建設コンサルタントは、道路・鉄道、港などインフラ全般に関して総合的にアドバイスを行い企業や自治体をサポートする役割を担っています。
国民が必要とするインフラ社会を支えるため、発注者の技術パートナーとして調査、計画・設計・施工管理など建設業界全般的な幅広い業務を行います。
さらに、現在はコンサルタントという職業が注目されていますが、建設コンサルタントを志望する割合は少なく経験を積むことでより自分の希望するキャリアに近づきやすいことも事実です。
ゼネコンの施工管理として働く場合との違い
建設コンサルタントとゼネコン(総合建設会社)には4つの違いがあります。
役割
建設コンサルタントは建設プロジェクトにおける調査、計画、監理などのプロジェクト全体に関する多種多用な専門技術を発注者に提供する仕事です。
発注者の代理としてプロジェクト全体を俯瞰の目で注視、完成までに想定されるリスクとその解決策について発注者に報告・助言等を行うことで、プロジェクトを円滑に進行させる役割があります。
ゼネコンは建設プロジェクトにおいて、実際の建設を担当し管理する役割です。
施工についてはQCDSEといわれる施工管理の五大要素を主たる業務としています。
QCDSEとは管理する項目の頭文字を並べて称されるもので、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(工程・工期)・Safety(安全)・Environment(環境)となります。その他にも資機材の調達や、専門工事会社との連絡調整や折衝なども仕事内容としています。
契約形態
建設コンサルタントは発注者から業務委託され、プロジェクトの初期段階から契約を結び、企画・計画・施工・保守といった各段階でコンサルティングのサービスを提供します。
ゼネコンは発注者との請負契約によって、建設作業の実施に関して業務を遂行することになります。
現在は計画段階からゼネコンがプロジェクトに携わり、施工方法の検討によるコストの削減や生産性向上をプロジェクトの一員として担うケースもありますが、必ずしも請負契約の範囲での業務になるとは限りませんし、発言についても施工の専門家としての立場から意見を伝達する役割となります。
技術的な専門性
建設コンサルタントは建築設計、エンジニアリング、都市計画、維持管理などの幅広い技術的な分野での専門性が必要となります。
ゼネコンは建設施工における技術的な専門性に特化した業務を担っています。
建築施工に伴う技術的内容と、建設現場そのものを管理するマネジメント技術を専門性としています。
報酬
建設コンサルタントはプロジェクト成功のために調査、計画立案、予算管理、技術的なアドバイスなどを提供することの対価として報酬を得ます。
成果物による支払いとは性質が異なり、コンサルタント業務に対する受注者側の経費に基づいて算出されるケースが多いです。
ゼネコンは建物の施工を行い、設計書に示された要求性能を満たした状態の建築物を引き渡すなどの成果物に対して報酬を得ています。一般的には躯体の上棟時と竣工時の2回に分けて支払いがされる形式をとっています。
建設コンサルタントの立ち位置
建設コンサルタントの立ち位置は、発注者の技術パートナーとして調査・企画・計画・設計・施工管理・維持管理など、建設事業全般の幅広い業務を担うことになります。
行政から発注されるインフラ工事などにおいては、地域住民の意向を聴取し、需要予測調査などを行うことで基本計画や設計案を発注者に提案するという業務も遂行します。
建設コンサルタントの仕事内容
建設コンサルタントは、建設プロジェクトにおいて発注者に様々な技術的サポートを提供する専門家です。仕事内容の詳細は以下のようなものになります。
プロジェクトの計画・立案
発注者の要件を分析し、建設プロジェクトの目標を明確に設定した上で、具体的な実行戦略を立案し発注者に提案を行います。
設計および技術的な助言
建設プロジェクトの設計段階で、設計者やエンジニアと連携して技術的な助言を行います。最新の建設技術や維持管理のための技術提案により最適な設計がされるようにプロジェクトをサポートしていきます。
予算とコスト管理
プロジェクトの予算を策定し、予算内でプロジェクトが進行できるように監督します。コスト効果のある内容を提案し、発注者が資金を最適に活用できるように支援します。
プロジェクト管理
プロジェクト全体の管理を行い、スケジュールの策定と維持をサポートします。進捗状況の監督や問題の解決、変更管理など、プロジェクトが円滑に進行するための対応を行います。
品質管理
設計書で要求されている性能が満たされていること確認します。必要に応じて品質管理規準を定めて、品質管理検査を行うことで品質事故の防止を図ります。
法規制と規制の順守
