電気主任技術者とは、電気工事の専門家として、その知識と技術を活かして多岐にわたる分野で活躍する職種です。資格は1種、2種、3種と分かれ、それぞれの資格が示す技術力や責任範囲が異なります。
電気主任技術者の資格を持つことで、技術者としての信頼や責任が増し、それが年収にも反映されると言われています。
この記事では、電気主任技術者としての年収相場や資格ごとの年収差、そして年収1000万円を目指すための条件やスキルを詳細に解説します。さらに、適切な評価を受ける職場の見つけ方、そして電気主任技術者としてのキャリアパスについても説明します。
この記事は以下の方に向けて書かれています。
・電気主任技術者の年収相場を知りたい方
・現在、電気主任技術者でさらに年収を上げたい方
・電気主任技術者のキャリアパスを知りたい方
電気主任技術者とは?
電気主任技術者は、電気設備の安全と効率を確保する重要な役割を担っています。
電気主任技術者は、電気設備の設計から施工、保守に至るまでの一連の流れを管理し、その安全と効率を確保します。このような役割から、電気主任技術者は企業や組織において非常に重要な位置を占める存在となります。電気技術者試験センターによると電気主任技術者は以下のように評されています。
電気主任技術者になれば、発電所や変電所、それに工場、ビルなどの受電設備や配線など、電気設備の保安監督という仕事に従事することができます。電気主任技術者は社会的評価が高い資格と言えるでしょう。
電気設備を設けている事業主は、工事・保守や運用などの保安の監督者として、電気主任技術者を選任しなければならないことが法令で義務づけられています。 引用:一般財団法人 電気技術者試験センター「電気主任技術者って何だろう?」 |
電気主任技術者の仕事内容は以下のようになります。
点検 | 定期的に電流や電圧の記録、配線の劣化、漏電の確認などを行い異常がないか確かめる。 |
竣工検査 | 新しく設置された設備の最終確認を行う。設計図との照らし合わせ、電気機器の状況確認、絶縁耐力の確認などを行う。 |
故障対応 | 故障原因の特定、仮設設備の設置など故障時に迅速に対応し、解決を図る。 |
清掃 | 設備の安全性を保持するため、絶縁体の点検、配線の整理整頓などを行う。 |
電気主任技術者と電気工事士の違い
電気主任技術者と電気工事士は、それぞれ異なる役割と責任を持っています。
電気主任技術者は、電気工事士が行う作業を監督し、より広範囲のプロジェクト管理を行うことも求められます。
具体的には、大規模な施設の電気設備の設計や点検、安全管理などがその仕事範囲に含まれます。
一方で電気工事士は、電気設備の取り付けや修理を行う専門家です。
例えば、新築住宅の電気配線工事や、既存の設備のアップグレードなどが中心になります。
電気主任技術者は電気工事士が行う工事の品質を保証する役割を担い、設計変更時には適切なアドバイスを提供する重要な役割を果たします。
また事業所で電気事故が起こってしまった際には、責任を問われる可能性があるため、安全管理の徹底が求められます。
電気主任技術者の年収相場
電気主任技術者として働く際に重要な情報となるのが年収相場です。
年収は資格の種類や経験年数、勤務地、務める業界によっても大きく変動します。
以下では、電気主任技術者の平均年収や各種資格ごとの年収を解説します。
電気主任技術者の平均年収
厚労省のデータによると、電気技術者の平均年収は644.5万円です。
日本全体の平均年収が443万円であることを考慮すると、200万円ほど高額です。
平均年齢が42.4歳と高いこともありますが、有資格者で経験年数が長いと高い年収が得られる業界だと言えます。
参考:職業情報提供サイト jobtag 「電気技術者」
電気主任技術者1種の年収
資格ごとに年収をまとめた統計があるわけではないですが、
一般に電気主任技術者1種の資格を持つ人は、年収500万円から900万円程度の年収レンジだと言われています。
特に発電所や電力会社の求人では、800万円~1000万円程度の求人も見られます。
電気主任技術者1種は電気系の資格でもトップクラスに難易度が高く、1000時間以上の勉強時間が必要だと言われています。
そのうえ、資格を持っているだけではなく、業務上の経験も大きく求められる傾向にあるため、努力量に見合った高い年収が期待できます。
電気主任技術者2種の年収
電気主任技術者2種の資格を持つ人は、一般に年収500万円から750万円程度の範囲だと言われています。
電気主任技術者2種は1種ほど年収が高いわけではありませんが、 500万円後半を超える年収が提示される傾向にあります。中には大手メーカーの工場勤務の求人では、契約社員でも650万円以上の年収が見込めることもあります。
2種の場合も高い専門知識が求められるため、経験とともに年収が上昇する可能性があります。
電気主任技術者3種の年収
電気主任技術者を3種の資格を持つ人は、年収350万円から500万円の範囲で求人が多く見られます。平均年収は450万円前後だと言われています。
電気主任技術者3種は電気資格の中では入門レベルとされることが多く、新卒や20代で電気主任技術者経験を目指す場合は、まずはこちらの習得を目指します。
電気主任技術者は年収1000万を目指せる?
