少子高齢社会が進む日本では若手の働き手が不足する状況に直面しており、施工管理をはじめとした建設業界では人材不足の問題が顕著に現れています。
施工管理者の求人倍率は高く、下記のように高い水準で常に多くの求人が出されています。
建築施工管理技術者の有効求人倍率 5.35倍
土木施工管理技術者の有効求人倍率 11.63倍
ですが、WEB上では「施工管理の現場はブラック?」といった記事もあり、自分に合っていて働きやすい環境を見極める必要があります。
実際、施工管理者としてより働きやすい環境に就職するためには、「企業を見極める力」のほか「自身の価値を効果的に企業にアピールする力」が求められます。
そして自己アピールに必要なのが「志望動機」です。
施工管理に対する熱意や、企業とのどれだけマッチ度を最大限企業に伝える必要があります。
施工管理とは?
施工管理とは、工事現場で行われるあらゆるマネジメントを担う業務のことを指します。
具体的には工程の進捗を確認し、工事の質を保持すること、予算に収めること、そして職場の安全を確保することなどが含まれます。
施工管理を行う方々は工事現場全体を俯瞰する視点を持つ必要があり、技術者や資材や機械の業者などとコミュニケーションを取りながら現場の指揮を執ることが求められます。
国や地方公共団体から工事を請け負う際に、企業は経営能力を客観的に評価される、経営事項審査を受けなければなりません。
そのため、施工管理技士の資格保有者が勤務している会社では「技術力」の項目で高い評価を得られ、工事に関して有利に取引を進めることができます。
施工管理の仕事内容とやりがい
施工管理は、建設プロジェクトがスムーズかつ効率的に進行することを確保する重要な役割を担う職務です。
施工管理の志望理由を明確にするには、まず施工管理の仕事内容や魅力、やりがいを十分に理解する必要があります。どのようなことに魅力、やりがいを感じるかは人それぞれではありますが、ここでは一般的にいわれている内容について紹介していきます。
施工管理:仕事内容
施工管理の仕事は、現場の円滑かつ安全な運営を実現するために重要な4つの要素に分けて行われます。下記にてそれぞれの要素を解説します。
工程管理 | 機会や労働力といった資源を効率よく運用し、工期通りに進める活動のこと |
品質管理 | クライアントが求めている通りの品質を満たせているかの確認と試験のこと |
原価管理 | 資源や機材、人件費といった建設現場で発生する費用を管理する活動のこと |
安全管理 | 作業員が安全に工事に専念できるように危険な箇所がないかのチェック&事前防止活動のこと |
①工程管理
工程管理は、施工計画書に基づいて工事を適切に進行させ、所定の工期内に完成させるために必要な管理の種類です。
工程管理では、必要な人材の確保や工事に用いる機械の準備も含まれます。予期せぬ問題が発生した際には、技術者、資材や機械の搬入などスケジュールの調整を行う必要があるため施工管理者には迅速かつ柔軟な対応が求められます。
②品質管理
工事に使用される材料の品質や作業の適切さを確保し、設計通りの高いクオリティを維持するために施工管理士が品質の管理を担います。
材料の不備や作業のミス、事故などを未然に防ぐため、施工管理士には細心の注意が必要です。
③原価管理
原価管理の目的は、プロジェクトを予算内で完結させることです。これには、材料費や人件費の計算、調整も含まれています。
材料の購入先の選定や人員の適切な配分によってコストを効果的に抑えることに尽力します。
施工管理士の原価管理の腕にによって利益確保に繋がるため、原価管理は重要な役割です。
④安全管理
安全管理は、現場での事故を未然に防ぐための管理です。
高所での作業や悪天候時の作業など、工事現場には多くのリスクが存在します。施工管理士は作業員の安全と体調を常に管理し、住民への影響を最小限に抑えるための措置を講じる必要があります。
施工管理の魅力
①社会に貢献しているという実感が得られる
建物が完成し、それが人々に利用される姿を見ることは、社会への具体的な貢献を感じられる瞬間です。
商業施設、オフィス、病院、マンションなど建設に携わった施設が地域社会に良い影響を与え、人々が集まり、ビジネスが生まれ、経済が活性化するという流れを創出できるのは、施工管理の仕事の一つの大きな魅力と言えるでしょう。
それぞれの建物が特定の目的を果たすことで人々の日常生活、健康、豊かな生活へと寄与する点でも、この仕事は社会にとって非常に価値のあるものとなっています。
②他者と協同して一つのものを作り上げる楽しさを感じられる
施工管理の仕事は、まさにチームワークが重要となる分野です。一人では遂行できない業務を、技術者や業者と連携して進めていくことで、一つの建築物が形になっていく様を見届けることができます。
一人ひとりの専門知識と技術、努力が合わさって大きな成果を上げられるからこそ完成した後の喜びを実感できます。
施工管理職に向けて志望動機を書く時のポイント
施工管理としての役割を果たすためには、高い専門知識と技術だけではなく、リーダーシップや協調性なども求められるとされています。
施工管理士として入社の志望動機を述べる際には、施工管理の仕事の特性を深く理解することが大切です。
施工管理士の仕事の特性、自身の長所、将来のビジョンなどを結びつけ、企業が求める人材像に自身がどのようにフィットしているのかを具体的に示すことが不可欠となります。
ここでは志望動機を効果的に書くためのポイントを紹介していきますが、志望動機だけではなく面接においても生かせるポイントのため、しっかり押さえていきましょう。
その企業でなければならない理由を明確にする
施工管理の採用のみならず、あらゆる採用面接の場では「なぜうちの会社じゃなければならないのか」について聞かれることが多いです。
その企業でなければならない理由を述べるためには、企業が独自で行っている取り組みや企業の方針に触れ、それらが自身の価値観や今後目指すキャリアとどのように一致しているかを表現することで伝えることができます。
