建設コンサルタントは幅広い知識や技術が求められる職業であり、課題解決力・プレゼン力、コミュニケーション力についても高いレベルが要求されます。
現在、組織・プロジェクトの課題の追求、原因の解明を行い実際に解決策を提示するコンサルタントという職は注目されつつあり、建設コンサルタントを志望する方も増加傾向にあります。
品質の管理やコスト管理、環境評価などの管理業務に加え、建設技術や材料・規制基準に関する専門的な知識が求められる建設コンサルタントには、向いている人、不向きな人には明確な特徴があります。
社会インフラ整備事業が主な活躍の場であるため、仕事に対する社会的な意義も感じやすく、スケール感の大きな仕事を自らの手で動かしていくことへのやりがいは他の職業にはないものとなります。
建設コンサルタントとは?
建設コンサルタントは主に地方自治体や行政などから委託を受け、道路や港湾、空港、河川やダムといった社会インフラの整備事業を成功させるためのサービスを提供する仕事です。
建設プロジェクトの発注者と同じ目線に立ち、専門的な助言によるサポートを行ったり、建設プロジェクト全体の予算やスケジュールについてマネジメントを行うなどの業務を担っています。
建設コンサルタントの仕事内容
建設コンサルタントの仕事内容は多岐にわたります。
建設プロジェクトの計画、設計や建設に関する技術的なアドバイスと課題の解決、プロジェクト遂行のための法的な要件や規制を遵守するサポートがあります。
さらに、プロジェクト全体の予算やスケジュールの管理、万が一の不正や不備をなくすための品質管理、建設プロジェクトに携わる関係者との協力体制の確立などが主な業務内容です。
建設プロジェクトの計画
建設コンサルタントは人々の生活に欠かせないインフラを重点的に担当し、河川やダムなどの整備事業を行います。
河川・ダムなどの社会インフラ整備事業を行う際には地域ごとで、気候や天候、洪水や地震・津波などの災害リスクを考慮して計画立てる必要があります。
建設プロジェクト全体の計画を立案するにあたっては、現地測量の実施や地域住民の意向を聴取し、需要予測調査などを行った結果から基本計画や設計案を発注者に提案しています。
技術的なアドバイス
建設プロジェクトの設計段階では、設計者やエンジニアと連携して技術的な助言を行います。
最新の建設技術や維持管理のための技術提案により、建造物が長期にわたって安全に運用されるように最適な設計を行う、あるいはサポートをしていきます。
低炭素コンクリートの使用検討や、中層以上の木造建築でも耐火性能を確保できる工法を取り入れるなどの最新技術にも精通している必要があります。
プロジェクト全体の生産性向上や新しい街づくりにおいてはIT分野でもあるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の提案も期待されるほか、防災・減災といった自然災害などから人の命を守るための計画を立案するための知識も求められます。
※DX(デジタルトランスフォーメーション):ITやデジタル技術の活用によってビジネスモデルを変革し、競争力を高めていくこと
法的サポート
建設プロジェクトを進めるためには、建築基準法をはじめとする様々な法律を遵守する必要があります。
市町村ごとの条例や建設される施設・用途によっても適用される法律が異なるため、法律違反のない健全な建設プロジェクトを遂行するための確認を入念に行います。
土砂に関連する法律として「土砂災害防止法」があり、この法律は平成11年に広島県呉市で発生した大規模な土砂災害を背景に、平成12年4月27日に法律が成立し、同年5月8日に公布され、令和3年の改正を含めて計5回の法律改正がされています。
プロジェクト全体の管理
建設コンサルタントはプロジェクト全体の予算やスケジュールを管理する業務も担っています。
社会インフラの整備事業は税金が投入される公共事業であるため、期限や予算の管理も民間と比べて厳しく精査されることから、年度末などの区切りでは業務が多忙になることも多々あります。
不正・不備をなくすための品質管理
建設工事の不正・不備は直接的に人の命を危険にさらす可能性があり、設計・施工ともに技術的な基準が厳格に定められています。
