合格率の推移は以下のようになっています。

例年8,000名弱の受験者の内4,000名以上が合格しており、過去5年の平均合格率は58.6%となっております。

二次検定では下記のような構成で出題されます。

2次検定の合格率の推移は下記のようになっております。

例年5,000名前後の受験者が受けており、そのうち3,000人前後が合格しており、過去5年間の平均合格率は62.7%でした。

勉強方法

1次検定の勉強時間はおよそ50時間ほどと言われており、1日1時間の勉強時間で2ヶ月ほどの勉強期間で合格を目指すことが出来ます。

1次検定はマークシート形式で、電気工学、電気設備、電気工事の関連分野、設計・契約関係、施工管理法、法規といった幅広い分野からの出題があります。

暗記だけでなく単語や仕組みの理解が不可欠で、過去問を解くことで出題傾向を掴むことも大切です。

過去問を解くだけでなく、都度解説を参照しながら、知識を暗記するのではなく、しっかりと理解することが重要です。

2次検定は記述問題が出題されます。施工経験の記述では、過去の施工経験に関する詳細や工夫した内容を具体的に記述する必要があります。実際に2次検定を合格した方に、文章を予め添削をしておいてもらうと良いです。

施工法、電気設備全般、法規に関しては、1次検定と同様に知識の理解が必要です。しかし、2次検定では、その知識を言語化する能力も同時に問われます。過去問に触れる回数を増やすことで、出題傾向の理解や回答に慣れることが大切です。

電気工事施工管理技術検定1級について解説

電気工事施工管理技士1級で出来ること

1級電気工事施工管理技士は、監理技術者として、上限金額の制約なしで現場責任者の役割を果たすことが可能です。

2級電気工事施工管理技士では、請負金額4,000万円以下の工事の主任技術者としての役割しか果たせませんでしたが、1級を取得することで請負金額に関係なく工事を担当できます。

会社としても、1級電気工事施工管理技士を持つことで、請け負うことができる工事の幅が広がり、結果として、社内での昇進のチャンスも増えることを期待できます。

さらに、公共工事を請け負う際の「経営事項審査の審査基準」という、建設会社の能力を評価する基準でも、施工管理技士の資格を持つ社員数が加点項目として評価されます。

電気工事施工管理技士の資格は個人だけでなく、会社全体にも多くのメリットをもたらすことが出来ます。

受験資格

2級電気工事施工管理技術検定と同様、1級においても、1次検定と2次検定があり、それぞれに受験出来る条件があります。

1次試験については、下記の条件を満たす必要があります。

2次検定では実務経験が問われます。最終学歴や保有資格によって必要な実務年数が変わる為、ご自身が上記の表の中のどこに該当するかを確かめた上で、受験資格を満たしているか、満たしていない場合はいつ頃に満たすことが出来るのかを確認しましょう。

2次検定の受験資格は以下のようになっています。

二次検定のみを受験する場合は以下のような条件となっています。

試験内容と合格率

1級の1次検定の試験内容は下記のように構成されています。

受験者数及び合格率の推移は以下のようになっています。

例年15,000名ほどの受験者の内6000名前後が合格しており、過去5年の平均合格率は45.3%となっております。

二次検定では下記のような構成で出題されます。

2次検定の合格率の推移は下記のようになっております。

例年7,000名前後の受験者が受けており、そのうち4,000人強が合格しており、過去5年間の平均合格率は66.1%でした。

勉強方法

1次検定の勉強時間はおよそ80時間ほどと言われており、1日1時間の勉強時間で3~4ヶ月ほどの勉強期間で合格を目指すことが出来ます。

1次検定はマークシート形式で、電気工事の分野では電気工事、電気通信工事、土木工学、機械工学及び建築学の知識の有無を問う問題や、発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備に関する知識の有無を問う問題、設計図に関する理解を問う問題が出題されます。

施工管理法では施工計画の作成や工程管理、品質管理、安全管理に関する問題が出題されます。

法規では建設工事における法令に関する理解が問われる問題が出題されます。

2級と同じく、知識と理解が不可欠で、過去問を解くことで出題傾向を掴むことが重要です。

過去問を解くだけでなく、都度解説を参照しながら、知識を暗記するのではなく、しっかりと理解することが重要です。

2次検定は記述問題が出題されます。出題範囲は施工管理法で、施工管理を行う為の知識や、設計図で要求される発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備の性能確保に向けた設計図の理解施工計画への落とし込みなどが問われます。

電気工事施工管理技士のキャリアプラン

ここからは電気工事施工管理技士の資格を取ることで、どのような企業で務めることが出来るのかについて見ていきます。

電気工事を専門とするサブコンでスキルの幅を広げる

電気工事施工管理技士として、電気工事を得意とするサブコンへの就職は、キャリア形成の魅力的な選択肢となります。

電気工事施工管理技士の資格を取得する最大のメリットは、電気工事に関する専門的な知識を深め、専門性を高めることができる点にあります。

サブコンでの仕事は多岐にわたり、大規模なランドマークビルの建設における電気工事や、発電所、変電所といった施設での高電圧電気設備の施工など、電気工事に関する様々な業務を行います。