現地の法規制や建設規制に従ってプロジェクトを進行させるために、専門的な知識を駆使します。環境への影響や安全規定などにも留意し、法令順守を確保します。
建設コンサルタントの魅力
幅広い業務内容かつ専門性を磨ける
建設コンサルタントの仕事は、インフラ工事などの公共事業が主な仕事内容であるため大規模かつ長期間、プロジェクトに携わる傾向にあります。
加えて複数の案件を同時に進行させることが一般的でもあるため、様々なプロジェクトに関わることで多くの経験値を得ることが可能です。
業務内容自体も幅広く、専門性のある技術的な提案もプロジェクトの成功のために行う必要があることから、ゼネコンなどの専門的な技術を提供する会社と同等の知識を身につけ、磨いていくことができるという魅力があります。
未来に残るインフラ事業に携われる
建設コンサルタントは道路、ダム、河川、上下水道、病院、学校、発電所といった国や自治体が発注者となる事業の業務に携わるため、必然的に未来に残るインフラ事業に関わることが多くなります。
人々の生活を支えているという実感や、災害時にも被害を最小限にするための企画や設計を業務として遂行していくため、人の命を守るという点においても強いやりがいを感じることが魅力の職業といえます。
業務経験から専門的な職種へ転職も可能
建設コンサルタントは幅広い業務内容を遂行する仕事であるため、その中から特定の専門性がある職種へ転職することが可能です。
単純に担当する業務の幅が広いだけではなく、根拠のある技術的な専門性をもった提案を発注者に提供する業務内容から、自然と専門知識が身につく職業であるためです。
プロジェクト全体を俯瞰の視点で考えられることや、プロジェクト自体のコスト管理が行えるという点からも、管理職としてのポジションで転職を行う場合のアピールポイントにもなるのが魅力です。
建設コンサルタントはやめとけ?と言われる理由
休日出勤・残業が多い
建設プロジェクトには厳格な期限があり、スケジュール管理に大きな労力をかける必要があります。
計画から施工までの期間ではその傾向が顕著であるため、締め切りに間に合わせるために休日出勤や残業が多くなることが想定されます。
さらにはプロジェクト全体で想定できなかった問題に直面することや、計画外の変更を余儀なくされるトラブルに対応するために、予定していた業務量を超えた働き方をせざるを得ないケースもあります。
人的な要因から業務量過多となるケースもあります。
発注者だけでなく、プロジェクトに関係する多くの企業や担当者とコミュニケーションを図り、事業を円滑に進める役割があることから、打ち合わせのアポ取りや個別の相談にも対応することを考慮するとプロジェクトごとにかかる業務時間が予想しづらく、残業が多くなってしまう傾向があります。
案件が同時並行で進むため
建設コンサルタントは単独のプロジェクトに専念するケースはあまりなく、ほとんどが複数プロジェクトを同時並行して業務を進めています。
プロジェクトごとにかかる労力が予想しづらいことと、同時並行での仕事により期限が重なってしまうこともあります。
そのようなことから、マルチタスクの業務進行に人的リソースが追いつかずに過酷な労働を覚悟する場合があります。
最先端技術を習得する必要があるため
建設プロジェクトを成功に導くためにも、常に最新の技術を習得し発注者に提案していく必要があります。
一度の経験がその後の業務に活かされることも当然ありますが、インフラ事業においてはその土地が抱える問題や解決すべき技術的な障害も個々に存在しているために、前例のない仕事を繰り返し第一線で挑戦し続けることになります。
日々勉強というスタンスで業務に取り組むことに抵抗のある方にとっては、不向きな職業といえます。
業界全体の人手不足
多忙な業務であることと、常に勤勉な姿勢で仕事に向き合わなければならないことから、建設コンサルタントとしてよい評価を得られる人材は稀有な存在となります。
建設業界自体も人手が不足していることから、業界内の他職種からの流入も少ない状況です。
総じて建設コンサルタントの職業に就く人材が不足することになり、必要な人員が確保できずに残業にもつながりやすいという悪循環が続いています。
建設コンサルタントの年収
建設コンサルタントの平均年収は約484万円です。
日本の平均年収に比べるとやや高い金額となりますが、多忙な上に専門的な知識が要求される職業であることを考えると、すこし見劣りする額に感じてしまいます。
しかしながら、大手建設コンサルタント会社の年収をみると700万円~900万円となり高い水準となります。
大規模な事業に携わることが多い大手企業は業務量が多くなる傾向がありますが、企業としての売り上げも中小企業と比べて高くなることから、このような年収の差が生じていると考えられます。
建設コンサルタントはきつい?
