施工管理士の仕事内容とは？向いている人の特徴もわかりやすく解説

施工管理士は、建築物やインフラの構築における重要な役割を担う仕事です。

社会的にも重要な仕事ですが、具体的な仕事内容については分からない人も多いのではないでしょうか？この記事では、施工管理士の仕事内容や向いている人の特徴について説明します。一日の流れについても説明するため、業務内容がイメージしやすくなっています。

施工管理士の仕事内容をわかりやすく解説

施工管理士とは、建設工事や土木工事などにおける工事の工程管理や品質管理、安全管理、原価管理を担当し現場全体の流れをスムーズに進める役割を担っています。

また工程管理、品質管理、安全管理、原価管理は4大管理と呼ばれていて、プロジェクト全体の成功の鍵を握っています。

工程管理

工程管理はプロジェクトの人員、作業の手順を整えて建設物の完成期限までに工事が進行するように管理することです。

建設工事では天候不良や、機材の発注が遅れるなどトラブルが頻繁に起こります。工程管理を行っていないと、納期に建設物を完成させられず、クライアントに大きな損害を与えてしまいます。また資材搬入のタイミングなどを誤った場合、職人が無駄な時間を過ごしてしまう可能性があるため、作業量がばらつかないように調整します。

施工管理士は工程表（ガントチャートなど）を作成し、作業タスクと今後のスケジュールを理解します。そうすることで業務が見えるようになり、正確に進捗確認を行うことができます。
工程管理は、タスクを計画、調整、監督し、PDCAを上手に回し目標を達成するために欠かせません。

品質管理

施工管理の品質管理とは、建築士が書いた図面の情報が正確に反映されて造られているかを確かめる作業のことです。図面はクライアントの依頼に基づいて作られるため、施工管理が勝手に変更することはできません。

確かめる項目は顧客の要求が満たされているかや、法的な規格が守れているか、
搬入した資材が図面と間違っていないかなどです。建物が完成してからでは手遅れなので詳細に確認します。

また、品質管理では発注書通りに正しいプロセスで工事が施工されているかを確かめるため、写真で途中経過を撮ることが重要です。工事が進むにつれて途中経過は目視できなくなるため、逐一写真に収めておく必要があります。

品質管理は、プロジェクトの最終製品が設計通り、そして安全であることを確保する重要なプロセスです。

安全管理

安全管理は、作業員（職人）の安全を守るために行います。現場では工事中に亡くなる人もいるように多くの危険が潜んでいます。例えば高所での作業や、機材が落下してくるリスク、機械上の事故などです。

施工管理の人々はそのようなリスクを回避するために様々な対策を講じます。
高所での作業の場合、以下のような安全管理が求められます。

転落防止：適切な手すり、ハーネスの使用など
物の落下防止：工具や材料の固定、ヘルメットの着用など
天候に対する対策：風速のチェック、雷雨時の作業中止などです。

安全管理は施工管理士として、高い倫理観と責任感をもって取り組む必要があります。
プロジェクトに関わる人々が安心をして働ける体制を整えることが重要です。

原価管理

原価管理は企業の利益が確保できるよう、材料費や労務費、請負業者の費用の中でも、不要な部分を減らす作業です。コストをできる限り抑え、完成度の高い建設物を作ることが求められます。もし予算が予定以上に増えてしまった場合は、会社や仕入れ先と交渉をするなどで調整を行います。

原価管理は、資源を最適に活用し、予算の遵守、透明性の確保、効率的な調達などを通じて、プロジェクトの価値を最大化する役割を果たします。

その他

最近では上記の4大管理に環境管理が加わり、施工管理の5大管理と呼ばれることが増えてきました。

環境管理は建設プロジェクトの実行中、外部環境（地域の人々や地域の土壌など）に悪影響を与えないようにすることです。工事は地域の人々の協力があってこそ成り立つものなので、施工管理士は法律や規制に基づき、周囲への騒音を出来る限り制限し地域の土壌が汚れないように施工を行います。

