内装施工管理は建物の建築の最終工程における内装を担う役割を担います。塗装工事や電気の取り付け、リフォーム工事など建築物の完成に近い部分の工程の施工管理を行います。
内装工事には「新装工事」と呼ばれる、0から室内の施工を担当する工事と、「改装工事」と呼ばれる、既に出来上がった室内をリフォームする工事、「修繕工事」と呼ばれる管工事や電気工事といった部分的な補修を行う工事の3種類に分類されます。
日本では現在、バブル期に建てられた建物がメンテナンス期を迎えています。そのため今後は既存の建物を解体せずに改良する改装工事や修繕工事の市場も有望だとされています。
この記事では内装施工管理の仕事内容、キャリアの形成の仕方、必要なスキルや資格、具体的にどのような工事を行うのかなどを解説していきます。下記の様な方にとって参考になる内容となっています。
内装施工管理の仕事に興味があるという人
内装施工管理の仕事が出来る会社に転職を考えている人
内装施工管理の仕事内容
まず最初に内装施工管理の仕事内容について見ていきましょう。内装施工管理の仕事は主に他の施工管理と同じく、工程管理、品質管理、原価管理、安全管理という四大管理を行います。
工程管理
工程管理は施主と合意した工期に間に合わせる為のスケジュール管理の業務です。工事には施主、資材会社、職人など様々な利害関係者が関与しています。
各協力会社が稼働出来るスケジュール感の調整や、それに伴った資材の搬入の時期等も含め、様々な調整を行う必要があります。
内装工事は工期が3ヶ月程度と短期間で設定されており、タイトなスケジュールとなっているケースが多いです。
品質管理
品質管理では施主との合意内容や、設備内の規定、国の定める規定に則って工事が進むよう管理する必要があります。
現場巡視し、作業工程の写真を撮影し、施主に進捗の報告をしたり、作業員に対して品質基準に関する指示を出しながら基準に則った工事を進めていきます。
特に内装施工は施主が直接目にする部分の工事が多く、些細な施工不良でもトラブルに発展するリスクが有るため、品質管理は慎重に行っていく必要があります。
原価管理
原価管理では工事費用を予算の範囲内に治める為の調整が必要になります。内装工事では営業が案件を取ってきた際に施主と工事費用についても合意されているケースが一般的です。施工管理者は決められた予算の中で資材の選定や人件費の計算、施工方法の調整を行う必要があります。
安全管理
安全管理では施工工程における作業員の安全を守る為の管理になります。建設業界は全業界で見ても労災事故が多いです。
特に内装工事では天井の工事や、電気器具の使用など、高所での作業も多い為、しっかりと安全管理を行う必要があります。
朝礼でヘルメットの着用や、当日の実施るす工事における危険な箇所の洗い出しなどを行って行い、現場全体の安全意識を持たせることが重要です。
資材発注
内装施工管理では、細かな作業も多く、利用する資材の種類も多くなります。そのため、施工管理者は資材に関する幅広い知識が求められます。施主や職人とも相談しながら、予算の範囲内に収まる形で最適な資材を発注します。
また、内装施工は屋内で行われることが多く、搬入スペースが狭くなりやすいため、工事のスケジュールを見ながら搬入が行える資材の量についても調整していく必要があります。
内装施工管理の仕事の1日の流れ
内装施工管理の1日の流れの例を以下にご紹介します。
8:00~9:00 | 現場入・朝礼の実施 |
9:00~12:00 | 現場巡回 |
12:00~13:00 | 昼休憩 |
13:00~17:00 | 資材会社や施主との打ち合わせ、現場管理業務 |
17:00~19:00 | 現場終了・事務所に戻り安全書類の作成や資材発注、図面の読み込み等 |
19:00 | 退勤 |
上記はあくまで一例ですが、基本的に現場巡回と事務作業、調整等の商談で構成されています。
内装施工管理がきついと言われる理由
内装施工管理は工事の最終工程を担う魅力的な仕事で有る一方、きついという声も上がっています。どのような背景でこのような声が上がっているのかについても見ていきましょう。
労働時間が長い
施工管理の仕事は全般的に労働時間の長さが問題となっております。
施主としては原価を下げる為、極力工期を短く設定したがるケースが多いです。これによって施工管理者や作業員の労働環境が逼迫されてしまう問題があります。
内装施工管理においても同様の問題があり、土日休みが出ないケースや、年休が120日に満たないケース、残業時間が80時間を超えてしまうケースなどがあり、業界としても深刻な課題となっています。
