建設業界は日本経済の柱の一つであり、その中心に位置するのがゼネコンの施工管理です。
この記事ではゼネコンの施工管理の仕事内容から年収、働き方に至るまで、網羅的に解説します。
また、ハウスメーカーの施工管理との違いや、スーパーゼネコンと呼ばれる企業群の特徴も説明します。
さらに、転職を考えている方向けに、必要な資格や経験、面接で重視されるポイントについても触れ、転職する際にお役立ていただける内容になっています。
この記事は以下の方に向けて書かれています。
・ゼネコンの施工管理について知りたい方
・ゼネコンの施工管理の年収や働き方を知りたい方
・ゼネコンの施工管理に転職するポイントを知りたい方
ゼネコンの施工管理とは?
ゼネコンとはゼネラルコンストラクターのことで日本語で総合建設業者を示します。
明確な定義はありませんが、一般的に「設計・施工・研究」の3つを自社内で行う会社を指すことが多いです。
施工管理士は建設現場のプロジェクトの進捗を監督し、品質と安全を確保し、予算を管理するという重要な役割を担っています。
以下では、ゼネコンの施工管理の基本的な仕事内容から、ハウスメーカーとの違い、そしてゼネコン施工管理の特徴について詳しく解説します。
そもそも施工管理の仕事内容とは?
施工管理士が担当する主要な業務は、「四大管理」として知られ、以下の4つのカテゴリーに分類されます。
工程管理
プロジェクトの進行状況を一元的に把握し、タスクの進め方や人員配置を適切に行うことで、工事がスムーズに進行するよう努めます。
建設プロジェクトは数ヶ月から数年の長期間にわたるため、計画通りに進捗するよう日々の管理が不可欠です。工事終了後すぐに建物の利用が始まるケースも多いため、遅れが生じないよう注意深く進捗を監視することが重要です。
品質管理
使用される材料や機器が設計図に準拠しているかを厳密に監視し、建築物の安全性を保証します。
金属の接合においてきちんと溶接が行われていないと、溶接箇所からひびが入ったり錆びてしまう可能性があるため、鉄骨建築においては、溶接部の品質が特に重要となります。
溶接の方法が規定に従って行われ、その品質が非破壊検査などを通じて確認されることで、安全な建築物を作ります。
安全管理
作業者の安全を第一に考え、安全な作業環境を提供することが目的です。
機器の安全確認や作業者の健康状態のモニタリングが含まれます。
また、「ヒヤリハット」事例を共有することで、安全意識を高め、事故を未然に防ぐ取り組みも行われます。若手の施工管理士は安全管理の業務からスタートすることが多いです。
原価管理
プロジェクトの予算を遵守することで、企業の利益を保護します。
これには、人件費や材料費の管理が含まれ、予算内でのプロジェクトの完了を目指します。
企業である以上、利益の確保が重要なため欠かせません。
ゼネコンの施工管理の仕事内容
ゼネコンは「General Contractor」の略で、「総合建設業者」を意味します。
ゼネコンは国やデベロッパーから一次請けで発注を受けて、プロジェクト全体を管理・統括する役割を持っています。
総合建設業者は、自社で設計、施工、研究までを一気通貫で行えるリソースを有しています。
時には公共事業や商業施設の建設など数百億円を超えるような規模の大きい案件を受注することがあります。
ゼネコンが行う施工管理は、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の4大管理がメインであり工事全体を指揮します。
ゼネコンの施工管理の特徴は各工事の専門業者に仕事内容を依頼し、現場全体のマネジメントを行うことです。
一次請け企業として、建築の設計や監督などの役割を担い、各工程やセクションごとに分割された建設プロジェクトをサブコンに委託します。
ゼネコンの監理技術者が定期的にサブコンや各工事業者の施工管理士に対して確認を行い、計画通りに進行しているかを見ます。
