施工管理の仕事は、その重要性ゆえに多くの課題を抱える職種と言われています。
過酷な労働環境、体育会系の文化、業務の変動の激しさなど、日々の業務に「やばい」と感じる瞬間が少なくありません。
しかし、一方で福利厚生や給与、研修制度がしっかり整ったところや、情報発信に力を入れている企業など、良い環境での勤務が期待できる企業も少なくありません。
では、そのような「やばい」企業と「良い」企業の特徴は何か、そしてもし転職を考える際、施工管理の経験を生かしてどの業界や職種がおすすめなのか。
この記事では、これらの疑問に答え、施工管理の現場での悩みを持つ方々へ解決法を説明します。
この記事は下記のような方に向けて書かれています。
・施工管理のどこがやばいのか知りたい人
・施工管理で働いていて転職するか迷っている人
・施工管理で良い企業を見極めたい人
・施工管理以外のキャリアを考えたい人
施工管理がやばくてきついと思われる理由
施工管理は激務で社員の責任がとても重いことからネガティブな印象を抱かれることが多くあります。
建築や土木工事の現場での施工管理の役割は計り知れません。施工管理は無事にプロジェクトを完成させるための要であり、多くの責任を背負っています。しかし、「やばくてきつい」との声も少なくありません。
以下でその主な理由を詳しく解説します。
仕事量が多すぎる
施工管理は、工事の全工程を監視し、進行の管理を行うための役職です。
施工管理の日常業務は四大管理をはじめとし、非常に多岐にわたっています。
施工管理技士の業務は、施工図の確認から始まり、材料や機材の搬入手配、その後の現場作業の進行状況の確認、さらには安全確認や問題が発生した際のトラブルシューティングと、様々な業務を行います。
加えて、不定期に発生する現場の問題や突発的な変更にも対応しなければならないため、仕事の量が多いと感じる方も少なくありません。
休みが少ない
施工管理の仕事は、工事の納期を守ることが特に重要です。
納期は、施主との契約や関連企業との連携など多くの要因によって決まっているため、工事が予定通りに進まない場合、休日出勤や夜間作業が必要となることもあります。
雨などの天候に左右される作業や、機材のトラブル、人手不足など、予期せぬ事態が発生することも多いです。
これらの状況下で、納期を守るためには、休みを犠牲にすることも避けられません。ワークライフバランスを十分に取りたい人には苦しい環境でしょう。
上下関係が厳しい現場もある
建設業界は一朝一夕で仕事の知見が付くものではなく、何年もかけて先輩に細かく仕事を教えてもらい知識の習得を行います。
現場では年上の職人とのコミュニケーションが日々求められ、上下関係や礼儀が重視される現場も少なくありません。
例えば、新入社員や若手が先輩や上司に対して敬語を使うことはもちろん、現場で厳しく指摘されることや若手ということで飲み物の買い出しや用具の運搬などの雑務を任されることもあります。
この環境は、年上の懐に上手に入り込める人は楽しいかもしれませんが、体育会系の風土になじめない人にとっては大きなストレスになるでしょう。
コミュニケーションの課題が多い
施工管理の業務は、多くの関係者とのコミュニケーションが不可欠です。
設計者からの指示や変更情報、発注者との打ち合わせ、作業員や協力業者とのコミュニケーションなど、日々のやり取りが非常に多いです。
しかし、これらの関係者間での意見や情報が合わない場合、工事の遅れやミスが発生するリスクがあります。
例えば、設計者と施工管理者間での認識のズレ、または作業員同士のコミュニケーション不足など、クライアントとの認識の違いなどさまざまな原因でコミュニケーションの問題が生じることがあります。
業務上の変動が激しい
施工管理の業務は、様々な外的要因によって影響を受けます。天候の変化、材料の供給遅延、機材の故障や突発的な安全問題など、現場の状況は刻一刻と変わっていきます。
これらの変動に対応するため、施工管理者は柔軟性を持ちつつ、計画を立て直したり、新しい対策を考えたりする必要があります。
