施工管理士は、建設業界でのプロジェクトの進行や品質を監督する重要な役割を果たします。
「施工管理」という仕事は、建設業界でのプロジェクトの進行や精度を監督する重要な役割を果たします。
施工管理という仕事に対して興味を持ったものの、「専門的な知識・経験が必要そう」「なんとなく働く時のイメージが湧かない」と不安を感じていませんか?
実際、未経験からでも施工管理として働き始めキャリアを築いていくことは十分可能で、建設業界には現場での学びや資格取得を支援している企業も多くあります。
施工管理の仕事内容
施工管理は建設現場で安全でスムーズに工事が進むように、さまざまま面から現場を監督・管理する仕事です。
安全かつスムーズに工事が進むように、主な4大管理と呼ばれる原価管理・工程管理・品質管理・安全管理を行います。
4大管理をメインで行いますが、業界によって具体的な業務が変わりケーブルや電線、機器が規格を満たしているかなどを電気工事施工管理が品質管理で行い、建物に設置する空調設備や給排水設備やきちんと動作し規格を満たしているかなどは設備施工管理が担当します。
工程管理
「工程管理」とは、簡単に言うと、工事がスムーズに行われるように計画を立てることです。
現場は天気に左右されることも多く、突然の雨で作業が止まることも考えられます。
天候の悪化やスケジュールの遅延のようなアクシデントが起きないような計画やアクシデントが起こった際に対処法を考えることが工程管理の役割です。
設備工事の施工管理では、建物が形になった後の「仕上げ段階」で行われることが多く、設備設計図を基に建築工事の進行に合わせたスケジュール進行を行います。
配管や機器の搬入タイミングを建築スケジュールと調整しながら進めていき、後期中に使用する機材や作業スペースの確保を初期計画で行い、配管工事や機器設置の進行状況を日時で確認します。
設備工事や電気工事は建築工事や内装工事と並行して進められることが多いため、作業が重なるとトラブルが発生しやすいです。
場合によっては、他の部署との定例会議を実施し作業の進捗や工程を共有して干渉の可能性がある箇所を事前に調整する必要があります。
安全管理
「安全管理とは」現場での作業を行うすべての人々が、安心して作業を進められる環境を作り出すことです。
工事の成功だけでなく、作業員の命を守るために不可欠な施工管理の役割の一つです。
現場で働く作業員や周囲の人々の安全を守ためにリスクを予防し事故を未然に防ぐ業務で、設備工事や電気工事では、高所や感電、重量物の取り扱いなど特有のリスクが多いため、特に徹底した管理が求められます。
安全管理は単なるルーティーンワークではなく、現場の安全を守るための絶え間ない努力と献身が欠かせません。
施工管理者として、この安全管理の重要性を常に意識し、最前線での安全を確保することが求められます。
原価管理
「原価管理」は、建設プロジェクトにかかるコストを管理することを指します。
原価管理業務では、材料コスト、人件費、外部業者への支払いを予算内に収めるための管理が含まれます。
施工管理士は、必要な期間だけ重機をレンタルすることや、予算や強度に合わせて最適な材料を選択するなど慎重な意思決定を通じプロジェクトを進めていきます。
工期が予定よりも遅れていると、追加のレンタル費用や人件費が発生するため工程管理と進行状況のチェックも欠かせません。
品質管理
「品質管理」とは、工事の品質が求められる基準や要求を満たしているかを確認し、維持するための管理です。
使用する材料の品質をチェックすることで、耐久性や安全性を確認できます。
例えば、施工方法や作業手順が正しく実施されているかを定期的に監査することも、品質管理の仕事の一つです。
その他にも、工事の進行中や完了後に、品質の不具合や問題点が発見された場合、その原因を特定し、再発防止策を講じることが必要です。
同じ問題が繰り返し発生することを防ぐことができます。
未経験から施工管理はやめとけと言われる理由
