電験の正式名称は「電気主任技術者」であり、第三種〜第一種に分類される国家資格の一つです。
中でも電験二種は、7,000V以上の特別高圧の電気設備を扱うことができ、工場や発電所、変電所などの電気主任技術者として、点検や保守・事故・故障時の対応など電力設備の保安監督を行います。
国家資格の一つである電験二種は電験三種と電験一種の中間に位置する難易度ですが、具体的にどのような難易度なのだろうか?と思われるかもしれません。
その中でも電験二種は電験三種に比べ難易度が高く、資格取得には多くの勉強時間が必要で知識が求められるのでは?と思われる方も多いかと思いますが、科目別に合否が決まるため年数を3年間かけて4科目の合格を目指すことができます。
そこで本記事では電験二種の難易度を科目別に紹介していき、年齢問わずニーズの高まりに伴う安定収入が魅力の電験二種の魅力についてもご紹介していきます。
電験二種の難易度・試験の概要と受検資格
「電験二種は難しそう。」といったイメージを持っている方や具体的にどうしていくと合格できそうかイメージできそうにないと疑問を持っている方もいらしゃると思います。
まずは、過去5年の電験二種の合格率(合格者数・科目合格者数)を見ながら、難易度について確認していきましょう。
電験二種1次試験の受験者数・合格者数・科目合格者数
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 科目合格者数 |
令和5年 | 6,318 | 1,545 | 3,442 |
令和4年 | 6,189 | 2,178 | 3,048 |
令和3年 | 5,979 | 1,539 | 2,736 |
令和2年 | 6,235 | 1,695 | 3,050 |
令和元年 | 6,915 | 1,633 | 3,388 |
電験二種1次試験の全科目合格率・科目別合格率
実施年度 | 合格率 | 科目合格率 |
令和5年 | 24.5% | 54.5% |
令和4年 | 35.2% | 49.2% |
令和3年 | 25.7% | 45.8% |
令和2年 | 27.2% | 48.9% |
令和元年 | 23.6% | 49.0% |
上記の表からも一次試験合格率は30%を切る年が多く、合格することが難しいと感じる方も多いかもしれません。
科目別試験制度とは
電験二種一次試験の結果は、理論・機械・電力・法規の4科目全てに合格する必要がありますが、一度に全ての科目に合格する必要はありません。
「理論と法規には合格したけど、電力と機械の試験には落ちてしまった。」ということもあるかもしれませんが、合格した科目が一部の場合、科目合格となり翌年・翌々年度の試験では申請するだけでその科目が免除されます。
先ほどの表のように、2人に1人が合格する試験を3年連続で合格すると良いと考えると、思っていたよりも手が届かない試験ではなさそう。と印象も変わるのではないでしょうか。
電験二種1次試験の概要
電験二種を取得するためには、1次・2次試験に合格する必要があり、一次試験における受験資格は特に必要ありません。
電験二種の一次試験では、「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目があり、午前と午後に分かれて出題されます。
午前と午後に分かれて行われ、約3時間ずつの試験時間が割り当てられています。
試験科目 | 試験内容 |
---|---|
理論 | 電磁気学の基礎、電気回路理論、電気機器の基本原理、電子工学の基本原理、制御工学の基本原理 |
電力 | 電力工学の基本概念、 電気機器の動作原理、電力計測と電力品質、電力供給と分配、電気設備の設計と保守 |
機械 | 機械工学の基本概念、機械要素と動力伝達、制御装置と制御回路、プロセス制御と計装 |
法規 | 電気設備に関する法令と規則、電気事故の予防と対策、職場安全と健康保護、環境保護とエネルギー効率 |
電験二種の一次試験において、「理論」と「機械」の科目は特に専門性が高く、対策すべき範囲が広いです。
電験二種の出題形式や受験資格について
一次試験 | 二次試験 | |
試験方式 | マークシート形式 | 記述式 |
試験会場 | 全国10ヵ所 | 全国10ヵ所 |
試験日 | 8月中旬〜下旬 | 11月上旬〜中旬 |
受検資格 | 特になし | 一次試験の合格 |
第二種電気主任技術者試験(電験二種)は、電気関連の資格試験の中でも難易度が高いとされています。
電験二種試験は電気工事士としての基本的な知識を測るものであり、電気工学の幅広い分野にわたる内容を網羅する必要があります。
電気回路、電力工学、電子工学、電磁気学、安全規制など、広範な知識を身につけることが必要です。
さらに、試験には高度な数学と理論的な知識も含まれるため、複雑な計算や電気回路の解析、電力伝達の理論などが出題されます。
電験二種を合格するために必要な勉強時間はどのくらい?