建設コンサルタントは仕事に就く人の適正によってはきつい仕事といえます。
コンサルタントという業務の特性から、多くの関係者とのコミュニケーションが必要となります。
黙々と業務に打ち込みたいと考える方にとっては、常に誰かと打ち合わせをし、要求や相談に応え続けるという働き方がきついと感じてしまうかもしれません。
しかし言い方を変えれば、人と関わりながら仕事を進めていくことに抵抗がなく、プロジェクト全体を管理・コントロールすることが得意な方にとっては向いているともいえます。
一方で建設という目に見えるかたちで社会に貢献する仕事にやりがいを感じる方にとっては、向いている職業といえます。
中小建設コンサルタント会社の場合、年収は大手と比べてやや低い水準となりますが、ある程度限定された取引先との業務がメインとなるため、大手建設コンサルタント会社と比べて業務量にゆとりがあるケースもあるようです。
建設コンサルタントの資格
建設コンサルタントとして働くためには資格は必要ない
建設コンサルタントとして働くために必要な資格はありません。
建築士や施工管理技士のような独占業務に分類されないのが建設コンサルタントの仕事です。
建設業に係わる国家資格は技術士を目指す
建設業に関わる国家資格として技術士を目指すことが推奨されます。
建設コンサルタントの業務自体は独占業務ではありませんが、建設コンサルタントを営む会社として国土交通省に登録する制度があります。
その要件に技術管理者として技術士の資格を有する者を置く必要があります。
建設コンサルタント登録を行った会社は社会的信用が向上するだけではなく、国や地方自治体から発注される公共事業を受注するチャンスも上がります。
実際に地方自治体が発注相手を選ぶ際には、建設コンサルタント登録をしている会社が多い傾向にあり、公募型やプロポーザル方式といった入札においても加点材料になるため、登録なしの会社よりも有利となります。
技術士は建設業における最高峰の資格とされていますので、個人を評価する面でも技術士の資格は有利です。
民間資格ならRCCMを目指そう
建設コンサルタントには民間が認定しているRCCMという認定資格があります。
RCCMを統括する一般社団法人建設コンサルタント協会において、その役割は以下のように示されています。
「RCCM」の役割は、設計業務共通仕様書(国土交通省等)において規定されている管理技術者、照査技術者又は業務担当者として、業務の適正な執行を管理、業務成果の照査、および業務に関する技術上の事項の処理の任にあたるものです。
「RCCM」に要求される能力は、設計業務の特質を理解し円滑、適正に業務を進めるための技術管理能力と当該専門分野の技術力であります。
RCCMの資格を所有している方は土木工事に関わる専門職としての知識や技術を必要とされる「管理技術者」・「照査技術者」として地質コンサルタント業務に必要とされている資格であるとともに、国土交通省でも重視されている専門技術に携われる知識と経験のある技術者であることを証明する資格です。
一般社団法人建設コンサルタント協会「資格制度概要」より抜粋
まとめ
本記事では建築施工管理技士の特徴、ゼネコンの施工管理として働く場合との違いを紹介してきました。
建築施工管理技士は建設プロジェクトにおける調査、計画・管理などのプロジェクト全体に関する多種多様な専門技術を発注者に提供する仕事で、リサーチ・調整力が求められます。
求められる技術的な専門性も異なり、建設コンサルタントでは建設設計・エンジニアリング、都市計画など幅広い分野が求められます。
ゼネコンでは建設施工における技術的な専門性に特化した業務を行います。