このような変動が頻繁に発生することで、予定通りに工事を進めることが難しくなる場合があり、その都度、新しい対策や計画の見直しが求められます。
また、プロジェクトごとに現場の場所と関わる人員も変化するため様々な意味で変動が多い職業です。
施工管理でやばい?とされている企業の特徴
施工管理を取り巻く環境や労働条件は、企業によって大きく異なります。
中には、働き手から「やばい」との声が上がるような企業も存在しています。
それでは、どういった特徴を持った企業が「やばい」とされるのでしょうか。ここでは、5つの主な特徴を紹介します。
土日出勤が続いている
建設現場は、工期までに必ず工事を終わらせる必要があるため、進捗が遅れてしまっている場合は、土日も働くことが求められる場面が少なくありません。
しかし、組織として毎週土日出勤が続いている場合、経営側の計画力が低く、人材が明らかに不足している可能性が高いです。また、休息が十分に取れないことで、体を壊してしまい働けなくなってしまうリスクがあります。
残業時間が月100時間を超えている
残業時間は一般的に80時間を超えると過労死ラインだと言われています。
施工管理の中には、工期に追われ続けていることや、従業員があまりにも不足しているため残業時間が100時間を超すようなブラック企業も存在します。
確かに、施工管理の仕事には、予測できないトラブルや変更が生じるため、ある程度の残業は避けられません。
しかし、月に100時間を超える残業が常態化している企業では、業務の効率性や作業の分散が上手くいっていない可能性があります。
疲労によるミスが増えるリスクや大きなストレスを抱えてしまうリスクがあるため過度な残業時間は避けたいです。
未経験にも難しい仕事を課す
施工管理の仕事は専門性が高いため、未経験者が即戦力として期待されることは珍しいです。
知識量的に新人が工程管理や、原価管理を行うことは難しいです。
そのため新人の最初は品質管理の一環として写真撮影を行うことや、危険箇所がないかパトロールすることなどがメインです。
しかしながら、未経験に難易度の高い業務を突如任せる企業も存在します。
いきなり工事の現場監督を任せることや、特定の専門知識を必要とする工程管理を押し付けられることがあります。
企業の育成体制や教育制度が不足しているため、そのような状況になると考えられます。
急な転勤がある
建設プロジェクトは全国各地で進行されるため、転勤は避けられない部分もあります。
しかし、家族やライフスタイルを考慮せず、急な転勤を求められることは、従業員のモチベーション低下やプライベートの犠牲を伴います。
予告なしに生活環境を変えさせる企業は「やばい」と言えるでしょう。
インターネット上の評判が悪い
最近では、多くの従業員が企業の評判をネット上で共有する傾向にあります。
現場社員や退職した人のリアルな声が聞ける媒体もあります。
特に施工管理の業界は外から見えにくい分、現場の実態や企業文化などの情報が重要です。
口コミを見て極端に残業時間が多いことや、インターネット上のサジェストワードで暗い単語
(やめとけ、事件など)が並んでいる場合は要注意です。
施工管理で働きやすいとされている企業の特徴
先ほどはやばい企業の特徴を紹介しました。もちろんすべての企業がブラックなわけでは決してありません。ここでは反対に施工管理の良い企業について説明します。
良い施工管理の企業を選ぶことは、プロジェクトの品質と効率性を高めるだけでなく、従業員のキャリアと生活の質にも大きく影響するため非常に重要です。
十分な年間休日が確保されている
施工管理の職場は、日常的に高い緊張感と厳格なスケジュール管理が求められる場所です。
このため、従業員が休日を確保し、身体的・精神的にリフレッシュする時間が不可欠です。
年間休日が十分に設けられている企業は、その従業員の健康やワークライフバランスを重視する姿勢を示しています。
一般に年間休日が120日以上ある場合はホワイト企業だと言われています。
また、週休二日制と完全週休二日制は異なるため注意が必要です。