建設プロジェクトの設計、施工ともにその品質が適切に管理されるように品質管理の実行プロセスを構築し実行します。
関係者との協力体制の確立
建設プロジェクトは調査・計画・設計・施工・運用といった大きな流れの中で事業を進捗させていきます。
建設コンサルタントはそれぞれの専門会社との協力関係を構築し、建設プロジェクトが円滑に進められるようにマネジメントを行います。
技術的なアドバイスの他、予算の管理や工程の管理などにも影響が及ぶために、高いコミュニケーション能力が必要とされます。
施工段階に入る前には、使用する材料のメーカーなどとも打合せを行うために、施工方法だけの知識のみならず、建造物の詳細に至るまでの知識が求められることになります。
建設コンサルタントが向いている人
建設コンサルタントが向いている人は、課題解決力がある人、探求心がある人、モノ作りにやりがいを感じる人、周囲との協調ができる人、などが挙げられます。
社会インフラの整備事業はそのほとんどが行政や地方自治体がクライアントとなるため、2月や3月といった年度末が仕事の納期となりやすい傾向にあるため、納期が近くなるにつれて業務量が多くなるケースがあります。
課題解決力がある人
建設コンサルタントはクライアントからの要求事項や、建設プロジェクトにおける問題点を洗い出し、その解決策を技術的・法的な根拠に基づき提案する必要があります。
ここでいう課題解決力というのは元々ある課題に対して解決策を用意することだけではなく、クライアントが予期していない隠された問題点にも着目できるかが重要となります。
例えばクライアントから示された仕様を元に設計を行った場合に、CO2排出量や電気使用量、メンテナンス費用といったランニングコストに関連する内容が一般的な建造物よりも高くなる可能性を考え、調査と比較を行い、具体的な低減策をアドバイスができるといった問題意識を常に持てる人は建設コンサルタントに向いているといえます。
探求心のある人
建設コンサルタントに向いている人は、探求心のある人です。
技術的なアドバイスを行うためには建設業界の最新動向を追いかけるだけではなく、IT分野などの他の領域にも一定の知見が必要です。
社会インフラ整備事業はダムや空港などの大まかなジャンルに区分けすることはできますが、地域の特性や将来性なども考慮した提案をしなければなりません。
そのためにも常にさまざまな分野の勉強が必要です。
モノ作りにやりがいを感じる人
建設コンサルタントの主な活躍の場は社会インフラ整備事業となります。
何もなかった土地に建造物を構築していき、最終的には人々の生活を支えるインフラとして長い年月の間、使用されていきます。
このような社会的にも責任のあるモノ作りにやりがいを感じることができる人は、建設コンサルタントに向いている人といえます。
周囲との協調ができる人
建設コンサルタントの仕事ではクライアントからの要求に対応し、直接のアドバイスをするだけではなく、建設プロジェクトに関係する様々な専門会社とコミュニケーションをとりながら業務を遂行していきます。
建設プロジェクト全体の管理を行う上でも、関係者との協調関係を築きながら仕事を進められることは重要なことです。
クライアントだけではなく周囲との協調ができる人は建設コンサルタントに向いているといえます。
業務過多な環境でも粘り強く仕事ができる人
建設コンサルタントの仕事はクライアントが行政や地方自治体となるケースが多く、仕事の納期は2月や3月に集中する傾向があります。
そのような労働環境では残業が多くなり、業務過多な働き方を求められることもあります。
建設コンサルタント業界では、20代から30代の若い技術者の離職が多いことを課題として挙げており、業界団体はその現状を打開するための施策を令和5年度建設コンサルタント白書に解説しています。
ワークライフバランスにおいては課題のある業界ですが、このような労働環境においても粘り強く仕事ができる人は建設コンサルタントに向いているといえます。
建設コンサルタントに向いていない人
建設コンサルタントの仕事はクライアントに提案、アドバイスを行うことを主な業務としています。
変化が少ない定型の仕事をしたい人や、周囲との協調を好まず黙々と仕事に打ち込みたい人は不向きな職業です。
また、社会インフラ整備事業は全国各地で展開されています。
