急速に進行するデジタル化でエネルギー需要が高まっており、これまで以上に生活にますます欠かせないインフラとしての電気とは無関係に暮らすことはできません。
家庭や社会に安定してかつ安全に電気を送り届け、万一トラブルがあった際には、迅速に対応する有資格者の存在が「電気工事士」です。
一人親方として独立をすることと自分で仕事を選べるようになったり、収入の増加が期待できることなどの魅力があります。
年収を上げる可能性がありますが、しかし収入が安定しないことも珍しくなく、一人親方の平均年収を把握し、一人親方として独立した後のキャリアステップについて理解しておきましょう。
電気工事士の年収相場
厚生労働省「令和4年度 賃金構造基本統計調査」によると、10人以上規模の事業所における電気工事士の平均年収は42.2歳で507万円ほどの相場となっています。
・平均年齢: 42.2歳
・勤続年数: 12.9年
・労働時間/月: 168時間/月
・超過労働: 16時間/月
・月額給与: 344,300円
・年間賞与: 936,300円
・平均年収: 5,067,900円
10〜99人規模の事業所に努める電気工事士の平均は464万円、100〜999人規模の事業所は481万円、1,000人以上の規模で615万円となっています。
電気工事士の年収は担当する工事がどのようなものが多いかによっても変動し、小規模な施設・店舗の工事を担当する企業に比べ、変電所・発電所などの大規模工事を担当する企業の方が平均年収が高い傾向にあります。
会社員の電気工事士の年収
電気工事の現場の規模や難易度によって、1件当たりの電気工事から工事業者が得られる報酬は大体の相場が定まっています。
都心部では工事件数が多く高層ビル・大規模商業施設など工事規模が大きくなることから平均年収が高いですが、地方では工事件数が少なく小規模な店舗・ホテルなどの改修工事を担当することが多く、都市部に比べ年収が低い傾向にあります。
初任給で比較してみても、関東・関西といった大都市圏では平均年収が20万円以上の事業所が半数以上を占めますが、地方では18万円未満となる事業所も少なくありません。
毎月2万円1年間では24万円も差が生じるため、収入面の視点においても電気工事士としてどのエリアで働くかが重要な選択です。
ただし、大規模な工事では天候や資材の供給遅延、設計の変更など複雑で遅延が発生することも少なくありません。責任感もその分重くかかってくるため、法的・規制上の課題への対応も求められます。
一人親方:電気工事士の年収
一人親方とは、従業員を雇用せずに個人もしくは家族間のみで経営している個人事業主のことを指します。
電気工事士の一人親方の働き方には一つの企業から専属で業務委託を受けている場合や、複数の企業と契約を交わしている場合もあり、多様な働き方があります。
一人親方の電気工事士は、受注した工事を担当するだけでなく契約書の作成・発行フローや交通費・燃料代などの帳簿付けなど会社員の頃にはなかった業務が発生します。
しかし、車両や工具を持ち込む場合には、一般的に平均日当は18,000円〜20,000円程度で、年収換算すると400万円〜700万円程度が相場です。
電気工事士で正社員として勤めて責任者や役職者平均年収は400万円〜600万円程度であり、電気工事士の一人親方の中には年収1,000万円以上の方もいらっしゃるため、独立すると年収が高くなる傾向にあります。
電気工事士で一人親方が向いている人について
電気工事業で一人親方になるメリットとしては、主に収入増、自由な働き方、人間関係のストレスなどが挙げられます。
それぞれ具体的に一人親方に向いてる人の詳細を見ていきましょう。
年収を上げたいと考えている
正社員の場合、どれだけ業務量が多くても給与はめったに上がることはありませんが、一人親方としての業務が順調に進めば、受注業務量に応じて年収アップにつながります。
一人親方の場合、従業員を雇わず自分だけで活動するため働いた分だけ収入になります。
さらに、自分で案件を選択でき、新築住宅やリフォームプロジェクトの電気設備提供や省エネ対策の工事を受注しながらソーラーパネルの設置・メンテナンスの需要も高まっているため、1現場で複数の受注が発生することがあります。
交渉力を身につけると一件あたりの単価を上げることもでき、独立してすぐでも会社員として働いた時の月給を越えられる可能性があります。
働き方を自分で決めたい
一人親方のメリットに働き方の自由度が高いことがあり、とにかく稼ぎたい方であればスケジュールを詰め込むこともでき、家族・趣味の時間を重視したい方は休日を多めに入れるなどできます。
職種に関係なく、会社員として働く場合は就業時間が固定され、業務によっては残業しなければいけない場合もあります。
現在の生活において、インターネット業界や太陽光発電をはじめとするエコ商品への切り替え・電気自動車普及に向けた充電施設など電気は生活に欠かすことができないインフラ設備です。
こうした背景から高い需要が続いていますが、少子高齢社会の影響と建設業界の人気が低いことから、深刻な人材不足が問題になっています。