ゼネコンの施工管理はサブコンや下請け業者を統括し官公庁やデベロッパーの施主とも直接コミュニケーションを取るため高いマネジメント能力や調整能力が試されます。
ゼネコン施工管理とハウスメーカー施工管理の違い
ハウスメーカーもゼネコンも4大管理が中心になっており、業務自体は大きな違いはありません。
ですが、ゼネコン施工管理とハウスメーカー施工管理では取り扱うプロジェクトの規模感が異なります。
ハウスメーカーは住宅の設計〜施工、アフターサービスまでを手がける企業のことで、自社の商品を販売します。
ゼネコンがデベロッパーから依頼されるのに対し、ハウスメーカーは個人客の依頼に沿って施工を行います。
そのためゼネコンの大型プロジェクトに比べると規模が小さいことが多いです。
ハウスメーカーの施工管理士は複数現場を掛け持ちする人も多く、規模は小さいながらも裁量を持つことができ、施工管理業務の全体を経験することができます。
ゼネコン施工管理の特徴
大手ゼネコンでの施工管理業務は、大規模なプロジェクトを円滑にスケジュール通り進めるため業務が細分化されプロジェクトの一部分を担当することが多いです。
そのため、プロジェクトがスタートすると細かく振り分けられた特定の業務に集中するため、ハウスメーカーの施工管理のような工事全体を包括的に担当することは難しいです。
さらに、大手のゼネコンでは、全国支店や海外にも拠点を持っていることがあり、転勤で地方や海外のプロジェクトに配属されることもあります。
公共事業でトンネル工事やダム工事などを行う時は、地方での勤務になりやすいです。
スーパーゼネコンとは?
これまでに紹介してきたゼネコンの中でも売り上げが一兆円を超えるTOP5の企業のことをスーパーゼネコンと称することがあります。
大手ゼネコンの売り上げが4000億円を超える企業、準大手ゼネコンの売り上げが3000億円とされていることからも大きな営業をあげています。
スーパーゼネコン企業
日本のスーパーゼネコン企業は、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店のことで大手5社とも呼ばれます。
スーパーゼネコンは売り上げが1兆円を超え、従業員数が1万人前後という規模を誇ります。
これらの企業は、自社で研究開発部門や設計部門を持ち、技術力にも強みを持っています。
豊富な資金力と技術力を武器に日本の建築をけん引しています。
スーパーゼネコンは平均年収が高いことでも有名です。
有価証券報告書によると、鹿島建設の平均年収が1163万円であるように、スーパーゼネコンの平均年収は1000万円前後だと言われています。
日本全体の平均年収が443万円であることを考えると2倍以上であり、高年収だと言えます。
各企業の特徴
大林組 | 国内のゼネコンで最も売上が大きい企業として知られています。 近年では再生可能エネルギー事業に力を入れており、その分野での実績が多くあります。 |
鹿島建設 | 200を超えるグループ会社を持ち、高層ビルの建築など技術力に強みがあります。 ナレッジや豊富な事例を持つ企業です。 |
清水建設 | 多くの規模の建設を手掛け、歌舞伎座タワーなど日本文化を支える建築実績があります。 近年では女性の働き方改革を推進しています。 |
大成建設 | スーパーゼネコンで唯一非同族経営であり、海外のインフラ事業にも力を入れています。 |
竹中工務店 | 非上場企業であり、建築工事に特化しています。近年ではあべのハルカスの施工実績があります。 |
スーパーゼネコンの入社倍率
新卒の場合、一般的には100倍程度と言われています。
転職の場合も難易度は高く、ゼネコン施工管理のポジションへの競争は激しいです。
建設業界全体の傾向として、スーパーゼネコンに求職者が集中し、準大手や中堅企業は採用に苦戦する傾向にあります。そのため、スーパーゼネコン以外のゼネコンは未経験者であっても
積極採用することがあります。
ゼネコン施工管理の年収とキャリアパス