週休二日制の場合は、月に1回以上2日休める週があることを指していて
完全週休二日制の場合は、毎週2日間休めることを保障しています。
自分がどのくらい休みたいかを考え、求人をチェックする必要があります。
休日は単にリラックスするだけでなく、家族や友人との関わりや趣味、自己啓発の時間としての役割も果たします。
こうした時間を通じて、従業員は新しい視点やアイディアを持ち帰ることができるため、結果的に企業にもプラスとなるため必要です。
給与水準・評価制度が整っている
報酬は、働く者の労働に対する最も直接的な評価となります。
社員が適正に評価されていると感じることができる給与水準で働くことで企業の社員のモチベーションが高い状態で維持することができより良い環境へと繋がりやすいです。
さらに明確な評価制度は、目標達成の動機づけとなり従業員の成長を後押しします。
面接の際に、どのように給料が上がるのかや評価制度をどのように取っているのか確認しましょう。
給与だけでなく、昇進の道筋やキャリアパスが明示されていることも、従業員が将来の展望を持ち、企業に長期的にコミットする要因となります。
福利厚生が充実している
福利厚生は、給与と並ぶ従業員の待遇を示すものであり、企業が従業員をどれだけ大切に思っているかのバロメーターとも言えます。
健康診断、退職金制度、育児や介護のサポートなど、多岐にわたる福利厚生が提供されている企業は、従業員の生活の各段階をサポートする意向が強いといえます。
また施工管理士の場合、資格の有無により担当できる案件が変わりキャリアに大きく影響が出るため資格習得が重要です。
優良企業の場合、資格手当をくれたり、施工管理技士試験の対策授業を内製で行ってくれることがあります。
ホームページなどの採用ページが作りこまれている
企業のホームページの質は、その企業のブランドや価値観を表す窓口となります。
デザインや情報提供の仕方、そして応募者へのメッセージなど、細部まで丁寧に作り込まれたページは、企業が真剣に新たな人材を迎え入れる意向を示しています。
ホームページをよく確認し、自分の価値観とマッチするかどうかよく確かめましょう。
施工管理から転職する前に考えておくべきこと
施工管理の職に就いている多くの方が、キャリアの途中で転職を検討することがあります。
しかしその前に、以下のポイントをじっくりと検討することが重要です。
そもそも施工管理を続けるべきか
まず、初めに施工管理を続けるべきかを検討しましょう。
仕事自体は好きだけど、会社の待遇や休みの面などで不満がある人は同業での転職を考えることが有効です。
一方、働き方そのものを変えたい人や、新たな経験やスキルをつけたいと考える人は別業界に転職することが有効でしょう。
今後、どこの市場で勝負をしたいのかをまず考えましょう。
現在の企業の状態を分析する
転職を考える前に、まず現在所属する企業の健全性や将来性を客観的に評価することが求められます。業界内での企業の位置や経営状態、そして自分の所属する部署やチームの状況などを総合的に考えてみましょう。
例えば、最新の施工技術を積極的に取り入れていて、働き方改革を推進している企業は、将来的に競争力を保つ可能性が高いでしょう。そのような企業の場合、ほんとに転職が吉となるのか検討する必要があります。
自分の市場評価を理解する
施工管理の経験やスキルは、企業やプロジェクトによって異なる価値を持つことがあります。
そのため、自分のスキルセットや経験、資格などが市場でどれだけの価値を持つのかを知ることは、転職活動の基盤となります。
具体的には、資格や経験年数、これまでの実績などを元に、自身の市場価値を見極めることが重要です。例えばそのような事項を入力すると市場での提示年収をシミュレーションしてくれるサイトもあるためぜひ活用してみましょう。
現状の年収が市場評価を大幅に下回っている場合は、転職を検討してもよいでしょう。
転職エージェントは様々な業界・業種に精通していて多くの事例を知っているため、現状の立ち位置を教えてくれます。