施工管理で働こうと思っている方の中で未経験の場合、「責任が重い」「激務」という情報を目にして不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
実際の施工管理の仕事内容や働き方・待遇などをリアルに理解しておくことで、「施工管理は未経験だとやめとけ」と言われる理由やその根拠がどこにあるのかわかります。
ここからは「未経験から施工管理はやめとけ」と言われる理由について紹介していきます。
長時間労働・残業時間が多い、休日出勤がある
建設業界は他の産業と比べて、労働時間が長いというのが現実です。2016年のデータによれば、建設業の年間総実労働時間は2056時間、年間休日は251日と発表されました。
技術者や技能者の週休2日が確保されている割合が建設業全体で約7%しかないことが、長時間労働の原因の一つとして考えられます。
「施工管理の仕事は休みが不規則で休日出勤が多い、体力的な負担が大きそう。」というイメージを持たれやすいです。
工期が絶対的なものとしてあることが多く、工事の遅れが生じていると残業が続いたり休日出勤の場合もあります。
外の現場では天候に左右されるため、雨の日には作業が中止になったり急なスケジュール変更も発生します。
しかし、国土交通省の働き方改革の提言を受け、週休2日対象の工事は増加しています。
国土交通省の取り組みを受けて、建設業界の労働環境も徐々に改善されつつあることは、前向きな変化と言えるでしょう。
業務内容と給与が見合わないケースがある
建築施工管理の職種は、他の業界の平均年収と比較しても、高い水準にあります。
全業界の平均年収が421万円であるのに対して(※1)、施工管理士の平均年収は620万円とも言われており、平均よりおよそ200万円高いです。
しかしながら、長時間労働や休日出勤、膨大な事務業務などから施工管理者の人々は業務量に対して給与が見合っていないと感じる方も少なくありません。
施工管理の仕事においては、一般的な上司と部下の関係だけでなく、職人、元請け業者、現場の施主、さらには現場周辺の住民といった多様な関係者とのコミュニケーションを取ることが求められます。
多岐にわたる人々との関係構築は、精神的な負担となり、転職を考える要因となることも少なくありません。
肉体労働が中心だと思われるから
施工管理の職種は、未経験者が挑戦しにくいと感じる主要な理由として、肉体労働の要素が挙げられます。
実際、施工管理は真夏や真冬の厳しい気温の環境でも現場での指揮・マネジメントの役割を果たさなければいけません。
施工管理も一部の場面で体を動かす必要があるかもしれませんが、基本的な業務は先ほど紹介した4大管理です。
工事がスケジュール通りに進ように他業者や職人との打ち合わせ、施工が設計図通りの品質で行われ資材・完成物のチェック、労働災害を防ぐための安全対策、工事費用が予算内に収まるようなコスト管理です。
これらのような計画・調整・監督が中心で、実際の作業は職人や作業員が担当します。
現場状況を確認するための現場巡回で歩き回ることが多く、大型現場では1日に数キロ歩くこともあったり、小規模現場では状況に応じて資材を運ぶ手伝いをすることもあります。
このような状況は、オフィスワークを主な業務と考えている方には適していない可能性が高いです。
未経験の方の施工管理の求人は多い?
建設工事や電気工事、土木工事において、施工管理全体の管理を行う施工管理者は工事現場での陣頭指揮を取る現場監督と異なり、業者との打ち合わせた書類作成などでデスクワークも行います。
複雑な工事工程に関わるプロジェクトやメンバーをマネジメントするスキルは重要であるため、企業から重宝されます。
施工管理の求人倍率はどのくらい?
施工管理が含まれる建設・土木・測量技術者の有効求人倍率は、2021年4月の時点で4.58倍と報告されています。
建設業界の有効求人倍率が高いことからも、業界において人材不足が深刻で企業が確保したいことが予想できます。
他の職種を含めた全職種での総合的な求人倍率が1.09倍で、求職者1名に対して求人数がおよそ1名であることから雇用状況が難しいことを示しています。
未経験でも施工管理はできる?