以下では、ゼネコン施工管理の年収とキャリアパスについて説明します。
ゼネコンの施工管理でキャリアを築きたい方はぜひ参考にしてください。
ゼネコン施工管理の年収
ゼネコン施工管理の年収は、企業の規模によって大きく異なります。
大手ゼネコンの場合、年収は平均で1000万円前後とされており、それに対して中小規模のゼネコンでは500万円~700万円のレンジが一般的です。
ゼネコンの施工管理の場合、ハウスメーカーやサブコンに比べて給与水準が高いことが一般に多いです。
しかし、建設業界は平均年齢が40歳を上回っていることも考慮する必要があります。
40歳以上の施工管理士はどんな建設プロジェクトの監督も担当できる、施工管理技士1級の資格を持っていることも多く、それに伴って年収が高い可能性があります。
そのため若手が必ず高い給与が得られる保証はないため
面接や説明会の機会に給与水準や評価制度について確認しておきましょう。
ゼネコン施工管理のキャリアパス
初期段階では、基本的な施工管理の業務を所長や現場関係者から学び、経験を積むことが重要です。
この段階では、施工管理技士2級を目指します。
中期段階に入ると、プロジェクトマネジメントやチームのリーダーシップなど、更なる責任と役割が増えてきます。この段階で、1級施工管理技士の資格を習得しておきたいです。
1級施工管理技士を習得した場合は、今の職場で所長施工管理士になることや
大手のゼネコンに転職すること、個人で独立して仕事を請けるなど幅広く選択肢が生まれます。
ゼネコン施工管理の働き方
ゼネコン施工管理の職場は、多くのプロジェクトを成功に導くための中核の役割を担います。
以下では、ゼネコン施工管理の働き方、1日の流れ、休日や残業時間について詳しく解説します。これからゼネコン施工管理のキャリアを目指す方や、業界に興味のある方はぜひご覧ください。
施工管理の1日
施工管理は他のサラリーマンの出勤形態とは大きく異なります。
朝は現場に早くやってきて全体を巡回します。日中は現場監督として品質管理、工程管理、安全管理、原価管理に努めます。夕方になると関係各所と会議を行い、夜になると作業所、もしくは会社で図面作成など事務作業に従事します。下記は施工管理の一日の業務フローイメージです。
施工管理士の1日イメージ表
時間 | タスク | 詳細説明 |
7:00 | 早朝の現場巡回 | 作業開始前の安全確認、進捗確認など |
7:30 | 作業者へのミーティング | その日の作業計画、安全確認の共有 |
8:00 | 作業開始の監督 | 施工の品質管理、安全管理 |
10:00 | 書類作成・連絡調整 | 進捗報告、発注業務、協力会社との連絡調整 |
12:00 | 昼食 | 現場の仲間との情報交換 |
13:00 | 午後の作業の確認 | 午後の工程確認、調整 |
15:00 | クライアント・関係者との打ち合わせ | 進捗報告、必要な調整、今後の計画確認 |
17:00 | 作業終了の確認 | 作業終了後の品質確認、安全確認、整理整頓 |
18:00 | 書類整理・報告作成 | 進捗報告、書類整理、翌日の準備 |
残業時間について
施工管理は休日出勤や残業時間が多い業界です。
特にゼネコンの施工管理は現場全体をマネジメントすることや
発注元や設計士とのすり合わせや、行政との交渉も多くあるため
特に残業時間が長いと言われています。
一般に月の残業時間は50時間~60時間程度だと言われており
工期内に終わりそうにない場合などは、休日に出勤することもあると言われています。
定時に帰宅し、休日を十分に確保したい方にとっては
働きにくい環境だと言えます。
ゼネコンの施工管理に向いている人
ゼネコンの施工管理士の役割は多岐にわたり、さざまなスキルと特性が要求される職務です。以下では、施工管理士に適した人物像を説明します。
高いコミュニケーション能力がある
作業者、クライアント、サプライヤーといった多くの関係者との連携が求められるため、コミュニケーション力が非常に重要となります。