再生可能エネルギーの導入が進む中で、太陽光や風力発電所の工事案件が増加していることに伴い、電気工事施工管理技士の需要も高まっています。

サブコンでの経験は、電気工事施工管理技士としてのスキルを磨く上で非常に価値があります。幅広いプロジェクトに携わることで、多様な知識と経験を積むことができるため、キャリアの強化に繋がります。

建物の修繕会社でワークライフバランスと高待遇を目指す

電気工事施工管理技士としてのキャリアの一つとして、マンションやビル、商業施設の修繕会社でのキャリア形成も魅力を増し続けています。

特に、バブル期に建てられた建物や築年数が経過している建物では、修繕工事の需要が増加しています。修繕工事は利益率が高いため、給与への還元も大きくなりやすいです。

マンションの修繕工事の場合、住民との関係性が重要となるため、土日や夜間の稼働は控えることが多く、ワークライフバランスが取りやすい環境が魅力です。

修繕工事会社では住民やビルの利用者との関係構築が求められるため、技術的なスキルも重要ではあるものの、コミュニケーション能力が重視される場面も多いです。

接客に近いコミュニケーションが求められるため、技術職を追求したい電気工事施工管理技士には物足りなさを感じることもあるかもしれません。

女性の電気工事施工管理技士にとっても、住民とのコミュニケーションが中心となる修繕工事は、働きやすい環境と言えるでしょう。

電気工事施工管理技士としてのスキルや知識を活かしつつ、人間関係の構築にも力を入れることで、修繕会社でのキャリアを築くことができます。

通信工事会社でスキルアップを目指す

5Gの普及やIoT、DXの推進が進む中、電気通信工事の案件は増加しています。特に、これらの技術の進展を背景に、電気通信工事を専門とする企業の業績が好調です。

電気通信工事の中で、電気工事部分には電気工事施工管理技士の専門的な知識と技術が不可欠です。

電気工事施工管理技士の役割は、今後も電気通信工事の現場でより重要になってくると推測でき、専門性が高く評価されています。

電気通信工事の現場は、最新の技術やトレンドを取り入れることが期待されるため、電気工事施工管理技士は新しい技術の習得も求められます。

その結果、キャリアの幅が広がり、多岐にわたるプロジェクトに関与することが可能となります。

通信工事会社でのキャリアは、技術的な成長だけでなく、業界の動向を捉える視野を広げるチャンスでもあります。電気工事施工管理技士としての経験を活かし、通信工事の専門家としてのキャリアを築くことが期待されるでしょう。

電気保安協会で安定した職を手に入れる

電気保安協会は、全国10拠点で構成される一般財団法人として、電気の安全と効率的な利用をサポートする重要な役割を果たしています。経産省や資源エネルギー庁への提言、電気保安技術の研究・調査、そして電力会社との連携など、多岐にわたる活動を行っています。

電気保安協会では、従業員の福利厚生が充実しています。子供の人数に応じた手当や、入社祝い金など、待遇面での魅力が多く存在します。さらに、完全週休二日制が導入されているため、ワークライフバランスを重視する電気工事施工管理技士にとって、安定した職場環境を手に入れることができます。

電気保安協会でのキャリアは、技術的なスキルを活かしながら、電気の安全と効率的な利用をサポートするという使命感を持つ電気工事施工管理技士にとって、魅力的な選択肢と言えるでしょう。

電気工事施工管理技士がやめとけと言われる理由

労働時間が長いから

電気工事施工管理技士は、多岐にわたる業務を担当するため、労働時間が長くなる傾向があります。具体的には、現場の巡回、安全書類の作成、図面変更への対応など、オフィス外の業務とオフィス内の事務作業の両方をこなす必要があります。

さらに、コスト削減のために工期が短縮されて発注されるケースが多く、これが電気工事施工管理技士の労働時間をさらに長くしています。工期が短いと、自然と残業が増えるだけでなく、土日出勤も発生するケースも増えます。

電気工事施工管理技士はワークライフバランスを守れない職場が多い為、電気工事施工管理技士がやめとけと言われる理由の一つとなっています。電気工事施工管理技士としてのキャリアを選ぶ際には、これらの点を十分に考慮する必要があります。

前工程での工事の遅れによるしわ寄せが来る

電気工事施工管理技士が建築工事の中で担当するのは、主に配電や電気設備関連の工事の施工管理です。建築工事の仮定において、前工程での遅れが発生すると、電気工事施工管理技士の着手できるタイミングが遅れてしまうことがあります。