上記から分かるように施工管理を雇いたいと考えている企業は多いですが、建設業界において人材の高齢化も深刻的に問題視されています。
総務省が公開している建設業および建設工事従事者の現状によると、29歳以下が11%、55歳以上がおよそ34%と報告されています。
よくある施工管理の志望動機
施工管理を志望する人々には、多くの動機が存在します。
施工管理を志望する方の理由の一つに、建設業界は安定しており、不況の影響を受けにくいという点が魅力的です。
経済が不況に陥ると、多くの企業は人員を解雇したり、給与面でも条件が悪化してしまうことがあります。
ですが、産業や生活の基盤として聖母される道路や水道、電気通信網といったインフラは人々快適な生活だけでなく経済活動を活発にする役割があるため、国が予算を投じます。
さらに、施工管理業界では、経験とスキルを積むことでキャリアアップのチャンスが広がります。
人々の生活を支える建築物を作ることで、多くの人々の役に立つ仕事をしているという実感を得ることができます。
工事の中心となる施工管理の仕事は、現場での指揮を執る重要な役割を果たすため、役に立っているという実感は得られやすいでしょう。
施工管理の仕事に向いている人
工事全体を指揮、統括する施工管理士には、様々なスキルが求められます。
では、どのような人が施工管理に向いているのでしょうか。
コミュニケーションを取ることが苦にならない人
施工管理の仕事には、コミュニケーション能力が必要不可欠です。
工事に関わる多くの人々、例えばクライアントや職人との関係を円滑に保つため、人との対話を避けず、積極的にコミュニケーションを取ることが求められます。
コミュニケーションが不十分な場合、職人からの無視や怒り、さらには確認ミスや事故へとつながるリスクが高まります。
特に、施工管理は現場の中心として指揮を執る役割を担うため、明確な指示や確認が必要となります。
そのため、人と話すことに抵抗がなく、仕事上のコミュニケーションをスムーズに行える人が、この職種には最も適していると言えるでしょう。
マネジメント能力がある人
施工管理の業務には、マネジメント能力が必要不可欠です。
工事全体を把握し、職人に的確な指示を出す役割を果たすため、工事がスケジュール通りに進行するようにマネジメントする能力が求められます。
具体的には、工事スケジュールを頭に入れ、現場の状況を確認し、資材の搬入時間や職人の作業状況を管理することなどの仕事があります。
高いマネジメント能力を持つ施工管理士は、プロジェクトの円滑な進行とトラブルの未然防止に貢献しています。
臨機応変に対応できる人
施工管理の業務では、臨機応変な対応が求められる場面が多々あります。
工事の進行中には、人為的なミスや機械のトラブル、荒天や人員不足など、予期せぬ問題が発生することが珍しくありません。これらのトラブルに迅速かつ冷静に対処する能力は、施工管理士にとって必須のスキルとなります。
計画通りに工事を進めることはもちろん大切ですが、予期せぬ状況変化にも柔軟に対応できることも、工事をスムーズに進行させるために必要です。
女性が施工管理を目指す際の強みと弱み
建設業には、男性が多いイメージですが、近年、多様性が重視され、女性施工管理士も増えてきています。
実は、施工管理が向いている人の特徴は、女性の強みにも大いに当てはまります。
女性が施工管理士を目指す際の強みと弱みとなる部分はどのような所でしょうか。
女性が施工管理を目指す強み①細かな気配りを活かせる
女性は施工管理の現場で、女性ならではの視点で、細かな気配りの能力を活かしています。この能力は、計画の精度向上や、トラブル時の迅速な対応策の決定に役立ちます。
男性が多い建設業界で、女性「施工管理士」の視点は新しい価値をもたらすとともに、効率的なスケジュール管理や、危険の早期発見など、業務の質を向上させる要因として評価されています。
細部への気配りは、施工管理の業務全体をより安全かつ効率的に進める上での大きな強みとなっています。