電気主任技術者の資格を所有していないけど電気工事に関わる会社で働いている会社で働いている方や、全く知識がない方など個人の背景にもよりますが、一般的に電験二種の合格には600時間ほど必要になるとされています。
電験二種2次試験について
電験二種の2次試験では、「電力・管理」と「機械・制御」のに科目が出題され、選択方式と記述方式の試験になります。
電験二種の2次試験で問われる「電力・管理」の対策
電験二種の2次試験で問われる「電力・管理」においては、電力システムの運用や電気設備の管理に関する問題が出題されます。
発電所や変電所、送配電設備の設計・運用・保守に関する内容が含まれ、発電方式の特性比較や送電線の設計・運用方法、電力システムの安定性解析、電力需要の予測や負荷調整の方法など現場での実務に関連する内容が中心です。
2次試験の科目である「機械・制御」に比べ、システム全体のバランスや効率性を考慮した回答が求められることが多いです。
電験二種の2次試験で問われる:機械・制御の対策
「機械・制御」では、電気機器の動作原理や制御技術に関する問題が出題されるため、モーターや発電機、変圧器の特性や制御方法、パワーエレクトロニクスなど自動制御の基本的な理論が含まれます。
機械設備の効率的な運用方法や制御システムの設計や安定性解析に関する内容も試験内容に含まれ、機器の特性を踏まえた具体的な制御方法や効率的な運用方法についての記述力が必要です。
電験二種と一緒に電験三種・電験一種の資格をおさらいしよう
第三種電気主任技術者
電験三種は、出力5000キロワット以上の発電所を除く、電圧が5万ボルト未満の電気設備の工事・保守・運用に必要な資格です。
工場、ビル、商業施設、発電所、変電所などの施設が対象となります。
第二種電気主任技術者
電験二種は、電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の工事、保守、運用に必要な保安管理を行うための資格です。
対象施設は、中規模の再生可能エネルギー発電設備や大規模な工場などです。
電験二種は三種よりも取り扱える電圧がぐんと上がります。
そのため、二種の電圧に対応している施設が多いこもから、需要が高まっています。
第一種電気主任技術者
電気主任主任技術者は、大規模な施設や発電所、工場、施設管理など、ほぼすべての規模に対応することができる資格です。
管理対象になる施設は大規模なものから小規模なものまで幅広く、事業用電気工作物の工事で保安監督業務が一任されます。
電験二種を持っているとできる仕事
2種電気主任技術者の資格を持っていると、以下のことが可能になります。
中規模から小規模の施設管理
2種資格を持つことで、商業施設、工場、小規模事業所などの中規模から小規模の電気工作物の管理と監督ができるようになります。
管理とは、施設内の電気工作物に関する安全性の確保であり、電気工事士のリーダーとして電気工事を監督する役割も担います。
商業施設では照明、エレベーター、空調システムなどの電気設備を監督し、正常に動作するかどうかなどを確認します。
この点検のお陰で、火災や感電の危険を最小限に抑えることができます。
電気保安規制の遵守
電気保安規則に従い、安全な電気設備を維持することも電気主任技術者の仕事の一つです。
点検、保守、安全対策、訓練、事故対応など、様々な業務を通じて、電気工作物の安全な運用を支えます。
これにより、設備の寿命を延ばし、トラブルを予防することができます。
さらに、2種電気主任技術者は、電気設備に問題が発生した際にも迅速な対応が求められます。
このように、電気主任技術者は、電気工事の監督、安全管理だけではなく、事故の未然防止やトラブル解決など、多岐に渡る業務を担当しています。
叶えられるキャリアアップ、転職、年収について
第二種電気主任技術者資格を取得することは、電気関連業務でのキャリアアップのチャンスに繋がります。
ここでは、第二種電気主任技術者資格取得によるキャリアアップについて解説していきます。
第二種電気主任技術者の平均年収
第二種電気主任技術者の平均年収は、地域や業種によって異なりますが、比較的給与水準が高いと言えます。
一般的な平均年収は約625万円と言われています。
電気工事士は電気工作物の管理と安全性確保に関する重要な役割を担い、需要が高く高度な専門スキルを必要とするため、それに応じて給与水準も高めに設定されています。
平均年収は、経験、地域、職場の規模によって変動することがありますが、多くの場合、一貫して平均年収が高いと言えるでしょう。
第二種電気主任技術者の年収は500~720万円に分布しており、ここでは平均値である625万円と表記しています。
有資格者は転職に有利?