感情を管理しながら、他者の視点を理解し、効果的な情報伝達ができる人が理想的です。
例えば、施主に無理な発注を頼まれてしまった時に、はっきり現状の状態を伝えたうえで
不可能だと伝えることなどが重要です。認識がずれていると大きな問題になりかねないからです。
リーダーシップ能力がある
現場でのリーダーとして、多方面にわたるリーダーシップ能力が求められます。
チームの動きを見守る俯瞰力、明確な指示が出せる能力、そして人材育成能力が含まれます。
年長の職人への仕事の割り振りも行うため、年上に好かれる能力も重要です。
適応力がある
現場では工期の遅れや天候不良など予期せぬ問題が頻繁に発生します。
そのため、迅速かつ冷静な対応力が必要です。時間管理能力や問題解決力も重要なスキルとなります。
予定していないことが起きても慌てず柔軟に対応することが重要です。
学び続ける意欲がある
建設業界は常に進化しており、新しい規制や法律が頻繁に導入されます。
そのうえ、施工管理士は数十年の実務経験をし
仕事をマスターしていくため、日ごろのインプットが重要です。
また、資格習得の場合も持続的な学びの意欲が求められるため
仕事時間外にも自主的な学びの時間を作ることも重要でしょう。
ゼネコンの施工管理への転職ポイント
以下では、ゼネコンの施工管理への転職における重要なポイントを詳しく解説します。資格や経験の有無、面接での注意点、そして未経験者が転職を成功させるための方法について、説明します。
必要な資格や経験
ゼネコンの施工管理への転職を考える際には、持っている資格や経験が大きなポイントとなります。
施工管理技士の資格や電気主任技術者、コンクリート診断士などの資格を持っていると、大きく評価されます。
また、建設会社やハウスメーカーでの勤務経験がある方は評価されます。
面接で重視されるポイント
経験者であれば当然、過去の職務経験や資格などが重視されます。
未経験者がゼネコンの施工管理に転職する場合は、
コミュニケーション能力、体力、そして細かな点に気が配れるかが重視されます。
現場の状況を的確に把握し、年上の懐に上手に入り込み
人望を集められるかは非常に重要です。
また、現場は夏は暑く、冬は寒いうえ階段での移動などが多いため
体力や耐久性がありそうかは見られます。
施工管理は、安全管理、品質管理、事務作業など細々とした
業務も多いため、細かい部分にも気が配れそうかも見られやすいです。
未経験者でも転職できる?
未経験者でも採用のチャンスはあります。
建設業界は生産年齢人口の労働者が少なく、人手不足で悩んでいます。建設業の就業者数は1997年時点で約685万人でしたが、現在では約485万人で200万人減少しています。加えて、60歳以上の労働者が全体の25%以上を占め、高齢化が止まりません。
特に中小規模のゼネコンでは、未経験者を積極的に採用している企業も存在します。
ただし、スーパーゼネコンの場合は、経験者や資格を持つ人材への需要が高く、転職の難易度が高いと言われています。
参考:国土交通省「2022年09月26日【全建】第5回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」 |
まとめ
ゼネコン施工管理は多岐にわたる業務と深い専門知識が求められる分野であり、範囲は広大です。本記事では、ゼネコン施工管理の基本的な仕事内容から、スーパーゼネコンの特徴や企業紹介、そして転職に関するポイントまで、幅広く解説してきました。
ゼネコン施工管理とは、建設プロジェクトを円滑に進めるための重要な役割を担っています。これには、「四大管理」が含まれ、サブコンや下請け業者とすり合わせを丁寧に行い工事現場全体のプロジェクトを管理・統括する役割を果たしています。
そのうえ、施主との丁寧なコミュニケーションも求められるため高いコミュニケーション能力やマネジメント能力を必要とします。