また、近年では資材の再利用や廃棄物を最小限にとどめることも重要視されていて、資源を有効活用することも求められています。

施工管理未経験の方が最初に行う仕事内容とは

未経験で施工管理として働く場合、どんな業務から行うのか気になるはずです。

その後徐々に、先輩の施工管理士と一緒に予算や進捗管理業務を進めていきます。

施工管理アシスタントとは

施工管理アシスタントは、建設現場での施工管理業務をサポートする役割を担い、施工管理の仕事のうち、事務作業や簡単な管理業務を分担して施工管理の補助します。

施工管理に必要な資格

また、これまでの建設業界の求人は即戦力となる経験者や有資格者が優遇されていました。

しかし、建設業界が3kと呼ばれる理由もあり、若手がなかなか建設業界への就職しないこと、現在働いていることも人手不足の問題を促進しているため、業界全体的に未経験者を歓迎する働きが増加しています。

そのため、未経験者や資格を持っていない求職者に対して、施工管理補助からスタートして経験を積んで施工管理として働いてもらいたいと考えている企業も少なくありません。

さらに、施工管理には種類があり、建設・電気・土木・造園・管・電気通信など種類があり、それぞれの施工管理で特徴が異なります。

【業種別】施工管理士の仕事内容

施工管理士の業務は業界によって違いがあります。
ここでは、業種ごとに施工管理士の仕事内容を説明します。

ゼネコンの仕事内容

ゼネコンは「General Contractor」の略で、「総合建設業者」や「主契約者」を意味します。彼らは国やデベロッパーから発注を受けて、プロジェクト全体を管理・統括する役割を持っています。
日本では鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中組のスーパーゼネコンが特に代表的です。

総合建設業者は、自社で設計、施工、研究までを一気通貫で行えるリソースを有しており、
公共事業や商業施設の建設など規模の大きい案件を受注することが多いです。

ゼネコンが行う施工管理は、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の4大管理がメインであり
工事全体を指揮します。

また各工事の専門業者（サブコン）に仕事内容を依頼し、マネジメントを行うことや
発注元と定期的にコミュニケーションをとり、現場の状況や問題点を伝えます。

サブコンの仕事内容

サブコンは、サブコントラクター（Subcontractor）の略語で、ゼネコン（ゼネラルコントラクター、一般建設業者）や他の主契約者から特定の工程や専門的な業務を委託されて行う企業や業者のことを指します。

電気工事や空調工事などを得意とするサブコン、現場の足場を組む鳶工事が得意なサブコンなどがいます。

サブコンの施工管理士は、ゼネコンから依頼された担当工事箇所の管理を行います。
サブコンの強みは専門領域に特化していることで、特定領域のスペシャリストになれることです。
特定の職能を身に着けたい人には向いてるでしょう。

ハウスメーカーの仕事内容

ハウスメーカーは住宅の設計から施工、アフターサービスまでを手がける企業のことで、自社の商品を販売します。

ゼネコンがデベロッパーから依頼されるのに対し、ハウスメーカーは個人客の依頼にそって施工を行います。

ハウスメーカーの施工管理士は、個人宅の着工から完成までを一気通貫で行います。
施工管理の内容はゼネコン、サブコンと大差はありませんが、規模感が小さいため
1人の施工管理士が複数の現場を担当することが多いです。

プラントの仕事内容

「プラント」とは、工業用の大規模な施設や設備のことを指します。日常生活で使用するさまざまな製品やエネルギーを生産するための施設です。プラントには化学プラントや石油プラント、食品プラントなどがあります。

プラント施工管理では、プラントの設計や施工、検査を行います。

プラント施工管理では4大管理の中でも安全管理と予算管理が特に重要だと言われています。

安全管理が重要な理由は、プラント建設は大規模な機器や化学反応を扱うことが多く大きな事故のリスクが高いからです。そのためプラントに対する、専門知識の理解が求められます。