電験二種の資格を持っている人は、転職において非常に有利と言えるでしょう。
この資格は、電気工作物の管理や監督に関する専門知識を持っていることを証明するものものですから、電気関連の職種だけでなく、施設管理、安全管理、エネルギー関連の職種など、幅広い分野での就職チャンスに繋がります。
また、即戦力を求める企業は電験二種を持つ人材を積極的に採用しています。
保有資格の専門知識を活かすことができる電気主任技術者は転職時に有利になるでしょう。
電気主任技術者は需要が拡大している
近年、エネルギー効率の向上や持続可能なエネルギーへの転換が進むなど、電気関連の分野での需要が拡大しており、これに伴い、電気主任技術者の需要が増加しています。
さらに、近年、新たなテクノロジーの採用やエネルギー効率の向上に伴い、電気設備の複雑さが増し、高度な知識とスキルが求められています。電気主任技術者は、電気工事の専門家として不可欠な存在となっており、その需要は着実に増加しています。
したがって、この資格を持っていれば、安定した雇用が期待できるほか、転職も有利であると言えるでしょう。
電験二種は二種類の資格取得方法がある
資格取得には二種類方法があります。
一つは「実務経験+学歴による認定」。もう一つは「国家試験合格」です。
実務経験+学歴による認定を受けるパターン
学歴による認定では、特定の要件を満たすことによって資格を取得できます。
実務経験と学歴による認定方法では、試験を受けずに資格を取得できます。
実務経験による認定では、一定期間の電気関連の実務経験が必要で、
学歴による認定では、指定された教育機関においてカリキュラムに沿った電気工学や関連分野での学士または修士の学位を取得することで資格を獲得できます。
この認定方法では、必要な経験や学歴を持っていれば、試験を受けずに電験二種資格を取得できます。
この方法は試験を受けずに資格を取得したい人に向いていますが、資格要件を満たすためには実務経験や学歴が必要です。
資格の級によって、必要になる学歴や実務経験年数が違いますので、認定申請の前にしっかりと確認するようにしましょう。
国家試験に合格するパターン
認定験に実務経験が求められる一方、筆記試験においては、実務経験を直接的に必要とされません。
試験の受験資格に制限は設けられておらず、実務経験がなくても試験を受けることができます。
ただし、筆記試験は難易度が高く、合格には十分な勉強と準備が必要になります。
要するに、電気主任技術者になるためには、認定試験においては実務経験が必要ですが、筆記試験には実務経験は必要とされません。
どちらの方法を選ぶかは、ご自身の経験や目標に合わせて検討してみてください。
受験スケジュール
電気主任技術者試験は通常、年に2回実施されます。
一般的な試験のスケジュールは春季(約4月)と秋季(約10月)です。
受験者は公式なウェブサイトや主催機関から試験日程や詳細情報を追って試験に申し込みましょう。
まとめ
電気主任技術者試験は、事業用電気工作物の保安を確保するために欠かせない資格です。
高度な技術が求められる第二種電気主任技術者試験(電験二種)の合格には入念な対策が必要です。
一次試験では、基本的な理論知識と試験の流れを理解し、一般的には合格率の低い一次試験に焦点を当てることが多いです。
過去問の解答や模擬試験の受験を通じて、自己評価を行いながら着実に対策を進めましょう。
また、一次試験に合格した後に控える二次試験対策も怠らないようにしましょう。
試験内容は実務との関連性が高いため、試験合格に向けた努力が実務スキル向上にも繋がります。
第二種電気主任技術者資格を得るこは、電気主任技術者としての今後のキャリアに大きく役立つでしょう。
この記事を読んだ皆さんが、キャリアを見つめてより良い選択を考える足掛けになれば幸いです。