職業安定所(ハローワーク)によると、施工管理の仕事を含む建設業界は、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率が、6.52倍といった数字が示しているように、大勢の人材を必要としているのが分かります。
また、人手不足と物価高の影響から予算が高い、人がいないといったことが起こり、建設業界は厳しい状況にあるといえます。
人手不足を解消するためや、国も今後インフラ整備に力を入れることが予想されているため、建設業界の施工管理や電気工事士といった有資格者は厚い待遇を受けています。
建設業界は資材の運搬や立ち仕事のイメージから、体力的にきつい印象を持っている方も少なくないはずです。
施工管理が向いていない人はどんな人?
施工管理は、主に建物の土木・電気工事などの安全面を考えて、工事の進展を計画や指示、管理します。
建設現場では自分よりも年齢が高い方のマネジメント経験を積む場面が多々あり、きちんと意見を伝えることに躊躇ってしまっては工事の進捗に影響します。
さらに、作業現場の監督としての立場上、建設員の一人一人の安全性を視野に入れて、責任があり、現場を取り仕切らなければなりません。
施工管理という職種を選択した際に、後悔しないように施工管理に向いていない人や実際にどのようなことを行うのか確認してみましょう。
おとなしい人
施工管理は建設工事の現場技術者の指揮監督して、工事全体を取りまとめるため多くの方と関わる機会があります。
各工事現場の作業員とのコミュニケーションを取る必要があるだけでなく、資材や機材の取引先との連絡も必要です。
施工管理は作業員として活動するのではなく、工事全体を取りまとめるため、作業員への的確な指示・リーダーシップも求められます。
現場では年齢層の幅が広く様々な作業員の方が集結していますが、一律で作業の指示・現場の管理ができない場合の現場は混乱してしまいます。
そのため、自分の意見を伝えることが苦手な方や相手に気を使いすぎてしまう方だと指示をする際に悩んでしまう可能性があります。
計画通りにスケジュール進行ができない
建設工事が着々と計画どおりに進まないと、納期までに建造物が完成しません。
念入りにスケジュール管理を行い、不慮の事故やミス、不備な発生を想定内に考えて、スケジュール管理ができなければ、施行管理もできないため、施工管理士たるとも的確なる計画性が必要となります。
建設後の使用目的は様々で、工事が完了次第すぐに利用する予定になっていることがあり、建設現場での工事が予定よりも遅れてしまうことは問題です。
計画的に施工が進まないと取引先に迷惑をかけてしまう、完成予定日より過ぎてしまうことも考えられるでしょう。
体力に自信がない方
施工管理は日中は工事現場に行き、夕方からは事務所に戻ってオフィスワークを行います。
建設現場の朝は早く、8:00〜就業を開始するところも多いです。
様々な場所の作業のため移動が多いことや長時間労働になることも少なくなく、1日を通して持続的に仕事を続けられる体力も不可欠です。
日中の業務は建設現場で動き続け、夕方以降は書類の確認・取引先との連絡などデスクワークを行うため、工事によっては残業や休日勤務になることもあります。
睡眠不足で過労で倒れたりする可能性があり、施工管理士が自分に合っているか、再検討してみましょう。
施工管理として向いていない方が意識するべきこと
ここまで施工管理として向いていない人の特徴を紹介してきましたが、向いていない特徴に当てはまっているけど施工管理に興味を持っている方もいるのではないでしょうか。
施工管理という職を理解することで、上記の向いていない人の特徴に当てはまる方でも活躍できる可能性が高まります。
ここでは、施工管理として向いていない方がどうすれば施工管理の職業に適任となることができるのか、一緒に考えてみましょう。
順序立てて行動する
建設工事の施工は、長期間の工期に渡るので、おおよその計画を順序立てて進める必要があります。
先述の通り、建設現場ではその後に利用される時期が決まっているため、計画通りに工事を完了させる必要があります。
計画通り・スケジュール通りの作業が苦手な方は、その後の工事スケジュールに影響するため向いていないですが、順序立てて行動することで施工管理を目指すこともできます。