予算管理も重要です。プラント建設は工事一つでかかる費用が数百億円規模と大きく、できる限り無駄なコストを下げる必要があるためです。

プラント施工管理では扱う規模や専門性が求められるため、全国の平均年収が443万円に対して
平均が606.2万円と高額です。

参考:職業情報提供サイト jobtag プラント設計技術者

施工管理士に向いている人

続いて、施工管理士に向いている人についての説明を行います。
施工管理士に就職や、転職を考えている方はぜひご覧になってください。

コミュニケーション能力が優れている

施工管理士は、発注者、作業員、外部業者、行政など多くの利害関係者との連携や調整が求められます。

また現場では、年上の職人に対して作業工程の指示を行うことが多くあります。
そのため、年上の人にも物事をはっきりと分かりやすく伝える必要があります。

現場全体の雰囲気は施工管理士と職人の信頼関係で構築されるため、コミュニケーション能力は重要です。

細部にも気が配れる

大勢の人とコミュニケーションをとる反面、細部にも気を配る必要があります。

工事現場には常に危険が溢れているので、安全管理で現場のリスクを取り除くことや
工程管理の仕事で細やかにKPIを設定するなど地道な作業もとても多いです。

全体を俯瞰で見つつ、身近な変化に気づくことが必要です。

体力がある

会社によって違いはありますが
施工管理の1日の業務時間は、一般に朝8時から始まり夜の19時～20時前後に終わると言われています。

事務所で行うデスクワークと、現場の巡回業務の両方を行っているため
どうしても稼働時間が長めになってしまいます。

そのうえ現場は夏は暑く、冬は寒いので体力がないとやっていくのは厳しいです。
逆に体力に自信があって職人とのコミュニケーションが好きな人は、活き活きと働けて楽しい仕事でしょう。

柔軟性がある

建設現場のプロジェクトは、当初の工程通りに進まないことが多くあります。
例えば、天候が不安定で工事が中止になる、資材の発注が予定より遅れる、人員が思ったよりも足りないなどは日常茶飯事です。

変動が大きな環境でも、柔軟に対処し調整していく力が求められます。
その場で最も最適な答えを考え、マネジメントをしていく力が大切です。

施工管理士に向いていない人

施工管理は向き不向きがはっきりと分かれる仕事です。
ここではどのような人が施工管理に向いていないかを解説します。

チームワークが不得意

先述の通り、施工管理士は多くの人とコミュニケーションをとることを求められており、
プロジェクトチームで連携をとる事が重要です。

職人が作業しやすいように日々声を掛け、全体でモチベーションを高められるように工夫していきたいです。そのため人と話すことが嫌いな人や個人主義的な人はあまり向いていません。

生真面目すぎる

生真面目すぎる人も向いていないでしょう。

なぜならそのような人は、関わる人全員の意見を聞こうとしてしまい、
業務上の責任やプレッシャーを全部抱え込んでしまいやすいからです。

気負いすぎてしまうと、ストレスを抱えてしまうため
人に相談し、不可能なものははっきりと伝えられるようにしたいです。

数字に弱い

施工管理士は思った以上に数字を使う場面が多いです。

現場監督として、工事数量の計算を行う機会や
原価計算をする場面が多くあるため、計算力が意外に必要です。

ただ数字の計算は経験によって慣れることも多いため
現状で数字に弱いからと言って必ずしも敬遠する必要もないでしょう。

施工管理士のやりがい

施工管理士は、建築や土木のプロジェクト全体を指揮するため、日々の業務は多忙を極めることもありますが、それだけに得られる達成感ややりがいも大きいです。以下、施工管理士としてのやりがいについて詳しく解説します。

プロジェクトの成果を直接感じられる

施工管理士は、プロジェクト全体の進行を監督し、その成功を手助けします。計画から完成までの各ステップでの成功は、直接的な成果として現れ、その過程での苦労が実を結んだ瞬間には大きな喜びを感じることができます。

何ヶ月もの時間をかけて完成したビルや橋、道路などを見るとき、自分の手掛けたプロジェクトとしての誇りを感じることができます。

社会貢献性がとても高いこと

施工管理の業務は世の中からのニーズがとても高く、社会貢献性を強く感じることができます。

例えば、土木施工管理の場合、橋やトンネル、ダムなどのインフラ建設や整備を行うことがあります。これらのインフラは日常の生活や経済活動の基盤となるものであり、それを安全かつ効率的に機能させることは、社会全体の安全と安心を守る役割を果たしています。