担当する建設プロジェクトによっては長期出張を必要とする場合もあるため、決められたオフィスなどの一つの場所に長期間とどまって仕事したいと思う人は不向きな職業となります。
定型の仕事をしたい人
建設コンサルタントは建設プロジェクトを成功に導くために幅広い分野の知見が求められ、最新の技術を勉強しながらクライアントに提案をしなければなりません。
一度の経験がその後の業務に活かされることも当然ありますが、インフラ事業においてはその土地が抱える問題や解決すべき技術的な障害も個々に存在しているために、前例のない仕事を繰り返し第一線で挑戦し続けることになります。
日々勉強というスタンスで業務に取り組まなければなりませんので、定型の仕事をしたい人は建設コンサルタントに不向きであるといえます。
コミュニケーション能力に左右されない仕事をしたい人
建設コンサルタントの仕事の特徴の一つとして、大勢のプロジェクト関係者との協力関係を築きながら業務を遂行することがあげられます。
さらにはクライアントのニーズを的確に捉え、要求されている内容を形にする必要があります。
長期間の地方出張を許容できない人
社会インフラの整備事業は日本全国で展開されており、都市部から地方まで幅広い範囲での業務を行うことになります。
ひとつひとつの事業は短くても1年程度、長いものだと5年以上となるケースもあるため、地方で長期プロジェクトに携わることにも抵抗があり、許容できない人は建設コンサルタントに不向きであるといえます。
建設コンサルタントの給与水準
建設コンサルタントの仕事では幅広い業務を通じて高い専門性を身に着けられることができます。
このことにより専門的な職種への転職にも役立つ経歴となります。給与水準については日本人の平均年収よりも高い水準で働くことができるという魅力があります。
年収ベースでみると、リクルートサイトの建設転職ナビにおいては1,700件ほどの求人に対して約600件が年収400万円~600万円での求人(2023年12月末時点)であることから、日本人の平均年収443万円に対して高い給与水準が期待できる仕事といえます。
建設コンサルタント会社の売上高の上位に名を連ねる企業に勤める場合には平均年収は700万円から800万円といわれ、非常に高い給与水準となっています。
2023年4月号「建設コンサルタント決算ランキング2023」の売上高1位となった日本工営は610億5,800万円の売上高を記録しており、その平均年収は900万円を超えています。
参照:日本人平均年収:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」
日本工営 有価証券報告書2023年6月期(第79期)
日本工営 年収推移(IRBANK)
建設コンサルタントの将来性
建設コンサルタントの仕事は社会インフラの老朽化により修繕や改築といった内容で需要が増加することが予想されています。
一方で仕事内容の難易度が高く、業務量の平準化が困難であることから若手技術者の離職が多い状況です。
業界全体として人手不足に悩まされているものの、国土交通省への継続的な提案や、建設コンサルタンツ協会をはじめとする業界団体による働き方改革への具体的な施策も始まっており就業環境も改善されつつあります。
国や人々の生活を支えているという実感をもちながら、より高い年収を目指してキャリアを積むことができる数少ない職業ともいえますので、建設コンサルタントの仕事が向いていると感じる方はこの機会に就職先の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では建設コンサルタントとはどういった仕事を行い、建設コンサルタントに向いている人や向いていない人をそれぞれ紹介してきました。
建設コンサルタントは主に地方自治体・行政などから委託を受けて道路・港湾、空港・河川・ダムといった社会インフラの整備事業を成功させるためのサービス会社です。
技術的なアドバイスや法的サポート、プロジェクト全体の管理を行うため、周囲と協調して粘り強く取り組める人が建設コンサルタントとして働くことに向いています。
地方出張が多かったり、最新の技術を追い求められ続けるため、定型の仕事をしたい人や長期間の地方出張を許容できない人には向いていないです。