予期せぬトラブルや資材・人材の不足によって遅延が発生する場合もあり、さらに経済状況の変化によって原価・予算が変わることもあるでしょう。
仮に予算が変わった場合は、設計図を作る設計者や現場の方、自分の上司といった報告すべき相手を列挙することから行いましょう。
複数の問題を抱えても、自ずと仕事に優先順位をつけることができる施工管理者が重宝されます。
周囲の意見を冷静にまとめる
先述の通り、施工管理は発注者と職人の間に立って工事を取りまとめるため、板挟みになりやすい立場にあります。
板挟みの立場でも現場の声に耳を傾けながら、予算・スケジュールなど最適になるような調整が求められます。
監督や作業員、搬入者の方など多くの方の意見を聞きながら工程管理をしていくことで、円滑に工事を進められる可能性が高いです。
建設現場ならではの声を聞くことで、施工管理としては気づくことができなかった考えも思い浮かぶ可能性があり、積極的に意見を取り入れるよう意識すると良いでしょう。
熱意を持って没頭する
施工管理の与えられた仕事を、おおまかに行うだけでは無用なため、熱意を持って仕事に没頭して、仕事に対する高い意識を常に持っていると、周囲から高く評価されるはずです。
他にも、チーム全体に影響を与えるためチームメンバー間のモチベーションを高くすることに繋がりプロジェクト成功への鍵となります。
施工管理は、様々な工程を同時にこなさなくてはいけないため、建設員などを率先して、引っ張っていかなければなりません。
施工管理に向いていない人は、一つの事に集中してしまう人です。
一つの事に没頭して、全体像を把握できない人には、施工管理は難しく、マルチタスクな能力が求められるでしょう。
コミュニケーションに不安を感じている人でも施工管理になれる?
先述の通り、施工管理では職人の方や専門の工事業者など様々な方と一緒に働きます。
そのような環境の中で安全でスケジュールに滞りなく進める管理を行う立場上、多くの関係者とのコミュニケーション・付き合いが必要になってきます。
そのため、施工管理の仕事をしている方の中では自分よりも先輩の職人さんと人間関係に悩みを抱える方もいらっしゃいます。
実際、ベテランの職人さんや建設現場で働かれている方は気難しい方も少なくありません。
強い口調で注意されることもあり、そうした職場で働いている人の中にはストレスを感じている方も多いとされています。
しかし、コミュニケーションの面で自信がない方の場合でも、施工管理としてキャリアアップは狙えます。
施工管理は建設工事に関する現場技術者・作業員を指揮し工事全体を管理するため、人との関わりだけではありません。
書類作成・予算オーバーにならないように全体を把握し、共有することなど人とのコミュニケーションに不安を感じている方でもキャリアアップを狙えます。
施工管理士の方はどのような理由で退職する人が多い?
施工管理はさまざまな経験を積みながら、できることを増やしていくことで待遇の向上が期待できますが、施工管理から別の職種へ移る方も存在します。
比較的安定している将来があるにも関わらず、施工管理をやめる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
人間関係の問題
普通の会社でも、人間関係を理由に退職することが多々あります。
人間環境の問題に対しての具体的な理由には、下記の理由があります。
- 上司のパワハラ
- いじめ
- 職人さんとうまくいかない
- ワンマン社長
- 会社と施主と職人の板ばさみ
職場内の人間環境が悪いと、居心地が悪くなり心身症になりかねない、一歩手前の状態までに陥ることもあります。
職場の人全員と気が合うとは限らないので、人も多種多様です。
不規則な現場条件
施工管理では、労働条件が不規則になる傾向があります。
大規模な工事では多くの作業員の方との仕事になるため、意思疎通が難しかったり事務作業の増加に伴い、早朝に始まり深夜まで、残業が及ぶこともあります。
さらに、体力的な負担も大きいことから過酷な仕事であるといえます。
実際に施工管理を辞めようとする、やめた方の多くは
- 過労で身体を壊した
- 残業が多すぎて、帰りが遅すぎる
- 残業のあとの資格の勉強はきつい
- ・体が休まらない
など体力的な負担による不調が多々あります。