一方で工事全体の工期を遅らせることは難しいため、結果として電気工事施工管理技士がコントロールできない部分でスケジュールが圧迫されることが珍しくありません。

このような状況でストレスを感じることが多く、やめとけと言われる理由の一つとして挙げられます。

人間関係の悩みが増えやすい

電気工事施工管理技士は、人間関係の悩みが増えやすいという課題を抱えています。現場監督としての役割を担う施工管理技士は、作業員との調整や、発注者、ゼネコンとの連携が日常的に求められるため、人間関係のトラブルが発生しやすい環境となっています。

具体的には、発注者の要望と作業員の意向が異なる場合、電気工事施工管理技士は両者の板挟みとなり、双方の要望を満たすための調整を行わなければなりません。

さらに、電気工事施工管理技士は、工程管理、安全管理、品質管理、原価管理といった多岐にわたる役割を担うため、人間関係の悩みだけでなく、業務の負担も大きく心身共に疲弊してしまうことがあります。

責任が重たい

電気工事施工管理技士の責任は非常に重たいと言われる理由がいくつか存在します。まず、電気工事には高電圧の電気設備の工事も含まれるため、事故が発生した際のリスクが高く、安全管理の負担は大きいです。

さらに、品質不良や工事の遅延などが発生すると、発注者との間でトラブルが生じる可能性が高まります。他の工種の施工管理でも同様ですが、現場監督という立ち位置を担う為、大きな責任が伴う仕事でもあります。

しかし、電気工事施工管理技士の仕事は、人々の生活を支えるインフラを守る役割も持っています。やりがいを感じながら取り組むことができる人でなければ、責任を全うすることは難しいでしょう。

電気工事施工管理技士に向いている人

要領が良い人

電気工事施工管理技士には、要領の良さが求められます。施工管理の業務は、人間関係の調整から工程管理、品質管理、原価管理、そして安全管理まで、多岐にわたるタスクを同時に進行させる必要があります。

具体的には、現場の作業員とのコミュニケーションを取りながら、工事の進捗を確認し、品質を保ちつつコストを抑えるための計画を立てます。さらに、安全に工事を進めるための対策も考えなければなりません。これらの業務を効率よくこなすためには、マルチタスクが得意で、状況に応じて柔軟に対応できる要領の良さが不可欠です。

機械や技術が好きな人

電気工事施工管理技士としての仕事は、機械や機械が好きな人にとって非常に魅力的です。インフラを維持するための技術は、人類のこれまでの叡智の結晶であり、その中心に位置するのが電気です。電気は現代社会において欠かすことのできないインフラであり、私たちの生活を支える生命線の一つと言えるでしょう。

ものづくりや新技術に興味がある人にとって、電気工事施工管理技士として、自らの手で設計し、現場の作業員と共にそれを形に変えていくプロセスには代えがたい喜びを感じられる仕事です。

さらに、近年ではスマートシティの構築や、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー技術の発展により、最新の技術を現場に取り入れていく事が求められています。

電気工事施工管理技士は、これらの最新技術を駆使して、現場に新しい価値をもたらす役割を担っています。技術の進化とともに、電気工事施工管理技士の仕事も進化し続けており、意欲的に学習していきたい人にとって、常に新しい挑戦と成長の機会が広がっています。

人間関係の構築が得意な人

施工管理の業務は、発注者やゼネコン、そして現場の作業員との連携が不可欠であり、これらの関係者との良好な関係を築くこと必要があります。

人とのコミュニケーションが得意で、人間関係を構築することに喜びを感じられることは、電気工事施工管理技士の重要な資質です。良好な人間関係を築くことで、現場の作業がスムーズに進行し、トラブルを未然に防ぐことができます。

電気工事施工管理技士の仕事は、技術的な側面だけでなく、人間関係の構築にも優れた能力が求められる職種です。

気負いすぎない人

電気工事施工管理技士として長く仕事を続けていくためには、気負いすぎないことも重要です。施工管理の現場では、どんなに注意深く作業を進めてもミスは避けられないことがあります。ミスをした時、大切なのはミスを引きずらず、迅速に対応し、心理的にも切り替えていく能力です。

もちろん、電気工事施工管理技士の仕事は責任が重く、常に様々な点に注意を払いながら作業を進める必要があります。しかし、神経質になりすぎると、メンタルの負担が増大し、長期的には持続が難しくなる可能性があります。そのため、心の持ち方も技術の一つとして、適切なバランスを保つことが重要です。

まとめ

ここまで、電気工事施工管理技士の仕事内容や、資格取得の試験内容、勉強方法、合格率、キャリアプランの選択肢、電気工事施工管理技士がやめておけと言われる理由、向いている人の特徴などについて見てきました。

電気工事の需要は現在右肩上がりで伸び続けており、今後も需要が増えていくことが予想されています。

電気工事施工管理技士は資格の取得からその後の業務においても決して楽な仕事ではないですが、インフラを支える、需要が旺盛な業界で有るため、手に職をつけ、社会に貢献し続けられるとても有意義な仕事であると言えるでしょう。