例えば、「人々の生活に貢献出来て、より大きな規模で従事したい」という軸を持っている人であれば道路やダム、トンネルなどの大規模なインフラ整備に注力している会社にエントリーするのが良いでしょう。
体力があることをアピールする
施工管理技士は工事が予定通り進行するよう努めますが、資材の遅れや天候の変動、そして予見できない自然災害などの要因で、計画通りに進められない状況が生じることもあります。
雨天などの天候の悪化が起こると、雨が止むまで作業を中断することがあります。冬の場合は寒い中天候が良くなるまで待つことは肉体的な負担も大きいです。
天候や資材の状況によっては、予定していたスケジュールよりも早急に工事を進めなければならないことや、休日に定められていた日に出勤しなければならないこともあります。
あらゆる状況に対応できる体力に自信のある方を企業は求めているため、体力があるとアピールすることが大切です。
コミュニケーション能力があることをアピールする
施工管理士は職人、クライアント、機械や資材を提供する会社など多くの関係者との連携が求められます。
そのため良好な現場を運営するため、工事に関連する他の専門知識を持った人々と適切にコミュニケーションを取ることが求められます。
現場監督のような立場で従事している施工管理士の役割はチーム間のスムーズな意思疎通と効率的な現場運営を行うための重要な役割を担っています。
工事現場で起こる予期せぬトラブルや課題をする解決し乗り越えるためには、施工管理士のコミュニケーション能力が必要不可欠です。
施工管理士には、コミュニケーション能力が必要であると企業側は認識しているため、この点をアピールできると良いでしょう。
精神的にタフであることをアピールする
施工管理士は精神力が求められる職域として知られています。
工事現場では、「工程管理」が施工管理の4大管理と言われているように工期を守ることが重要な業務ですが、工期スケジュールが詰まってしまうケースがしばしば起こり、常に冷静かつ迅速な判断力が求められるのです。
現場では技術者や現場監督、さらには業者といった多くの立場の人間が関わって成り立っているため施工管理士は現場の統率を図る役割があります。他にも、クライアントからは厳しい要求が求められることも考えられ、一筋縄ではいかない場面が多々あります。
施工管理士として、精神的にタフであることを採用面接でアピールすることで、企業側はプレッシャーがかかる状況下でも正確な仕事をこなせる人材であると認識することができます。
採用面接では具体的な経験を挙げて、どのように困難な状況を乗り越えたかを説明することが効果的です。
強い精神力だけではなく、施工管理士に求められとされている柔軟性と組み合わせてどのように乗り越えられたのかをアピールすることで具体的で納得できるエピソードになります。
施工管理を未経験者から目指すときコツ
建設業界の経験者は現場経験を活かして施工管理士としてのビジョンや、やりがいを語ることができます。
しかし、未経験者は建設現場に従事したことがないため面接時に話すエピソードが経験者と比較すると具体性に欠けてしまうと思うかもしれません。
施工管理職に対する熱意や、採用担当者が納得できる明確な志望理由を持ち、過去の経験から施工管理士として活躍できる要素を見つけ出し的確に伝えることで採用担当の方に充分アピールできます。
前述してきたように、施工管理の仕事には、計画性やコミュニケーション能力が求められます。
これまでの人生経験を振り返り、これらのスキルをどのように培ってきたのかや、施工管理が自分にとってやりがいであるという思いをエピソードを交えながら強調することで、未経験者でも施工管理士としての適性をアピールできます。
求人サイトを見ると、「完全未経験からポテンシャル採用」「未経験者歓迎」というワードを使って求人を出している企業も見受けられます。
「採用後に育てていく」という方針を持っている企業に対して、未経験者ができることは仕事に対する熱意ややる気を持っているとアピールすることです。
そして、資格を取得するという意思を表すことも大切です。施工管理技士の資格保有者は高齢化が進み、今後人手不足が加速すると国土交通省は見解を示しています。
そのため、施工管理に関する資格を保有する人材は貴重な存在になり、多くの企業が求めているため資格を取得する意思を表すことは大きなアピールポイントになります。
他社の施工管理職から転職する際のポイント
施工管理職における転職は、自身のキャリアや年収アップのための重要なステップです。
新しい環境でさらなる成長を望む施工管理職としてのあなたの向上心を企業にアピールすることで、転職活動がスムーズに進むことが期待できます。
同じ業務内容の施工管理でも企業によって年収が100万円以上違う場合があり、そのほかにも住宅手当といった福利厚生が充実しているかなど異なります。
施工管理職として更なるスキルアップを目指す方々は、具体的でポジティブな理由を持って転職を考えると成功しやすいでしょう。
例えば、「より大きなプロジェクトに携わりたい」、「新しい技術を学びたい」といった前向きな動機は、向上心のある人材であることをアピールし、企業側に採用するメリットを伝えることができます。
まとめ
施工管理士の志望動機を作成し、選考での成功につなげるためには、自身の強みや価値を十分に企業にアピールすることが不可欠です。
建設業界は人手不足という現状を抱えておりますが、ホワイトな職場環境で適切な研修を受け、理想的なキャリアを築いていくためにも、自身のポテンシャルを最大限に引き出し言語化する努力が求められます。
企業研究や自己分析を深めることで、施工管理士としてご自身に最適な企業を見つけ出すことができ、長期的なキャリアの形成に向けて重要な段階となります。
施工管理士の道を進む皆さんには、自身の強みを理解し準備を重ねた上で、選考に臨むことをおすすめします。
この記事を参考に、施工管理士としてのキャリアを踏み出すための一助となれば幸いです。