人間関係でストレスを感じたくない
一人親方は基本的には一人で作業を実施しますが、業務内容や繁忙期などによっては、一時的に労働者を雇う必要があるかもしれません。
一方、会社員はチームで作業を行い、基本的に上司の指示に従う必要があるため、上司のやり方が間違っていても指摘しづらく、ストレスを感じることがあります。また、部下との関係にも気を遣う必要があります。上司との飲み会もよほどのことがない限り断ることはできません。
一人親方も元請や顧客との関係はありますが、正規業務以外でそこまで気を遣う必要がないため精神的な負担は少く、人間関係でストレスはあまり感じません。
年収を上げるために|電気工事士で一人親方になる注意点
前述したように一人親方のメリットがある反面、デメリットについても考慮することが大切です。次に示す注意点を認識しておきましょう。
単価の高い公共工事を担当することは難しい
電気工事の高圧電力システム、制御システム、自動化システムなどは電気工事が複雑で高度な技術を必要とされるため、単価が高くなりやすいです。
公共施設やダム・トンネルのようなインフラに関する電気設備の設置・保守・修理などの工事は規模・単価が高いですが、国や地方自治体が実施する経営審査を受ける必要があります。
建設業許可を取得しているかどうかから始まり、施工管理技士や建設業経理士、建築士などの有資格者の人数や、工事経歴等から広く判断されるため、実績があり、技術力や経営力、全てにおいて信用できる企業が選ばれます。
実績のない一人親方では信頼性が十分でなく、公共工事を担当することは厳しい状況にあります。
公共工事の場合は、特に元請、下請けの体制ができ上っているため、下請けとしての受注は可能ですが、単価の高い公共工事を担当することは難しいでしょう。
怪我や病気だと収入がなくなる
従業員として電気工事士として働く場合、怪我や病気をした際にも一定の収入が入ってきますが、一人親方の場合は収入が途絶えてしまいます。
大きな怪我や病気の場合は、治療費や入院費の出費が発生します。
さらに、電気工事士の方はビルの照明や電線の工事などから高所での作業も発生するため、日頃から細心の注意を払って業務をする必要があります。
一人親方には労災保険の特別加入が認められています。
労災に加入すれば業務中や通勤中の怪我で業務ができなくなった際の、収入や治療費の補償がされるので、独立する際は必ず加入するのが望まれます。
税務・顧客管理の業務が発生する
一人親方になると、経営面の業務も一人でこなさなければなりません。
まず、会社員時代は必要でなかった確定申告を行い、毎年自分の所得を申請しなければなりません。また、社会保険・労災保険・民間保険などの各種保険の加入手続きを自ら行う必要があります。
さらに、案件の入金や経費の清算などの金銭の管理も行わなければなりません。
他にも、営業活動やホームページ・SNS運用などの業務も発生してくるため、電気工事以外にも手間を割く時間が増えることは覚悟する必要があります。
1種もしくは2種の資格がないと依頼されない可能性が高い
電気工事士の資格は第一種と第二種の2種類があり、資格によって対応できる業務範囲が変わります。
電気工事士の資格を持っていない場合、日本において電気工事に関わる仕事を行うことは禁止されており、資格を持つ電気工事の補助作業やコンサルティングやプランニングなど限られてしまいます。
そのため、電気工事士の資格を所有していない一人親方だと、仕事を発注してもらえない可能性が高くなります。
一方、有資格者は電気に関連したノウハウやスキルを持ちあわせているため、電気設備工事に従事し上記のコンサルティングや教育・研修などの仕事も受注できます。
第二種電気工事士
一般住宅や小規模建設施設の電気工事ができ、電圧600ボルト未満の一般用電気工作物の取り扱いが可能です。具体的には、スイッチやコンセントの設置や現場で電気工事が設計通りの施工になっているかを精査できます。
照明器具の取り付けや修理・メンテナンスを担当し、最近では空調関連の案件が増加しています。
行政はこうした事故を防ぐために、これまで空調設備の必要に注力していることからも、エアコンの取り付けを行う電気工事士の需要が高まっています。
第1種に比べ小規模な工事になりますが、電気工事士に依頼する工事は多いけど人手不足によって工事が余っている状態が続いており、他の工事に比べても比較的高い単価で依頼されます。
エアコンの取り付けだけでなく、その他にも先述の照明器具に関する工事などさまざまな現場で電気関連の作業ができるため、スキル向上を考えている人は取得したい資格です。
第一種電気工事士
最大電力500キロワット未満の自家用電気工作物を扱える点が第二種電気工事士と異なり、第二種電気工事士のすべての業務が担当できます。
工場や大型ビルなどは高圧、高圧よりも高い電圧の特別電圧の工事に携わることができます。
高圧・特別電圧での工事は人々の生活を支える電力網、交通機関などインフラ関連として欠かせません。
電気工事士で一人親方にならず年収を上げる方法
