先日は菊池電業社様が施工に携わった実際の工事現場に連れて行っていただきました。
複数の現場に連れて行っていただけたことで、興味があったけど見ることができなかった実際の現場を見学させていただき作業中に心がけていることや仕事のやりがい、1日のルーティンなど様々なお話を聞けて実際に電気の設備会社で働くイメージが湧きました。
今回は現場から離れ、実際に工事をする以前に必要な①積算と呼ばれる、入札時に提示する工事予算の求め方と、②実際に設計図や施工図を書くために用いるCADの使い方を教わりました。
前回は新築の事務所の施工図を見させていただきましたが、その図表がどのような工程で作られているのかを今回の研修を通して知ることができたと思います。
設計図や施工図は新築物件を建てるために必要なものとなりますが、その図面を作成するためには完成した建物をイメージし、職人さんに詳細に工事内容を伝えるために具体的な数値を記入するため、作成するためには多くの知識とミスが無いように集中力が求められる作業だと学びました。
積算が教えてくれた”現場のリアリティ”
午前中に積算について教えていただきました。
図:実際に使った設計図の一部の写真
電気工事の積算であれば、対象施設において法律が定めた技術基準に基づき電気工事会社が作成した設計図書(施工図)や施工方法を定めた契約内容に基づいて適正に費用を算出します。
公共事業の場合では一般的に公的機関が発注者となって建設業者に任せる形で施工しているため、発注者は対象の設計書を作成して、複数の業者から入札形式で金額の提示を受け最も要望に沿った見積もりを提示した会社に委託します。
こうした重要な仕事の積算の主な流れとしては、まず戸数を数えてそれらの間取りを見ることから始まります。
マンションのような部屋が多いものは部屋のタイプが同じ場合のことが多く、同じタイプのうち1つの部屋の機器や配線、スイッチなどを数えることで同じタイプの部屋が何室あるかが分かればそのタイプの部屋に係る合計の予算が計算できます。
その後カウントしたものをExcelの拾い表と呼ばれる個数と値段が計算して見やすくしたものがあるのでそれに記入することで見積もりの作成が終わります。
今回は”拾い”と呼ばれる施工図の中に書かれている必要な機材や配線を全て書き出してまとめる作業を行いました。
「スイッチ」に関しては図面内に書かれているものが何個で1つのプレートを使うのかを考えることが大切なのだと教わりました。
ある1か所に5つの「スイッチ」があるのですが、その場合にカウントするスイッチは5個で1セットということになります。
これは1つのプレートに5つのボタンがついていると考えるためです。
そうなると追加で費用を払う必要があり、それが重なると赤字につながると聞き自分の不甲斐なさにがっかりしました。
次は間違えないようにしっかりと復習します。
積算に取り組む時間は3時間ありましたが、3時間で1フロアの拾いしかできず、数えたものも少し間違えていて、積算の難しさと自分のレベルの差を痛感しました。
実際は依頼を受けてから2週間ほどで”拾い”を行い、工事費や人件費などの工事に係るすべての費用を求めて見積もりを依頼主に提示するそうです。
依頼主は複数の事務所に依頼していることが多く低い予算を提示している会社に依頼する傾向が強いため、
他社より正確にかつ低い金額を提示する必要がありとても難しい部分だと感じました。
今回の積算で一番面白かった部分としては、配線の長さを求めるところでした。
キルビメーターという道具を用いて配線の上をなぞるように機器を使うことで配線の長さを測ることが出来ます。配線の長さを考える際に以下のことを教えてもらいました。
- 曲がって配線が示されている部分は直角ととらえて測定すること、
- 配線は天井か床下を通っているため、実際にコンセントまで配線を繋げるためには天井か床下の点からコンセントを設置する高さまでの配線も考えて求める必要がある。
- 配電盤と各箇所に設置されたコンセントが施工図や設計図に詳しく書かれておらず、簡単な矢印と番号のみ記載されいている場合があり、その場合は積算する人が仮想でコンセントと配電盤の配線を考えてその長さを見積もりに加える
- Excelに拾った機器や配線を記入するときは、記号ではなく商品に関する特徴が示された規格で記入するようにする。
- 電線が複数かぶっているところに関しては1つずつ管を通しているのではなく、複数本を1つの管に入れるため数え間違えないようにする。
見積もりが決まって工事を始める段階で配線に必要な材料が異なると追加費用が掛かってしまい、機器と同様に赤字につながることもあるそうです。