悩みがある場合は上司に相談する
施工管理の仕事はチームでの業務が中心となるため、上司や同僚とのコミュニケーションは非常に重要です。
もし何か業務上の悩みや不明点がある場合、そのまま転職を決意するのではなく、まずは上司や信頼できる同僚に相談してみましょう。
場合によっては、単純な誤解やコミュニケーション不足が原因での悩みもあるかもしれません。また、上司からのフィードバックやアドバイスを受けることで、新しい視点や解決策を見つける手助けとなるでしょう。
施工管理の転職におすすめの業界・職種
施工管理の経験は、多岐にわたる業界や職種での活躍の基盤となります。
ここでは施工管理以外の職に転職することを前提に、施工管理の知識やスキルが直接的に活用しやすい職を説明します。転職を検討する際の参考としていただきたいです。
営業職
施工管理者は常に現場のニーズや課題について深く理解しているため、建設業界の営業職がおすすめです。
現場でのニーズや課題だけでなく、様々な方とコミュニケーションをとる機会も多いため、リアルタイムでの情報をインプットし提供することで営業職で活かすことができます。
建設領域の営業の場合、施工現場での実際の経験を基にしたアドバイスや提案が、顧客との信頼関係を築く大きな武器となるでしょう。
他業界であっても、多様なステークホルダーとコミュニケーションを取り現場全体をマネジメントした経験が営業に活きるでしょう。
技術系公務員
施工管理者のスキルは、技術系公務員としても高く評価されます。
技術系公務員とは、建設や電気、化学などに特定の知識を持ち、その知見を活かしてインフラ整備などを行う人の事です。
技術系公務員では、施工管理者が持っている現場での技術的知識や経験が、公共事業のプロジェクトマネジメントに役立つため評価されます。具体的には、施工現場でのトラブルシューティングや品質管理のノウハウが、公共事業の適切な運営をサポートする要因となります。
不動産業者
施工管理の経験を持つ者が不動産業者に転職する場合、多くの利点があると言えます。
理由は、施工管理者は建築物の構造や品質、そして現場の動向を詳細に知っているため、不動産取引において有利な情報を提供できる点です。
具体的には、物件の価値判断やリフォームの提案など、施工管理の知識が活かせるシーンは数多く存在します。
施工管理と関係している仕事の場合、転職する場合の障壁が少ないでしょう。
ドライバー
施工管理者からドライバーに転職することはよくあります。
現場での物流管理や危機管理の経験が、ドライバーとしての業務品質を向上させる要因となるでしょう。
大型トラックドライバーは建設業界と同様、人手不足です。
免許を持っている若い人が少ないため、成果を残せば歩合給などで若いうちから稼ぎやすいです。
エンジニア
施工管理者がエンジニアとしてのキャリアを検討することも良い選択でしょう。
理由は、施工管理者の実地の経験や技術的知識が、エンジニアリングの現場での問題解決や開発業務に直結することが考えられます。
具体的には、施工管理での品質管理や設計変更の経験が、エンジニアとしての設計や開発作業に役立つ要素として活かされるでしょう。
まとめ
施工管理は、その業務の特性上、仕事量の多さや休日の少なさなど、多くの厳しい側面を持つ職種であると認識されています。
特に、体育会系の文化やコミュニケーションの課題、業務の変動性などがその原因として挙げられます。しかし、すべての施工管理の企業が厳しいわけではありません。
良い企業の特徴としては、休日が十分に確保され、給与や評価制度が整っており、福利厚生が充実している点が挙げられます。
また、施工管理からの転職を考える際には、自身のキャリアや市場価値を深く理解し、適切な業界や職種を選定することが重要です。営業職や技術系公務員、不動産業者、ドライバー、エンジニアなど、施工管理の経験を活かせる職種は多岐にわたります。施工管理という職種は、その経験と知識を多様なキャリアパスに活かすことが可能な、非常に価値のある仕事であると言えるでしょう。