自分自身が施工した建物が人々に利用されることで、大きな喜びをかんじられます。

高い給与を手に入れられる

施工管理士は高い専門知識や体力が必要な分、給与水準も高いことが多いです。

厚労省の統計によると、建築施工管理技術者の場合620.4万で土木施工管理技術者の場合は573.2万円です。日本の平均年収が443万円であることを考慮すれば、高水準です。

また施工管理技士1級などの資格を持っている場合、年収水準が上がる特徴があります。
これは、特定建設業者が元請として外注総額4500万円以上の場合、施工管理技士1級を取得している監理技術者が必要という法律があるため、有資格者はプロジェクト問わず参加できるという点で優遇がされやすいです。

参考：職業情報提供サイト　jobtag 建築施工管理技術者

施工管理士の1日の流れイメージ

ここからは施工管理士の1日の流れについて、表形式で説明します。
働くイメージが湧くものなのでぜひご覧ください。

一般的な施工管理技士の場合

若手施工管理技士の場合

施工管理士の働き方について

ここまで施工管理として働くイメージを掴んでもらいました。
下記では、入社後の働き方について説明します。

未経験でも活躍できるか

施工管理では簡単な仕事ではありませんが、未経験からのチャレンジも可能な業界です。

未経験からでもチャレンジできる理由は、建設業界の慢性的に人不足が理由です。
建設業の就業者数は1997年時点で約685万人でしたが、現在では約485万人で200万人減少しています。加えて、60歳以上の労働者が全体の25％以上を占め、高齢化が止まりません。一方で建設需要自体は減っているわけではなく、大規模な再開発や交通インフラの拡充も行われています。

そのため多くの企業が人不足を感じて、未経験者であっても積極採用を行っています。

どのようなキャリアパスがあるか

施工管理の分野は、住宅、商業施設、道路、橋梁など多岐にわたるプロジェクトを手がける機会があります。これによって、多様な技術や管理方法、現場の対応スキルなどを学ぶことができ、実践的な経験を積み重ねることが可能です。

このような施工管理の経験と実績を積み重ね、資格を取得する事で、監理技術者や主任技術者と言った、施工管理職における現場責任者の立ち位置であったり、本部の管理職への昇進の道が開かれます。

監理技術者であれば担当できるプロジェクトの幅も広いため、年収面での待遇もよい傾向があります。

残業について

施工管理は朝から晩まで現場と事務所を往復し、とても忙しい業務だと言われています。

一般的に月の残業時間は40時間～50時間だと言われており、決して楽な仕事ではありません。
建設業は全体的に労働時間が長い傾向があります。日本建設業連合会によると全産業平均が1783時間に対して、建設業は2102時間と他産業より、300時間以上も労働時間が長いです。

参考:日本建設業連合会　建設業の週休二日を実現します

働き方改革について

建設業界の残業時間が他業界と比べて長いことから、2024年4月から働き方改革関連法案として残業規制が設けられることになりました。

他業界の場合、1日８時間、1週間で40時間を超える労働者に対しては36協定を結ぶ必要がありますが、建設業界はいくら残業しようが協定を結ぶ必要がありませんでした。

しかし、2024年からは36協定を締結し、所轄の労働局に申請する必要があります。
また労働時間に上限が加わることになったため、無制限に残業をさせることが不可能になりました。

そのため、今後は建設業界並びに施工管理の働き方が変わり、残業が少なくなる可能性もあるでしょう。

参考:国土交通省 建設業における働き方改革

まとめ

この記事では施工管理士の仕事内容を網羅的に説明し、向いている人と向いていない人についても解説しました。

施工管理は、建築や土木プロジェクトの品質、安全、予算、そしてスケジュールを監督・管理する中心的な役割を担います。

これには、計画的な思考、細部への注意力、そして多様な関係者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。向いている人は、チームでの協働を重視し、変わりゆく現場の状況に柔軟に対応できる能力を持つ人です。

この仕事を通じて、具体的な建築物や施設が社会に形として残る達成感を得られるため、社会的な寄与やプロジェクトの成功を直接的に感じることができるのが施工管理の魅力と言えるでしょう。