照明器具や銅が多く使われている配線などは単価が高いため確実に個数をカウントする必要があることを教えていただきました。
そして平面で書かれているものを理解するだけでなく立体としても把握して考えることがとても大変で、どこの配線で電線を追加するのか、しないのかを判断することが難しかったです。
また、ユニットケーブルと呼ばれる複数の配電を1つのグループとしてまとめたブロックがある場合があり、そのブロックをまとめるためにかかった費用も考えることが求められます。
写真:実際に施工時に用いるユニットケーブル
午前中に積算に取り組んでみて設計図だけだと工事することがとても難しいと感じました。
特に配線の部分で測った人の値の差が最大で10mも値がずれていて、配電盤と各コンセントの配線がちゃんと書かれていないと人によって大きく差が出ますし、現場に出たときに職人さんから質問攻めされるであろう個所があってやはり施工図として詳しく具体的な数値や情報を入力しておくことで職人さんとうまくコミュニケーションをとることが出来るのだと感じました。
電気施工管理のスキルを磨く:CAD体験記
その後、午後からはCADの使い方を教えていただきました。
今回JW-CADというWindowsで無料で使えるCADを用いて様々な図形や実際に施工図に記入される簡単な物品の図形を作成しました。
写真:cad上で作成した設備(アプリ内の設備をまねて作りました。)
実際に設計図を書く際には、CADを用いて作成した機器同士を接続するときに全体を見渡して考えることが難しいそうです。
今回は機器同士を組み合わせて電気の流れを考えるようなことはしませんでしたが、実際は違う部屋から配線が来る場合や電気がどのように通っているのかを考えて書き込む必要があるため、ものすごく大変な作業だと感じました。
CADの主な利点としては依頼主の間取り変更や機器変更に素早く修正をかけることがあります。
CADが使われる前は手書きでおこなわれているため依頼者の要望や照明の数え間違いなどのミスで図面を訂正しないといけなくなった時、図面が少なくすぐに訂正できるような箇所であればよいのですが、
マンションのように複数回用いることがあるために図面の枚数が多く一か所訂正するとほかの図面も訂正する必要があるために莫大な時間がかかってしまいます。
コンピュータ上で操作できることで効率的に作業を進められるようになったものの、自分が作成している部品が画面いっぱいになっていて、周りから電気がどのように流れるのかや他の見えていないところから考える部分が大変だと感じました。
また、施工図に比べて設計図の方が電気工事の知識だけでなく、建築の知識も必要になるというお話を聞きました。
設計図を書くにあたって、多くが新築工事であるため、実際にコンセントの位置を慎重に確認しなければ、工事の後に本来コンセントがある場所のところが実は窓だったり、
使う電線が多い場合は先にボックスと呼ばれるたくさんの電線を1つにまとめて結合するためのものをコンクリートの中に入れるために寸法にする必要があることを教えていただきました。
設計図を読み解くにあたって、平面図だとしても二次元的に見るだけではなく立体としてとらえるだけでなく、建築に関する知識も少しあると考えやすくなるそうです。
たしかに改修工事ならもともと施工図があるため、壁紙やライトを取りきった空間でどこにコンセントや配線を設置するのかを職人さんと話して決めることもできると思いました。
菊池電業社様の皆様、今回は貴重な経験の場を下さり、誠にありがとうございます
今回の研修では、菊池電業社様の社員の皆様が総出で現場に見学に連れて行って下さり、経営陣の皆様も総出でとても温かく迎えて下さりました。
私のような学生一人の為にこれだけ皆様でお時間を割いて頂けたことに心から感謝しております。
菊池電業社様が現場見学や電気工事に携わる上で基礎となることをたくさん教えてくださったおかげで電気工事の世界について詳しく知ることが出来ました。
建設業界は口数少なく背中で語る職人のイメージが強かったですが、実際にお話をさせていただき気さくに話しかけて下さったり、どんな質問に対しても嫌な顔せずに笑顔で対応してくださったことが印象に残っています。
この経験も活かして、自分が将来携わる仕事を決めていきたいと思います。
菊池電業社様、今回も本当にありがとうございました!
菊池電業様でのお仕事に少しでも興味を持って頂けた方は是非こちらからお問い合わせ下さい!
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