国交省は労働時間の課題に対し、働き方改革を推進すべく、雇用企業側、発注者側への啓蒙を行ったり、DX化の推進による労働生産性の改善に着手しています。
習得すべき知識の幅が広い
内装施工管理の中には軽鉄工事やボード工事、塗装工事など多岐に渡る工種が存在しています。
また、資材選定や、搬入スケジュール、作業スケジュールの設定の際にも内装工事に関する幅広い知識が欠かせません。
このように様々な工種に対してより柔軟に対応していく上で、幅広く知識を持っておくことが重要となります。
人間関係が複雑になりやすい
内装施工管理では、職人や設計者、施主、資材会社など幅広い関係者との調整業務が必要になります。
一方、各関係者の間で利害が不一致となることも多く、内装施工管理者は板挟みになりやすい立ち位置に置かれます。
そのため人間関係の問題で疲弊してしまい、きついと感じる施工管理者も少なくありません。
さらに、建設現場は幅広い年代の方が作業し、自分よりも年上の方と一緒に作業を進めることも少なくありません。
内装施工管理で役立つ資格
資格を取得することによって内装施工管理の業務の幅をより広げることが出来たり、上流から参画することが可能です。
ここからは内装施工管理に役立つ資格について紹介していきます。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、施工管理の7つの国家資格の中の、建築工事の施工管理の担当が出来る資格です。
建築施工管理技士は建設の中でも建物の建築に関わる工事の施工管理の資格です。1級と2級に分かれており、1級の資格を取得すると、4,500万円以上の工事で選任義務がある監理監督者となることが出来ます。
2級の資格では4,500万円未満の工事において選任が必要な主任技術者になることが出来ます。
建築士
建築士の資格は建物の設計や工事監理が行える資格です。建築士は1級建築士・2級建築士・木造建築士という3つに分岐しています。
資格の種類 | 設計出来る建物の大きさ | 取り扱う建造物の例 |
1級建築士 |
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2級建築士 |
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木造建築士 |
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内装施工管理の年収
内装施工管理は平均年収が全体で580万円程度となっており、施工管理全体の平均年収と比較してもそこまで大きな差はありません。
内装施工管理者は経験値や年齢、能力や保有資格など様々な変数によって年収が大きくブレる為、一概には言えません。求人サイト上のデータをもとに年収の平均値を出すと、下記のようになっております。
- 20代:250万円~700万円(平均年収400万円)
- 30代:300万円~1,000万円(平均年収570万円)
- 40代:450万円~1,100万円(平均年収640万円)
- 50代:300万円~1,100万円(平均年収650万円)
40代~50代にかけて年収のピークを迎える傾向にあります。
内装施工管理に必要なスキル
内装施工管理はビジネススキルとして様々なものが必要となります。その中でも特に重要なスキルには以下のようなものがあります。
コミュニケーション能力・関係構築能力
施工管理というと、ゼネコンや職人を始めとした工事の関係者とのコミュニケーションが重要なイメージがあるかと思います。
一方内装施工管理はより施主に近い方々とのコミュニケーションが必要となります。
住宅の内装工事であれば、実際に工事した現場に住む方が施主となるケースが多く店舗であれば経営者が集客数を最大化させる為に、内装に細かな要望を出して来ることも多いです。
内装はどうしても施主の直接目に着く箇所の工事も多い為、良い面も悪い面も目につきやすいという特徴があります。
それだけでなく、修繕工事などでは既に近隣住民が入居している場所で工事を行うことも多い為、騒音等が発生した場合にクレームに繋がりやすいです。
建築にまつわる知識とスキル
内装工事では、顧客からの要望と職人の工数として対応出来る業務量のバランスを取る必要があります。
建築の知識が乏しいと、顧客と交渉が出来なかったり、職人の言っている内容が理解出来ず、思うように意思疎通が出来ないリスクがあります。
内装デザインの概念は専門用語を用いられることも多く、現場で円滑な意思疎通ができないと作業の進捗に影響を及ぼす可能性、完成品のイメージが違うといったトラブルに生じる場合もあります。