評価基準が不適切だと感じている
自分では施工管理に関する業務を全うしているが、上司から過小評価され納得できないこともあるはずです。
施工管理士は国家資格であり、無資格者に比べ年収・福利厚生で良い条件を提示されます。
さらに、建設業界の需要は高まる一方で人材不足に直面しているため、一人一人にかかる負担も増えています。
政府も上記の問題を解決すべく、施工管理技士補の創設や待遇の改善などの対策を講じていますが、劇的な改善を体感できず不満を感じている方も多いです。
違う職種にチャレンジしたい
施工管理は現場で監督業務を行いつつ、書類の確認や取引先とのやり取りを行うため幅広い経験を積むことができます。
正確には施工管理には7種類存在し、建築施工管理技士、土木施工管理技士、電気施工管理技士、管施工管理技士、造園施工管理技士、建設機会施工管理技士、電気通信工事施工管理技士があります。
それぞれの施工管理として長年経験・知見を積むことで専門性が向上し、業界のコンサルタントとして活動する人も存在します。
さらに、コンサルタントとして課題の解決ソリューションを提供することで施工管理に比べても高い給与を期待できます。
施工管理を辞めるのは勿体無い?施工管理の魅力
ここまでは、施工管理の職業について向いてない人や退職の理由などについて、紹介してきました。
だけど、勉強してせっかっく施工管理の資格を取得したのに辞めてしまうのは勿体無いと考えてしまうこともあるはずです。
しかし、せっかく、施工管理士の仕事に就業したのに、辞めてしまっては勿体ないと考えてしまうことはありませんか?
ここからはそうした施工管理の魅力について紹介していきます。
6大管理を行うため希少価値が高い
施工管理は、建設現場を管理するために重要な5大管理があります。
- 品質管理 設計図書どおりの品質を満たしているか確認をする
- 原価管理 資材など発注や機械レンタル料、人件費などを管理
- 工期管理 機械や労働力、資材などを効率よく運用し、納期に間に合わせる活動
- 安全管理 日々の巡回で危険な箇所を把握する
- 環境管理 自然環境・周辺環境・職場環境があり、どの環境を優先するべきか考える
さらに、お客様対応の顧客管理が加わり6大管理といわれることもあります。
施工管理としてさまざまな方とのコミュニケーションで社会人としての基礎スキルが身につき、原価管理では会計上の数字の知識や気をつけるべき点が身につくためビジネスマンとしての価値が向上します。
一般的な転職活動を行う際、50代以上の方だと役職についている場合や誰もが知っているような超大手企業に勤めている場合を除き難しいですが、施工管理の求人では50歳以上のシニアであっても多数求人があります。
人材が不足している
建設業界では深刻な人手不足が問題となっており、2025年には建設業界の労働人口が90万人不足することが予測されています。
少子化と高齢化が進むことによる影響だけでなく、屋外や高所での作業をするイメージから建設業界に対する悪いイメージから若者が敬遠していることも要因として考えられます。
ですが、先述の通り建設業における需要は拡大し、国土交通省による「令和4年(2022年度)建設投資見通し 概要」によると、2015年から右肩あがりの建設投資額は2022年において66兆9,900億円に上るとされていました。
その中でも民間投資額が44兆4,600億円となっており、民間での需要が高いことが分かります。
スキルを身につけキャリアアップ・年収アップが見込める
施工管理士に必要なスキルは、現場の調査から書類作成などに至るまでと、多方面にわたります。
地道な継続力や臨機応変に対応できる力、全体を把握できる管理能力のスキルを身につけて、キャリアアップを目指すことも、仕事の張り合いになるかもしれません。
キャリアアップをするのであれば、施工管理技士2級の取得をおすすめします。
施工管理に必要な知識やスキルがあると認められ、昇進や昇給が見込まれるでしょう。
2級を取得したら、施工管理技士1級を目指して、あなたの価値をアピールしてみるのもよろしいかもしれません。
施工管理士の仕事をもう一度、よく検討してみてはいかがですか。
施工管理からの転職に向いている業界
施工管理士として培ってきた工事を担当し監督する業務経験・スキルは仮に異業種への転職でも活用できます。