女性が施工管理を目指す強み②多様なキャリアが築ける
結婚や出産後を経た後でも復帰が出来る点は、女性施工管理士にとって大きな魅力です。施工管理の仕事は一度スキルを身につけることが出来れば、業務は変わらないため、ブランク期間があったとしても、再び現場での活躍が期待されます。
さらに、異業種からの転職者も増えており、施工管理士の資格や経験は高く評価されています。
女性が施工管理を目指す強み③男性とは異なる視点を持つことができる
施工管理士としての女性は、男性主体の建設現場に新鮮な視点や感性をもたらします。
公共施設や商業施設のデザイン、特にトイレの配置やデザインに関して、女性は強みを発揮しています。さらに、子育ての経験を持つ女性は、公園の遊具の安全性やデザインについてもより良い提案ができることでしょう。
これらの女性ならではの視点は、建築物や空間の質を向上させる新しいアイディアの源となります。
女性が施工管理を目指す弱み①男性に比べて体力がなく、仕事がきつい
建設現場は、その性質上、体力を要する作業が多く存在します。重い資材の運搬や長時間の立ち仕事、さらには厳しい気象条件下での作業など、施工管理士としての業務は体力的に厳しい面が否めません。
特に女性は、一般的に男性に比べて筋肉量が少ないため、同じ作業を行う場合でも体力的な負担が大きくなることが考えられます。
しかし、近年では女性の働きやすい環境を整えるための取り組みも進められています。例えば、機械化による作業の軽減や、女性専用の休憩スペースの設置など、女性施工管理士が現場で働きやすい環境を整える動きも見られています。
女性が施工管理を目指す弱み②女性専用のトイレなどを用意してもらえない場合がある
建設現場での女性施工管理士の課題として、女性用のトイレや更衣室の不足が挙げられます。特に、仮設トイレが男女共用の場合が多く、女性専用の設備がない現場も少なくありません。このことにより、生理用品の処理やプライバシーの確保が難しくなることがあります。
国交省の「快適トイレ」推進により、女性にも使いやすいトイレの導入が進められていますが、まだまだ不足感は否めません。更衣室の問題も同様で、男性は屋外での着替えが可能でも、女性には難しい状況があります。
更衣室がない場合、車内やトイレでの着替えが必要となることも考えられます。
女性が施工管理を目指す弱み③「女性だから」となめられる
古い価値観を持つ企業だと、女性施工管理士が「女性だから」という理由で軽んじられることがあります。施工管理士の役割として、安全管理や工期の確保のために職人への指示が不可欠です。しかし、一部の現場では、女性からの指示に耳を傾けない職人も存在します。
このような背景には、建設現場が伝統的に男性主体の職場であったことという風潮が影響しています。力仕事が中心のため、女性の参入が進むにつれて、一部からは「女性が現場に来ると効率が下がる」との声あります。このような風潮が、女性施工管理士の業務遂行を困難にさせる要因となっています。
施工管理を未経験でする場合は何歳まで?
施工管理に興味を持っているけど、資格や経験がないため施工管理として働くことを諦めている方もいるのではないでしょうか。
施工管理だけでなく、建設業界は深刻な人材不足に悩みを抱えているため、何歳からでも施工管理として働くことを狙えます。
実際、、施工管理士になるために必ず必要な資格はなく、建築に関する知識がある方であれば施工管理として働くことができます。
まとめ
この記事では、未経験でもできるのかということについて、様々な視点から解説しました。
施工管理士は、リーダーとして工事をまとめ上げることで、プロジェクトの完成に貢献し、やりがいを持てる仕事です。
未経験でも仕事を始めやすいだけでなく、平均して年収高く、キャリアアップが目指せるというメリットもあります。
さらに、土木現場は忙しく、大変なイメージを持つかもしれませんが、近年、だんだんと改善されつつあります。
未来に向けた魅力的なキャリアの選択肢として、施工管理士の道を考える方々にとって、参考となれば幸いです。