前述したように、一人親方は年収は上がるけれども事故や病気で業務ができないなどのリスクがあります。
しかし、電気工事士として独立することで得られる高い報酬を希望される方が多いはずです。
ここからは、一人親方として活動する際のリスクを避けつつ高い報酬・年収を狙う方法を紹介していきます。
周辺資格を取得する
電気工事士として年収を上げたい方は、積極的に資格取得に挑戦しましょう。
電気工事士にはさまざまな資格があり、取得することにより施工できる担当が広がり年収の上昇につながります。
電気工事には電気工事士第一種、第二種以外にも多くの国家資格があります。電気工事に関連する周辺資格を取得することで、年収アップにつながり、キャリアアップにもつながるので、必要に応じて取得を検討しましょう。
①認定電気工事従事者
認定電気工事従事者が工事をできる範囲は、電圧600v以下で使用する最大電力500kW未満の自家用電気工作物に限定されます。
認定電気工事従事者の資格は、第二種電気工事士の資格保有者だけではできない範囲の工事を担当することが可能です。
逆に、認定電気工事従事者の資格のみでは第二種電気工事士の工事範囲を補完できないため注意しましょう。
主に第二種電気工事士の資格の保有者や、いづれの資格を持たない未保有者が対応できる工事範囲を広げるために認定電気工事従事者資格を取得することが多いといえます。
②1級・2級電気工事施工管理技士
ビルやマンションなどの4,000万円以上で下請けに発注可能な大きな現場で電気工事の現場全体の管理が可能になる建設業法に基づく国家資格です。
電気工事施工管理技士は、建築物や土木構造物の建設や増築などに係わる電気工事に関する施工計画の作成、工事現場における工程管理・品質管理・原価管理・安全管理、電気工事の監理などに従事可能です。
電気工事施工管理技士の資格は1級と2級に区分されています。
1級電気工事施工管理技士は、大規模な工事現場において4,000万円以上の電気工事を下請け会社に発注する場合に必須の資格です。
一方、2級電気工事施工管理技士は、4,000万円未満の電気工事を下請け会社に発注する場合に必須の資格です。
③電気主任技術者
電気主任技術者の資格は、事業用電気工作物(電気設備)の工事・運用・維持といった保安監督業務を担当できる資格です。事業者は電気主任技術者の資格保有者を任命する必要があります。
電気工事を担当する電気工事士とは違い、電気主任技術者は電気工事における監督や電気設備の保守・点検を行います。
電気工事士の資格を持っていれば、電気設備の修理を行うことを含めて、原則的には電気工事士が工事、電気主任技術者が監督を担当する役割分担です。
電気主任技術者は、建物の外や屋上、電気室に設置されている電気機器を収納した設備にて業務を行い、主な担当内容は電気設備に関する竣工検査・定期点検・故障対応です。
電気主任技術者には、第一種から第三種までの区分があり、第一種電気主任技術者は全ての電気設備の監督や保安業務を担当できる資格です。
第二種・第三種電気主任技術者の場合は、担当できる規模が小さくなり、第二種が電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物、第三種は電圧5万ボルト未満(出力5,000キロワット以上の発電所を除く)の事業用電気工作物となります。
転職を検討する
5Gの普及に伴い通信設備の設置や維持業務などの電気に関する需要がますます拡大し、特に若い人材の不足により、電気工事士は注目を集めている仕事で転職を検討できる職種といえます。
本人が持っている資格が、第一種電気工事士と第二種電気工事士を持っている人では、担当できる現場や実績も異なるため、当然収入も変わってきます。
ただし、平均年収の目安はありつつ、転職する会社の規模や利益率などいくつかの要素があり「一概には言えない」部分もあるので転職を希望する会社の情報をしっかりと知っておく必要があります。
月収に加え、手当や賞与・昇給制度も事前に確認しておくことで、会社からどのようなことを期待されているのか分かり、希望の年収へ近づけるかが変わります。
転職活動に時間を取れない人や転職活動のやり方がわからない人は、転職エージェントの利用をおすすめします。
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まとめ
本記事では電気工事士が一人親方として働く場合の年収の相場や実際に、一人親方がどういった仕事をすることが多いのか紹介してきました。
電気工事士で一人親方として働く場合、技術力や地域・元請けなどの単価によっても変動するため一概には言えませんが、日当で18,000円〜20,000 で年収換算すると400〜700万円前後です。
従業員として働いている時には発生しなかった契約書や会計上の処理作業、仕事を受注するための営業関連の仕事も発生するため、企業で働く場合よりも忙しくなる傾向にあります。
怪我や病気になると収入がなくなってしまう不安定さも備えているため、不安な方は条件の良い転職先を探し年収アップを狙った方が良いでしょう。