そのほか、施工管理の仕事では書類の作成や計画・スケジュール管理・交渉スキルなど身についているため、企業にアピールできます。
ビル管理
ビル管理の仕事は、商業ビルやオフィスビルの電力や空調、防災などの設備を維持管理することです。
ビル管理は、病院や学校、商業ビルなどの施設と呼ぶものを対象にしており、全てにおいて必要な作業になります。
施設の利用者の安全にも関わるので、責任重大な仕事です。
ビル管理業では、特に、第二種電気工事士の資格を保有していると、有利となります。
設計事務所
設計事務所は、主に建築設計や工事監理の業務を行うことになります。
大きな設計事務所では、意匠・構造・設備の部門に分かれて、それぞれに専門の建築士がいます。
設計事務所の施工管理技士の業務内容は、QCDS管理が主な仕事です。
発注者の要望に応じて、高品質な建物を予定通りに、竣工できるように現場を監理します。
設計職において必要な資格は、「建築士」です。
資格保有者は、優先的で採用されやすいでしょう。
都市再生機構
民間事業者や地方公共団体との連携の都市再生事業、UR賃貸住宅の管理の賃貸住宅事業・被災地の復興支援をする災害復興事業などがありますが、UR都市機構の転職は難易度が高いでしょう。
UR都市機構は、国土交通省所管であるため、「安定しそう」と応募が殺到するからです。
公務員に近い社風で「ホワイトカラー」なイメージが多く持たれてます。
建築施工管理技士などの資格を保有していると、選考が有利に進むでしょう。
CADオペレーター
CADオペレーターは、女性にも人気がある職業で、CADソフトを使って図面データを作成することです。
CADの基礎知識や基本操作、図面を正確に読み取るスキルを要するでしょう。
ただし、全くの未経験から採用されるケースは少なく、何らかの技能を習得している人や、専門分野に関する知識や経験を踏まえて採用されるケースが多いようです。
建設業界においては、ビックプロジェクトが始まるときなどは、需要が増える傾向で、転職のチャンスと言えます。
建設業界の営業職
建設業界の営業職の仕事は、自社が関わる建設工事の仕事を他社と契約することになります。
建設業界の営業職として必要な力量は、マーケティングやコミュニケーション能力です。
仕事が依頼されるように、他社と積極的にアポをとり、こまめに企業に足を運んで、好印象を与えることが営業の秘訣になるでしょう。
営業ノルマがあり、施工管理士とは違ってキツい仕事かもしれませんが、建設業界の仕事で、会社に貢献して売上を伸ばす使命感があるため、労働意欲が湧くかもしれません。
ディベロッパー
ディベロッパーとは、不動産・建築業界では、「土地や街の開発事業者」のことを言います。
例えば、「六本木ヒルズ」や「虎ノ門ヒルズ」などの複合商業施設や大型マンションの開発をすることが、ディベロッパーの仕事です。
ゼネコンとのディベロッパーは、建築工事をゼネコンに依頼した後に、事業主として工事の進行状況が計画的に進んでいるか管理するのが仕事になります。
施工管理士と仕事が酷似しているため、発注者に近い立場で仕事ができて、キャリアアップが目指せて、土曜出勤があっても振替休日が必ずあり、落ち着いて働けます。
建設コンサルタント
建設コンサルタントとは、国民が必要とする良質で安全な社会資本を提供して、発注者の右腕パートナーとして、企画・計画・調査・設計・施工管理など、建設業務全般にわたって業務を行っています。
近年では、事業執行のマネジメントをしたり、事業者の代行を担当を行うことになるでしょう。
今後も新たな公共事業や都市開発などが進みニーズが多様化するにあたり、建設コンサルタントの需要や重要性は高まるはずです。
まとめ
ここまで、施工管理の職業の不向きや魅力などについて、紹介してきました。
施工管理とひとえに言っても、多種多様な業務があります。
施工管理士は、建設現場の現場監督の立場ですので、現場での責任者でもあり、大役な責任感を任されるはずです。
施工管理士について、もし、自分には不向きだと転職をお考えであれば、この際、検討してみて下さい。
施工管理として就業してきて、実績があるのに勿体ない場合も念頭に置いてみて下さい。
よりよい職種を探して、あなたに合った職業が見つかることを願います。