施工管理者自身が、職人と台頭にコミュニケーションが取れるだけの専門知識を持ち、それを専門家ではない施主や顧客に対してわかりやすく説明出来る能力が身についている状態が望ましいです。
プロジェクトマネジメント能力
施工管理は四大管理と呼ばれる、品質管理、工程管理、安全管理、原価管理の4つの業務が中心となります。
工事を進める中では様々なリスクが発生するため、これらのリスクを予め察知した上で、潰していく能力が重要となります。
予め過去の工事で他の施工管理が経験した先輩たちの失敗事例を頭に入れておくことや、自分自身が経験を積みながらどの部分がトラブルになるのかを肌で理解しておくことで、危機察知能力は高まっていきます。
先読みが出来ると、予め起こりやすいトラブルとそれに対する対応策について、施主と話し合うことができ、危険を潰したり、工期遅れが起きないようにタイムマネジメントが出来ます。
安全管理においても、当日の工程の中で危険になる部分がどこかの見立てを立てることは非常に重要です。
業務全体を俯瞰できる視野の広さが現場を円滑にまわしていく上でも、職人の安全を守ること上でも重要になります。
内装施工管理としてキャリア形成していくメリット
施工管理の中でも内装工事を中心に行う内装施工管理は、他の施工管理に比べ建築基準やデザインといった部分の知見が求められ、技術的スキルと創造性の双方が求められます。
エリアを問わず洗練されたデザインの建築物の需要は常に高く、住宅といった小規模な現場からオフィスビル、商業施設など大規模な現場と幅広いです。
施工管理技士としてのスキルアップに繋がる
内装施工管理は他の建築の業種と比較しても、工種が多岐に渡ります。また施主や利用者ニーズに合わせて、利用する素材を考えていく必要もあります。
施工法も他の施工管理と比べて多様性があり、様々な技術に触れることが出来ます。
内装施工管理を経験すると、別の施工管理に転向したとしても、これまでに培われた学習経験から、より素早く知識の習得が出来る土台を作りやすいとされています。
技術だけでなく、コミュニケーション能力もつけられる
内装施工管理は施主や近隣住民とのコミュニケーションも多く、技術や知識が一流であるだけでは十分でないことも多いです。
施主とのコミュニケーションでは相手が建築の専門家で無いことも多い為、よりわかりやすく噛み砕いた説明が求められます。
現場によっては近隣住民の方から騒音などのクレームが入ることもあり、建設後に暮らす入居者の方が快適な生活のため、近隣住民の方との良好な関係も意識する必要があります。
現場では親方・監督・作業員、クライアントといった方々、現場近くで生活されている方など多くの方と仕事をしていく上でその場に応じたコミュニケーション能力が培われます。
目に見えた達成感を感じられる
内装施工管理は施主や建物の利用者が目にする部分でも有るため、施工が完了した際の達成感も大きいです。
実際に自らが作った建物に訪問した際に、プロジェクトで苦労した思い出や、職人と協力した思い出を呼び起こすことも出来ます。
何より建物の利用者が自分が作った建物によって生活が支えられたり、暮らしが豊かになっていく中で、喜びの声を直に受け取ることも出来るでしょう。
内装施工管理のプロジェクト例
内装施工管理のプロジェクトの事例としては、下記のような例があります。
飲食店舗の内装施工
飲食店は内装の良し悪しが集客の鍵を握ります。
白基調の内装は、エレガントで上品な印象を与えること・開放的な印象を与えます。
一方、黒基調の内装だと洗練さや豪華さを与えること、重厚感を与えるため圧迫感を与えます。
どのような来店客を集客していくのか、その上でどのような内装が好ましいのか、どのような素材を使えばそれが実現出来るのかなどを考えていく必要があります。
また、施主となるオーナーがどの程度の予算を使うことが出来て、どのような投資計画で費用を回収していく見立てであるのかの収支計画まで理解出来るようになると、より高いレベルで施主とコミュニケーションが取れるようになります。
クリニックの内装施工
近年の高齢化の影響で、医療ニーズは高まり続けています。
帝国データバンクのデータによるとクリニックは診療所の数が全国で約10万件有るのに対し、倒産件数はコロナ禍による医療崩壊の影響を受けた2021年でさえ、30件ほどとなっており、倒産率0.03%が極めて低いです。
そのため医師にとって開業のメリットが大きく、かつ利益も出やすい為、内装に予算を掛けられる事業者が多いです。