電気主任技術者として年収1000万円を目指すことは、一定の条件下で実現可能な目標です。
特に第1種電気主任技術者の資格を持つ技術者は、その可能性が格段に高まります。
以下では、どのような評価基準があり、どのような特徴やスキルを持つ技術者が1000万円の年収を目指せるのかを詳しく解説します。
1000万円を目指せるかどうかの評価基準
評価基準としては、大規模プロジェクトのマネジメント経験や幹部候補としての勤務経験が重要視されます。これらの経験を持つ技術者は、企業から高い評価を受けやすく、それに伴い年収も上昇する傾向にあります。
特に、プラント施設やバイオマス発電所などに転職する場合、大規模なプロジェクトに携わることが多く、そのような環境では年収1000万円以上が狙えます。
また、大規模プロジェクトのマネジメント経験や幹部候補としての経験がある場合も高く評価がされやすいです。
それ以外の場合だと、フリーランスとして独立して案件を受託し、年収1000万円を狙う方法があります。個人の経験や、案件を振ってもらうクライアントが充実している場合は、会社員より高い収入が期待できる分、案件を獲得する力が求められます。
電気主任技術者の転職で年収を上げるには?
電気主任技術者の転職市場は現在、人手不足が進行しており、
有資格者や大きなプロジェクト経験がある人などは年収アップのチャンスとなっています。
では、どのようにして年収を上げることが可能なのでしょうか。
以下で詳しく説明します。
電気主任技術者1種の資格を習得する
先述のとおり、電気主任技術者は持っている資格のランクにより大きく給与水準が変化します。
電気主任技術者の資格は、第一種、第二種、第三種の3つのレベルがあります。
これらの中で最も高い認定を受けることができるのが第一種電気主任技術者であり、これにより事業用の全ての電気工作物の作業を行う権限が与えられます。
第一種電気主任技術者は、高圧変電所や、再生可能エネルギーなどより大規模なプロジェクトに参画できるため、年収も上がりやすいといえます。
転職市場の動向を把握する
電気主任技術者は人手不足となっており、多くの企業が高い年収を提示して技術者を確保しようとしています。この動向を利用して、年収アップを目指すことが可能です。
特に、プロジェクトマネジメント経験があり、第一種電気主任技術者の資格を持っているような人材は、その豊富な知識と経験を評価され、800万円~1000万円の求人が掲載されていることもあります。
市場状況を理解することで、適切なタイミングで転職活動を行うことが重要となります。
スカウト型求人サイトを活用する
求職者が応募するのではなく、特定の媒体に求職者がプロフィールを入力することで企業からオファーが貰える媒体が存在します。スカウト型サイトや逆求人サイトなどと呼ばれます。
普段の仕事をしながら転職活動を行うことは工数がかかるイメージがありますが、職務経験やスキルなどのプロフィールを掲載するだけで、オファーが来る仕組みなら時間がかかりません。
自分自身では調べ尽くせなかった優良企業を見つけられる可能性もあります。
電気主任技術者は、オファー型求人サイトを活用することで、自身のスキルと経験をアピールし、高年収を求める企業からのオファーを受ける可能性があります。
転職エージェントを活用する
転職エージェントは、電気主任技術者の市場価値を正確に評価し、最適な企業を紹介してくれる可能性があります。
中でも業界特化型のエージェントは、市場動向を踏まえた上で、最適な条件を提示してくれる企業を探してくれる可能性があります。求職者の求める条件や価値観と企業の採用要件を理解し、調整を行ってくれます。
転職エージェントは面接対策や志望動機のサポートなども行ってくれるため、うまく活用すれば年収アップを目指す上で非常に有効な方法となります。
適切な評価を受ける職場の見つけ方
電気主任技術者として働く際には、自身の技術力や実務経験が適切に評価される職場を見つけることが重要です。
以下では、良い職場を見つけるためのポイントと具体的な方法を解説します。
技術力の評価基準
電気主任技術者としての技術力は、職場選びにおいて重要な要素です。
企業がどのような基準で技術力を評価しているかホームページやカジュアル面談などで確認し、自身のスキルセットが求められるかどうかを見極めましょう。
例えば、特定のプロジェクト経験や資格が高く評価される企業があります。
実務経験の評価
実務経験は電気主任技術者のキャリア形成において大きなウェイトを占めます。
資格を習得したらすぐに待遇が大きく変わるわけでもないのが特徴です。
企業がどのように実務経験を評価しているかを確認し、自身の経験がマッチする企業を選びましょう。
例えば、再生可能エネルギーの事業会社である場合、太陽光発電システムの管理経験があると、高く評価される可能性があります。
教育・研修制度
電気主任技術者としてスキルアップを目指すなら、教育・研修制度が整っている企業を選ぶことが重要です。企業が提供する研修プログラムやセミナーに参加できるかどうかを確認し、自身の成長をサポートしてくれる企業を選びましょう。
電気主任技術者は資格の習得が前提の職業であるため、資格手当の付与や資格を習得するための講義や教材が整っているかなども重要です。
インプットの機会が十分に整っていて、分からないことがある場合は質問ができる体制が整っているのか、よく考慮しましょう。
企業文化と働き方
企業文化や働き方も職場選びにおいて重要な要素です。
企業のミッションやビジョンを理解し、働き方が自身の価値観やライフスタイルに合致するかどうかを確認しましょう。
例えば、ワークライフバランスを重視する企業や、技術者の意見が尊重される企業などがあります。
自分自身が重視したい「軸」と企業の価値観がマッチするかどうかを判断しましょう。
電気主任技術者のキャリアパス
電気主任技術者としてのキャリアパスは多岐にわたり、
その選択肢は非常に広がりを見せており、多様多用な勤務先を選択することができます。
また、勤務先によって電気主任技術者の仕事は異なります。
以下、いくつかの主要なキャリアパスと、それぞれの特徴です。
電力会社
電力会社では、電気主任技術者は新技術の開発や太陽光発電の大規模プロジェクトの管理などを担当することもあり、安定した高収入を見込みやすいです。
特に、再生可能エネルギーの導入など、今後のエネルギーインフラを支える重要な役割を担うことになります。
ビル管理会社
ビル管理会社では、電気主任技術者はビルの安全と快適な環境を保つための電気設備の管理や保守を主に担当します。
具体的には、大規模な商業施設やオフィスビルの電気設備の運用管理が主な仕事となり、定期的な電圧・電流の検査やトラブルが起きた場合は故障対応などを行います。
電気機器メーカー
電気機器メーカーでは、電気主任技術者は新しい製品の開発や既存製品の改善を担当します。研究開発部門での勤務や、製品の品質管理を行います。また時間とコストを効率的に抑えながら製品を開発するための設備設計など、生産管理のような仕事を行うこともあります。
建設会社
建設会社では、電気主任技術者は新しい建築物の電気設備設計を行います。大規模なプロジェクトでは、他の専門家と連携して効率的な電気設備を設計・構築する役割を担います。
官公庁
官公庁では、電気主任技術者は公共施設の電気設備管理や地域の電力インフラの整備を担当します。公共の安全と利便性を守る責任があり、地域社会に貢献する仕事が多くやりがいを感じることができるでしょう。
フリーランス
フリーランスとしては、電気主任技術者は自身のスキルと経験を活かして、様々なプロジェクトに参加することが可能です。自身でビジネスを立ち上げるなど、幅広い活動が可能となります。この道を選ぶ際には、案件先を貰うための営業力や、ネットワークが重要になります。
まとめ
電気主任技術者は、さまざまな電気設備の管理や運用を担当する専門職です。電気主任技術者は第1種から第3種までの3つのレベルがあり、それぞれのレベルで担当できる業務の範囲が異なります。
年収に関しては、資格の種類や経験、勤務先によって大きく異なります。
平均年収は約645万円とされていますが、第1種電気主任技術者の場合は500万円から900万円、場合によっては1000万円を超えることもあります。
一方で、第3種電気主任技術者の年収は350万円から500万円など資格の種別により変化が高く見られます。
また、転職を検討する際には、転職市場の動向を把握し、オファー型求人サイトや転職エージェントを活用することで、適切な評価を受ける職場を見つけることが可能です。
電気主任技術者としてのキャリアは多岐にわたり、資格や経験を活かしてさまざまな道を選ぶことができます。このような背景から、電気主任技術者は今後も引き続き需要の高い職種となりそうです。