来訪する患者が安心感を持って過ごせる空間づくりが重要となります。
参照:帝国データバンク「医療機関の倒産同行調査(2021年)」
オフィスの内装施工
オフィスの内装は社員のモチベーションを上げる上で重要な役割を担います。
利益が出ている会社では社員のモチベーション向上の為、内装に大きな予算を掛けるケースもあります。
予算の範囲内で、社員が出社したくなる会社がどのようなものかを考えながら実現していく必要があります。
戸建住宅の内装施工管理
マイホームを持つことを目標に日々仕事に打ち込む方は非常に多く人生の中でも最も大きな買い物となってもおかしくないのが戸建住宅です。
また、住宅の工事は小規模であることが多い為、複数の現場を同時並行で監督していくことも少なくないです。
マンションのリノベーション
2023年9月に国土交通省が発表した基準時価は2年連続上昇しており、地方圏でも31年ぶりのプラスとなりました。
今後インバウンドの影響も受けながら、日本国内の地価が上がっていくことが予想されます。
そのため住宅の不動産投資も更に活気づいていく可能性が高く、マンション運用をより効率化させる為のリノベーション案件も増えていく可能性が高いです。
参照:毎日新聞「基準地価、2年連続で上昇 地方圏も31年ぶりにプラス」
内装施工管理の工種
内装施工管理と一口に言っても、様々な工種が存在しています。ここでは内装工事ではどのような工事が存在するのかを説明します。
軽鉄工事
軽鉄工事は、壁や天井の工事の下地となる金属の下地を組み立てる工事で、職人からはLGS(Light Gauge Steel)呼ばれます。
オフィスや商業施設の空間を区切るためのパーテーション壁を作るときに使用されたり、天井フレームの設置に用いられます。
ボード工事
ボード工事では、軽鉄工時で埋め込んだ格子状の鉄骨に対して、ボードを埋め込み壁や天井を作っていく工事を指します。
素材によってカビ防止になったり、防火素材となったり、遮音性の強化、アレルギー対策などの特徴があります。
クロス工事
クロス工事ではボード工事で組み立てた壁に対し、壁紙を張っていく作業です。
壁紙は利用者の目に止まりやすかったり、クロス作業中にホコリやゴミが入ってしまうと、壁に凹凸が出来てしまうなど、問題の発生原因ともなります。
そのため、他の業者と同時並行で作業を行わないように調整するなどの業務が施工管理には求められます。
塗装工事
塗装工事は壁に対し、塗料を塗っていく作業です。
最も多い物は外壁塗装などで、外観の改善や、紫外線、雨風に対する耐性の強化など、機能的な側面でも利用されます。
左官工事
モルタルや壁土、漆喰や珪藻土などを利用して、床や壁の下地と表面を塗り固める作業を行います。
「町場」と呼ばれる住宅の内壁や外壁、塀と言った小規模な工事と、「野丁場」と呼ばれる公共工事やビルやマンション、駐車場や倉庫などの床などによっても工事方法は様々で、大規模なものになればなるほど機械化も進んでいます。
建具工事
建具工事は玄関や窓などの建具を取り付ける工事です。カーテンウォールやサッシ、ドアなどの金属の取り付けや、襖、障子と言った木製の建具を取り付ける工事など様々です。
家具工事
家具工事では、家具の組み立てや取り付けなどを行います。最近ではIKEAやニトリなどでDIY家具を購入することも増えておりますが、住宅備え付けの家具などの施工は家具工事の作業の中で利用することが多いです。
金物工事
金物工事では、金属やアルミ、ステンレスを利用した工事を指します。
主な利用箇所としては、手すりや階段、フェンスなど金属で強度を高めて利用される箇所の工事が金物工事に該当します。
現地調査を通して、建物の構造理解をし、溶接で金属を加工した上で取り付けをしていく作業で、職人の技を要する工程です。
木工事
木工事は住宅の骨格部分を組み立てる作業を指します。主に木材の加工、組立、取り付けなどを行う作業で、躯体の組立や、開口部枠、押入れ、天井などと言った造作工事などが該当します。
まとめ
内装施工管理の仕事は、建築のプロジェクトにおいて最後の仕上げに近い部分の工程を担当します。そのため建物の利用者の満足度に直結している点で魅力のある仕事です。
また内装施工管理では建築にまつわる様々な知識やスキルを学習しながらも、ビジネスマンとしてのコミュニケーション能力も伸ばしていく必要があり、施工管理としての経験値も広げることが出来ます。
今後日本では、新築だけでなく、ある程度年月の経った建物のリフォームや修繕の需要も増えていくと見られており、内装施工管理者の将来性や需要は高いとされています。